ブルーピリオド(アニメ1期)
Twitterで、大学の同級生がブルーピリオド展に行っているのを見た。私自身絵を描くことが好きで、好きなキャラクターの模写をしたり、学祭や卒業記念品のデザインをしたこともあって趣味として楽しんでいる。
今月から教室に通い始めたこともあり、アニメ一期分を一気見した。
印象に残った場面を3つ挙げる。
①主人公の八虎は勉強もでき、クラスでの人気も高くなんでも器用にこなせてしまうがゆえに熱中できるものがなく、毎日をなんとなく過ごしていた。
実はこの八虎のような人は意外と多いのではないかと思う。なんでもこなせてしまうがゆえに、何か特別熱中できるものが見つからない。作中での世田介の、「美術以外でもよかったくせに」は刺さるセリフであった。八虎から見ればずば抜けた絵の才能を一つ持っている世田介がうらやましいが、世田介から見れば、自分は美術しかないからその道を選び人生をかけて臨んでいるのに、何でも器用にできる八虎が軽々しく入ってきたことは許せないのだろう。それぞれが互いに持ち合わせていないものに対して悩みを抱えている姿は印象的であった。
②八虎が芸大を目指すきっかけとなった龍二は、芸大の一次試験を棄権して夜の街で働き始める。龍二には理解のない両親との確執や自分の在り方についての葛藤など様々な事情があるのだが、八虎に放った「お前は溺れている人がいれば救命着を持ってきても自分が川に入ることはない。安全な場所から言うだけならお前に話すことはない」という言葉がある。八虎は優秀であるために、常に最も効果的な方法を選択するが、溺れている人の苦しさは実際に溺れてみなければわからないのだ。龍二のために「優等生」を脱し自ら同じ場所へ飛び込んでいく姿に、八虎の成長を感じた。
相手と同じ立場に立つというのは頭でわかっていても実行するのは難しい。自分の今までの人間関係を振りかえって、そこまでして尽くしたいと思ったことがあっただろうか。私にはおそらくなかったと思う。
③桑名が外階段から泣いている生徒を見下ろし、「落ち込んでいる人を見ると自分はまだまだ大丈夫だと思える」という場面がある。彼女には芸大主席で合格した姉をもつことによるプレッシャーが重くのしかかり、普段は明るく振舞いながらも逃れられずにいる。意気消沈している友人を見て自分のメンタルを保っていることを自責しているが、上を見て暮らすなら下を見て暮らせという言葉があるように、誰にでも経験しうることなのである。私自身もそうであり、彼女の様子を見ている時には受験や仕事、学校生活でのつらい時期が思い出された。同志の大半がふるい落とされる受験戦争はきれいごとだけでは片づけられない。
八虎が芸大に入ってからが描かれるであろうアニメの2期が楽しみになった。