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令和5年文楽地方公演「義経千本桜」所沢市民文化センターミューズ

10月巡業8公演のうち、所沢公演に行ってまいりました。良く晴れた土曜日。和服でお出かけするのに最適。昼の部、夜の部を連続で。

土地をゆったりとった配置で贅沢な劇場

演目は以下の2つ。

昼の部 「義経千本桜」 椎の木の段 すしやの段
夜の部 「桂川連理柵」 六角堂の段 帯屋の段 道行朧の桂川

https://bunraku.or.jp/pdf/chihou2023_10.pdf

と、いうことで、まず、昼の部について記していきます。

「義経千本桜」
[太夫]豊竹呂太夫
[三味線]鶴澤清治(人間国宝)
[人形]桐竹勘十郎(人間国宝)

配役表↓

https://www.muse-tokorozawa.or.jp/event/detail/20231014/pdf/details.pdf

ほぼ満席のようで、ホワイエにてお人形とのツーショットもできました。演目「釣女」の「美女」という人形です。(9月下旬の公演「文楽夢想」の演目)昼の部のお出迎えは簑太郎さん、勘介さんが担当。

カメラ目線の美女さま


チケット発売日が公演日から半年近く前だったので、油断していて発売1か月後に購入したのでかなり後方のお席でした。すごい人気だな、と思って(なぜか)ちょっと嬉しい。

後ろから三列目でした

「義経千本桜」から「椎の木の段」「すしやの段」。義経千本桜でよくかかる場面です。義経千本桜といいながら、ほとんど義経が出てこないのがこの演目。源平合戦にまつわる人々の群像劇と言う感じです。例えると、大河ドラマのエピソードを切り出している感じ。

「椎の木の段」「すしやの段」は、「いがみの権太」という登場人物をめぐるエピソードです。「いがみ」というのは「性格が歪んでいる」という意味。盗みや詐欺行為を働く悪者ということですね。親から勘当されていて、お金のためなら家族も裏切ります。このエピソードでも、平維盛の奥さん・子供・従者をだましてお金を巻き上げますし、母親をうまくだまして小遣いを手に入れます。

この権太とその家族、平維盛一家とのエピソード。これがとてもよくできているお話で。あるキッカケで、せっかく権太が改心しようとするのですが、過去の悪行が元で悲劇的な結末を迎えることになります。

お話は知っているのに、何回みてもホロリとしてしまう。親孝行と忠義と因果応報。

配役ですが、地方公演は文楽座の一部のメンバーで巡業をするので、普段の定位置とは少し違う配役が見られます。普段よりも重要なお役が付いたり、普段のキャラクターとは違う配役が見られたり。今回気になったのは、「椎の木の段」の床(演奏陣)。聖太夫さん・清允さん。若手コンビです。9月下旬の「文楽夢想継承伝」にて、若手代表としてトークに出演したお二人。大師匠である錣太夫さんの胸を借りて奮闘していた姿を見ていたので、「あの経験が糧になってるかも?」と思いながら、大観衆の前で堂々と演奏しているのを頼もしく見ておりました。

主役のいがみの権太は、桐竹勘十郎さん。特徴のあるキャラクターを”面白く”遣うと和生師がおっしゃているだけあり、ところどころで客席を沸かせるのはさすが。文楽鑑賞が初めての方も多い地方公演ですから、観客を喜ばせようとする勘十郎さん独特のつかみ芸の効き目抜群という感じ。
そして、最近すっかりファンになっている呂勢太夫さんと人間国宝清治師のペア。太夫さんもいろんな年代の方がいるので、若さゆえ声の艶や勢いが勝っている年代の方もいるし、一方で、渋みと情と技能の円熟さが勝る年代の方もいます。身体的な強さ(声量や声の艶)と技術が高いレベルでマッチしている呂勢太夫さんの語りが堪能出来て至福の時間でした。

加えて、ベテランの三輪太夫さんも良かった!時代物(お侍さんが出てくる古典)でしっかり聞いたのは初めてでしたが、古風な節回しが際立っていました。時代劇のカッコいい節回しという感じでしょうか(伝わってるか不安)。ベテラン勢だからこその昭和の残り香を感じる古風な節回し、また聞きたいです。

地方公演は公演時間も若干短く、見やすいなぁと思いました。定例公演は3時間4時間も普通にあるのですが、遠出して帰宅するにはちょうど良い長さかも。家族や友人を誘って来たいなと思いました。

(といって、私自身は夜公演も連続してみるわけですが・・・(笑))

夜の部は別の投稿で書きたいと思います。

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