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陽気な母は、この火曜日に人生最高の背番号を受け取った。

わたしには、ご陽気な母がいる。

どれくらい陽気かというと、小さい頃からビビりなわたしがみんなの前で何かを発表するとき、「うまくいくかな…。」と不安がっていると、「いける!いける!もう母さんのなかでは、うまくできてるの見えてるから」と予知能力のような独特な励ましをしてきたり。

お家に友達が遊びに来た日には、気づいたら椅子を並べて一緒に女子会に参加してたり。最後にはみんなの恋愛や人生相談に乗ってたりする。

久々に友人に会うと「ベニのママ、元気してる〜?」
絶対に、百発百中聞かれるのだ。

母は元気じゃなかった時なんかないくらい、いつも陽気なのだ。そんな母にもわたしが知る限り、大変そうにしていた時期が2度ある。

それは、わたしが高校受験を控えていた時と社会人になってから専門学校に通っていた時。同じタイミングで母にも試練があったのだ。

中学3年生の時、志望校合格に向けて夜遅くまで受験勉強をしていた。わたしはリビング族(リビングが大好きで宿題もいつもリビングでしていた)だったが、受験生となってからは自分の部屋で勉強するようになっていた。

その夜も勉強をしていたのだが、喉が渇いたので階段を降りリビングへ向かおうとすると、「しくしく」と暗闇から泣いている声が聞こえたのだ。ビビリなわたしは、オバケなんじゃないかと恐る恐るリビングをのぞくと、そこには目を真っ赤に腫らした母がいたのである。

実は同じタイミングで、母も受験生をしていた。仕事で新しい資格を取るため、筆記に実技に隙間時間さえあれば、勉強に勤しんでいた。
そう、わたしたちはゴールは違えど「同志」であったのだ。

その夜は、どうやら週末にある実技試験に向けて、なかなか流れが覚えられず「もうできないかもしれない…。」珍しく、心が折れそうになっていたそうだ。

わたしはコップ一杯の水を渡し、こう声をかける。
「いける!いける!わたしのなかではもう母さんうまくできてるの見えてるから」
こうして、母の受験勉強の相手となり、こうやってみる?なんて、一丁前にアドバイスしながら、同志の成功を祈った。それ以降、同じくしてわたしも受験生だったので、覚えた知識を模擬授業のごとく母にロールプレイしては、お互いの成長を見守っていった。

同級生たちと話していると、「勉強ちゃんとやってるの?」なんて母親が口出ししてきて余計に嫌になる、そんな会話が出てくるが、うちの場合は「お母さんは自分の勉強で精一杯やから、あなたも自分のこと精一杯やるのよ!お互いファイト!」そんな感じだった。もうちょっと娘の心配をしてもいいのでは?なんて思うこともあったが、時に息抜きで一緒に韓ドラを観たり(正確にはチャン・グンソクにどハマりした母に付き合わされていた気がする)、わたしにはその距離感が妙に心地よかったのだ。

それから、わたしは見事志望校に合格。母も試験に合格。
お互いの目標を達成し、我々は部活動で優勝を共にしたチームメイトのような関係性になった。
「ほらね、うまくいってる姿が見えてるって言ったでしょ?」母は、そう得意げに笑う。どこまでもご陽気な母。

時は流れ、わたしは社会人になった。新卒で入った会社では、「何でも屋さん」が相応しいくらい、いろんな経験をさせてもらい、その中でWEBデザインについて深く興味を持つようになった。
より本格的に学びたい、そう思ったわたしは、働きながらWEBデザインの専門学校に通うことにした。受験生ぶりに夜遅くまで課題に追われ、来る日も来る日もパソコンとにらめっこしていた。

そんな横で母もまた、起業家スクールに通い始めていた。どんな事業をどういう人向けに展開していくのか、頭を悩ませあーでもない、こーでもないとリビングで一緒に課題をこなしていた。こういうのもあるよね?なんて、また一丁前にアドバイスをしながら、わたしたちは「同志」に戻ったのだ。

時には「もう無理だー。」なんて日もあるので、二人で遠出してお洒落なカフェに来てみたり。山奥にあったカフェに向かった時には、道中に綺麗な景色が見える池にも寄った。前日が雨だったこともあり、足元は最悪な治安で、母と泥んこになって家に帰った日もあった。(お気に入りの白スニーカーとおさらばすることになったのも思い出深い。笑)

そんな母もこの火曜日に60回目の誕生日を迎えた。59歳からプラス1歳になることってけっこう変わる?なんてのん気に聞いてみたら、「年齢はね、母さんにとっては背番号みたいなもんなんよ。毎年人生最高の番号をもらえる。今年はどんな1年にしようかな〜〜。」相変わらずご陽気な返事が返ってきた。


お母さん、お誕生日おめでとう。娘はおかげさまで楽しい日々を過ごせているよ。健康第一で、これまで以上に最高にハッピーな1年を過ごしてね。(言われなくても楽しくやっていると思うけど。笑)


母をイメージして束ねてもらったお花。
お家に飾ってくれてるみたい。嬉しい。



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