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『THEフェニーチェ文楽 人形浄瑠璃文楽  HOMURAⅡ~怒群~ 文楽が表現する”怒”の世界』2024年3月2日


8ヶ月ぶりに関西に文楽公演を見にいきました。
桐竹勘十郎さんの「HOMURA」というシリーズもの。去年も見にいきましたので2回目です。

チラシの画像がピンク色ベースで素敵。春らしくて気持ちが昂ります。このシリーズのチラシは前回も素敵でした。

文楽の主役級の女性が放つ情念ごとに演目をセレクトするシリーズですが、今回は「怒」。怒りのあまり大蛇や鬼になる女性の特集です。

特に人形の『かしら』(顔の種類)のなかでも、カラクリが仕込まれていて、美女から鬼女に一瞬で変わる「ガブ」という種類のかしらが使用される演目です。

▼簑悠さんのインスタで動画が投稿されてましたので、シェアします。

「日高川入相花王」渡し場の段


お姫様が嫉妬に狂って大蛇になり川を泳ぐという「トンデモ展開」のお話。主役の清姫は吉田勘彌さん。人形遣いさんは肩を痛める方が多く、手術をされて復帰された勘彌さんですが、最近、重量や動きのある主役が多く、大活躍のベテランの演者さんです。

お姫様が大蛇になって川を泳ぐ、という、初めて文楽を見る方は度肝を抜かれる展開です。そして、上陸した後に『ガブ』という鬼のような形相のかしらに切り替わって終演。

勘彌さんの解説によると、どのシーンでガブのかしらを使うかは主遣い(人形遣いの三人のうちのリーダー格)の裁量だそう。最近、お能の写真展を見て、今回は大蛇になってからガブをつかうことにしたそうです。

次の解説コーナーでは、大蛇が泳ぐシーンで舞台の裏側でどうやってるかを実演してくれました。左遣い、足遣い、介錯という役割で主役の人形の動きをサポートしている勘次郎さん勘介さん勘昇さんが頭巾なしで登場。波を動かす大道具さんの実演も。大道具さんも黒衣姿なので驚きました。

『増補大江山』戻り橋の段

平安時代中期のお話。鬼が出るということで誰も寄りつかない一条戻り橋が舞台。そんな場所に若い美女が一人。渡辺綱という猛将が通りかかって美女をエスコートしようとしますが、美女が悪鬼に変じるというものです。

平安時代中期のお話というと芥川龍之介の『羅生門』を思い出しますが、荒廃した京の都を想像しつつ、夜は完全な闇につつまれる中世には本当に鬼がいたかもなぁと思いながら堪能しました。

人形が人間を演じた後に鬼を演じる、人間が鬼を演じるよりも境界線が薄い気がして、文楽ならではの魅力があると思います。

美女が悪鬼に変じた後は、長い黒髪をぶんぶん振り回します。「まだ、回す?」「え、まだ回す?」っていうくらい。トークショーのパートで勘十郎師が「この演目は後半に体力をとっておかないと息切れする(意訳)」とおっしゃってましたが、「これはすごい運動量」とビックリ。さらに、こういう異形のモノの名手である勘十郎師だからこそ、こまめに見せ場を作るので目が離せない…

吉田簑紫郎さんの渡辺綱も楽しみにしてたので、もっとじっくり見たかったのですが、鬼の迫力に目が持っていかれてしまいました…笑
簑紫郎さんは最近大きいお侍のお人形の配役が続いていて華やかな存在感があるなぁと思っています。これからが楽しみな演者さんです。

このHOMURAというシリーズは、勘十郎さんの企画だけあって勘十郎さんご自身の芸と魅力が全開で「見に来て良かった」と心から思いました。

今後も、できる限り時間を作って追いかけたいと思います。

そして4月の国立文楽劇場でも『増補大江山』は見られるので、そちらも楽しみになりました。悪鬼に変貌する「若菜」という役は吉田一輔さん、可憐な娘役に定評のある演者さんですが、どんな悪鬼が見られるか楽しみです。


▼昨年の公演の感想

▼文楽劇場4月公演

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