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六車奈々、会心の一撃!

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タレント・女優の六車奈々によるエッセイ集。子育てをしながら働く、ハプニングと全力投球な日常をエッセイでお伝えします。
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#ピンチ

イヤよイヤよも好きのうち?

20代の頃、関西の旅番組にレギュラー出演していた。女性の一人旅という設定なので、いつもは自分一人での出演だ。 しかし今回は、夏休み企画。同じモデル事務所の仲良し、仮に名前をセイコにしよう、と一緒に出演できることになった。 「やったー!一緒に出られるなんて、めちゃ嬉しいなぁ!」 私たちは、大喜びをした。 ただし、ここには条件があった。 大自然の中でパラグライダーを楽しむシーンを入れたいので、二人にはパラグライダーをやってほしい。一人はインストラクターと飛ぶ映像を、もう一人は

罪と罰

午後の授業が始まるチャイムが鳴り、先生が教室に入ってきた。小学三年生のクラス、担任は『ずるいオトナ https://note.com/nana_rokusha/n/ne99ca9872121 』で記した、唐揚げ先生だ。唐揚げ先生とは、今年赴任してきたばかりの若い女性の先生。ショートカットで目は鋭く、男性のような口調。とにかく気の強い怖い先生である。 「この雑巾、誰や?片づけに来い。」 開口一番、先生は言った。見ると黒板の右下に、無造作に雑巾が置かれていた。明らかに誰かが置き

友からの教訓

その日は、この夏一番の暑さだった。 男は大事なお客様との接待で、ゴルフの真っ最中だ。 ゴルフ場には日陰など殆ど無い。 吹き出す汗を拭いながら、コースを歩いていた。 男とは、私の友人である。仮に名前をヨシオにしよう。 「ナイスショット!」 ヨシオは大声で讃えた。 今回のメンバーは、四人のうち三人が得意先である。 つまりヨシオは、メンバー全てに気を使わねばならなかった。 「いやぁ、さすがです!よく飛びますね〜!」 「今のパット入れちゃいますか!僕なら絶対にスライスだと思って失

起死回生

二十九歳の私は、結婚の夢も仕事の夢も失い、絶望の淵にいた。 ここまでの話は『六車奈々、会心の一撃!』の、 『変身 https://note.mu/nana_rokusha/n/n1ab6605ba071』 『仕事か結婚か、それが問題だhttps://note.mu/nana_rokusha/n/n589237c50768』 で記している。 もし心の傷が目に見えたとしたら、それはズタズタに切り裂かれ、手の施しようがないほど無残な状態だったろう。後にも先にも、これほどまでに辛い

ユーモアはいかが?

20代半ば、友人とパリへ旅行したときのことだ。現 地にも慣れた3日目くらいだったろうか。バーでお酒を飲み、 ご機嫌でホテルに戻って来ると、部屋のカードキーが全く反応しない。 深夜0時をまわっていたし、廊下で年頃の女の子がウロウロしているのも 物騒だ。私たちは急いでフロントへと向かった。 静まり返ったロビーは、人を不安な気持ちにさせる。 二人は速足でロビーを通り抜け、フロントに到着した。 薄暗いフロントに立っていたのは、白髪に白髭のダンディーな男性。 歳の頃は60歳前後だろうか

運命の出会い

少し早めに品川駅に着いた。 今日は、大阪でラジオの録音だ。 冬の早朝は、空気が冷え切って息が白い。 私は温かいカフェラテが飲みたくなった。 スタバでカフェラテを購入し、駅のホームへと向かう。 ホームは寒かったが、カフェラテを持つ手があったかい。 「早く新幹線に乗って、ゆっくり飲もう。」 平日早朝の新幹線は、相変わらずサラリーマンで満席だった。 私は三人がけの窓側。すでに真ん中の人が着席している。 私は頭を下げながら窓際へと移動した。 さて困った。 コートを脱ぎたいが、手

神様からの伝言

早朝の小田急線は、とても静かだ。 地獄のような通勤ラッシュとは違い、ゆったりと座ることができる。 その日、私は小説を読みながら電車に乗っていた。あと少しで到着だ。 「そろそろ降りる準備をしよう。」そう思いながらも小説が面白過ぎて、 なかなかやめられない。「あともう少し。。。」と言い聞かせつつ、 夢中で読んでしまっていた。 『プシュ~ッ!』 扉の開く音で、飛び上がった!しまった!降りる駅だ! 私は慌てて小説をカバンに突っ込み、電車を飛び降りた。いかんいかん。 乗り過ごしてしま