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中国のTPP加盟申請の隠された理由。それは「台湾のTPP加盟阻止」かもしれない。とすると、中国の意地悪外交術はやはり一流の部類ですね。日本は知恵をだして押し返せるでしょうか?【引用開始】●米台加入模索のはずが…(中国に加盟申請で先を越される)TPP苦慮の議長国日本

西村康稔経済再生担当相=10日午前、首相官邸
中国が環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)への加入を正式に申し入れたことで、TPP議長国の日本も難しいかじ取りを迫られることになった。
6月に加入交渉が始まった英国に加え、半導体製造などで強みを持ち、加入に前向きな台湾も取り入れ、サプライチェーン(供給網)の「対中包囲網」を築くはずが、その算段が崩れる可能性があるためだ。
閣僚級会合「TPP委員会」の議長を務める西村康稔経済再生担当相は17日の閣議後記者会見で「(中国が)極めて高いレベルのルールを満たす用意ができているかどうかしっかり見極める必要がある」と慎重に臨む姿勢をにじませた。
もともとTPPは米国のオバマ政権が中国の台頭に対抗して推し進めた経緯がある。一国主義を掲げるトランプ前政権下で米国は離脱したが、日本がその理念を継ぐ形で主導。
半導体の供給網などをめぐり中国排除を目指すバイデン政権の誕生を踏まえ、米国の復帰を促すとともに半導体産業が集積する台湾の加入を後押しするのが日本政府の基本戦略とみられている。
ただ、米国のサキ大統領報道官は16日、「(中国の加入を認めるかは)加盟国の判断に委ねる」と同協定と距離を置く姿勢を改めて示した。
中国は、TPP加入に当たり、ベトナムやマレーシアで一部例外が認められたことを盾に、自国にも例外を認めるよう求めてくる可能性もあり、今年の議長国として日本には高いレベルの自由貿易ルールを守っていく姿勢が求められている。(那須慎一)
【引用終わり】
 中国はやはり外交を戦略的に進める視点は一流だと思う。
 まず、中国は、世界の指導国になるに当たり、邪魔なのはアメリカだと見極めて、100年マラソンを始めました。
100年マラソンは次のようなものです。
ステップ1 中国が大国になる。
 まずアメリカの中に入り込み(アメリカをおだあげて)その技術・富を盗み取って中国が実力をつける。
ステップ1 を終えた、現状。
今、中国は、アメリカ・EUと並ぶ経済圏の一つとなった。現在の3大経済連の位置は、世界最大の大陸ユーラシア大陸は「西にEU、東に中国」、そして太平洋・大西洋を挟んで「アメリカは孤立」しています。
ステップ2 中国が世界の指導国になる。
次に一帯一路を持ち出して、EUと中国の間の広大な中部ユーラシアを中国経済圏の中に取り込む。
 すると、中国は、支配地域と人口の点で、EUとアメリカを凌駕するようになり、世界一の国となる。
現在中国外交
現在は100年マラソンに障害物が山積するようになりましたが、それは中国が本性をあらわすのが早すぎた(=中国人の本性は変えられなかった)事と、そのやり方がズサンになったからでありますが、それでも中国の外交を戦略的に進める視点は、日米の上をいっています。
今回・戦略でアメリカ・バイデン政権が中国に負けた所
日本には戦略というモノがなく、その時その場で「どうしよう」という国なので、中国の戦略に右往左往させられるのは当然なのでありますが、どうもアメリカのバイデン政権も戦略というモノを理解していない様であります。
そもそもTPPはバイデン大統領が副大統領だった時の「米国のオバマ政権が」環太平洋諸国が中国の経済圏に取り込まれてしまうのを阻止する為に、つくりはじめたものです。そのTPPに中国が加入されて、TPP11ケ国が中国経済圏に取り込まれてしまったら、米国は大変です。
ですから、自分がTPPにはいらなくても、TPPが中国にとられないようにしなければなりません。
故に、本来米国のサキ大統領報道官は「TPPは自由貿易圏であると認識している。ここに中国が加盟した場合、TPP内では軍事技術が自由に中国に流れる可能性がある。故に、米国はTPP諸国との貿易・技術協力に対して注視してゆくことになる」と発言すべきでした。暗に「中国を加盟させたら、米国はTPP諸国を中国と同様に扱うよ」と脅すべきでした。
この米国の一言があれば、日本をはじめとしてTPP諸国は一気に中国の加盟に後ろ向きになります。というか、本来はもっと早く、中国がTPP加盟について動き出した時に言うべきでした。そうしたら、ニュージーランドの貿易大臣が中国からの加盟申請書を預かる事もなかったことでありましょう。どうもバイデン政権は、世界地図の上でオセロゲームをする、いわゆる「グレートゲーム」は苦手のようです。
台湾の外交術
さて、台湾はといえば、英国と同様にはやくから「TPP加盟を目指す」といって、加盟11ケ国と交渉していたようです。そして台湾政庁はいずれも良い感触を得ていると発表していました。しかし英国とは違って、未だに加盟申請はせずにいたら、中国に先を越されました。
何で、台湾が交渉だけして加盟申請をしていなかったのかと言えば「最も有利なタイミングで正式な申請を行う方針」だったからだそうです
【 2021/02/02 (台北中央社)台湾外交部(外務省)は2日、英国が環太平洋連携協定(TPP)への参加を申請したことについて、台湾の加入に向けたきっかけになるとの考えを示した。政府は今後、最も有利なタイミングで正式な申請を行う方針だとしている】
尚、この「最も有利なタイミングで」とは、どうやら「TPP加入に当たり、ベトナムやマレーシアで一部例外が認められたことを盾に、自国にも例外を認めるよう」求めていたのではないかと推測します。
それは、今日の朝日新聞デジタルに【(台湾)地元テレビ局「TVBS」は17日、「中国に申請で先を越された。仮に中国が加入したら、台湾は封殺される」と指摘。「蔡政権はTPPへの加入希望を叫ぶだけでなく、人々に対して市場開放の必要性を説得し、関連法改正を急ぐ必要がある」とする評論を配信した。(台北=石田耕一郎)】の一文から推測しました。
即ち、台湾蔡政権はTPPに加盟はしたいけれど、市場開放はしたくなかったので躊躇している内に、中国に先を越されたのでした。
尚。TPPに台湾が加盟申請するか中国が加盟申請するかは、米国内にも興味を持っていた人もいたようで、5月19日のBloombergNewsに次の一文がありました。
【中国のTPP参加には台湾の動きが影響を与えそうだ。台湾はこれまでに全加盟国と協議を行い適切な時期と条件の下で正式に加盟を申請する考えを表明。
中国の加盟が台湾の加盟を妨げることがないようくぎを刺している。
一方、中国は台湾がいかなる国際機関にも参加することに反対している。】
 となると、台湾外交は「TPPを甘く見ていた」としか言えません。​現在TPPの加盟国ではないので、何の発言権もない台湾が「中国の加盟が台湾の加盟を妨げることがないよう釘を刺した」って、そんなのどの国たって「屁」とも思いませんよ。
一方、中国は台湾がいかなる国際機関にも参加できなくすることに頑張っているのですから、「台湾のTPP参加を邪魔してくるのは当然だ」と覚悟していなければならなかったはずです。それでも台湾が「TPPに参加したい」と思うのならば、英国同様に中国より先に加盟申請すべきでした。それなのに、「もっと台湾に有利にして」とネチネチごねている内に橋を落とされてしまったのでした。
多分もう台湾は(少なくても、近い内には) TPPに加盟できません。TPPと中国との交渉において「中国が加盟申請を取り下げる(又は棚ざらしにする)代償は、台湾の加盟申請を受け付けない」になるだろうからです。
日本外交に中国の加盟申請をうまく断る知恵はあるのか?
中国に加盟申請されて困るのは、平和的に断るのが難しい事です。
だから日本としては、米国のサキ大統領報道官は「TPPは自由貿易圏であると認識している。ここに中国が加盟した場合、TPP内では軍事技術が自由に中国に流れる可能性がある。故に、米国はTPP諸国との貿易・技術協力に対して注視してゆくことになる」と発言してくれれば、万々歳だったのですが、残念ながら「米国は関係ない」でした。本当にバイデン政権は役に立たない親分・用心棒です。
ですからもう日本からは「米国と貿易で紛争を起している現在の中国を受け入れる事は難しい。なぜならば、TPPは自由貿易圏であるので、米国の関税をかけられている中国の物品がTPP11ケ国に自由に入ってくることになり、TPPか米国の制裁の対象になるからである。故に、中国にはまず米国と和解して自由貿易協定を結んでから加盟申請をして欲しい」という以外にはない気がします。
 ベトナムやマレーシアに例外規定を認めているとすれば、中国には例外を認めないからダメですとは言いずらく、また中国はそんな言い訳を認める国ではありませんから…
 
ただ、中国としてはTPPに加盟できなくても、半導体を多く生産する台湾の加盟を阻止してTPPの内部だけでサプライチェーンが確立して、中国が孤立するのを邪魔することができれば、加盟申請する価値はあるのでありましょう。
もはや、TPPとすれば、あとは (EUが非加盟国のスイスやノルウェーと特別協定を結んで、加盟していない近所の国として自由市場に受け入れているように…) TPP11ケ国と台湾で自由貿易協定を結ぶのが一番になってしまったような気がします。
うーん。やはり中国の意地悪外交戦略は一流です。

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