懐かしいという感情


懐かしいという感情がとんでもなく好きだ。

わたしは記憶メモリがとても小さくて、
具体的なことをけっこう忘れる。

あの本の名前なんだったっけ?
旅行で行った町の名前が思い出せない!
みたいなことがしょっちゅう。
かなりざんねんな人間なんだけど、、

だけど、懐かしいという感覚は
もっと抽象的で感覚的で、
頭というより五感がはっきり覚えてくれている。

よく通った道、いつか嗅いだ匂い、昔の写真。
懐かしさがふと舞い降りる。

ひさしぶりに会った友達の顔が
たとえガラリと変わってしまっていたとしても、
会話がはじまれば、懐かしさがじんわり。 

ああ、この感じ、確かに覚えてるなって。

それから、なつかしいという感覚は、
時がずいぶん経ったことを
わたしに知らしめてくれる。

「もうあれから3年かー!」と思うとき。
少しさみしく、どこか嬉しい。

3日前のことは懐かしいとは思わない。
3年前だから懐かしいんだと思うと、不思議なもの。

その間、たしかに私は生きていて、
全部は思い出せないくらい
たくさんのことを経験して、
変わったようで実は変わってなくて。
あの人も変わったようで変わってなくて。
でも景色はちょっぴり変わってしまった。

懐かしさとは、
変わってしまったことと
変わらないことを再確認したときに起こる。


さみしいけど嬉しいという矛盾が
ざわざわとわたしの心を揺らすとき、
どちらの感情も、ふわっとまるごと
包んでくれるものが懐かしさなんじゃないかな。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?