「伽羅先代萩」令和6年初春文楽公演 国立文楽劇場
配信で視聴しました。
またまた読めない題名・・・。「めいぼくせんだいはぎ」と読みます。
題名が読めないせいか、東京で観劇したことをすっかり忘れていました。どうやら2021年に国立劇場で見ていたようです。幼い大名がご飯が食べられなくて痛々しい話・・・というくらいの記憶しかなかったのですが、今回は、チラシ画像のインパクトと、老女形(中年女性)の名手の吉田和生師が「一世一代の覚悟」とインタビューでおっしゃっていたので、とっても期待していました。
乳人「政岡」という女性。大名の家を背負う重責を担っているだけではなく、陰謀から幼い世継ぎを守る緊迫した状況におかれています。敵方に味方を遠ざけられ、世継ぎに仕える幼い息子とふたり、孤軍奮闘するのです。
気丈に振舞っていても、どうしても涙が溢れてしまう場面で、泣き声を笑い声に変えて「おまじない」と言ってごまかすところは、千歳太夫さんの上手さに舌を巻きました。
そして、「政岡忠義の段」。その前の「竹の間の段」「御殿の段」は必ず上演されるのですが、「政岡忠義の段」は上演されないこともあるようです。ただ、この段が素晴らしく・・・。世継ぎに仕える幼い息子が身代わりになって切り殺されるのですが、母である政岡は顔色一つ変えない。それが理由で世継ぎを守ることに成功するのです。
気丈な政岡は「烈女」などと呼ばれたりするわけですが、周囲に人がいないことを確認すると、おおいに泣き叫びます。呂勢太夫さんの語りが素晴らしく、この段だけ繰り返し聞きました。(配信の追加購入までしてしまいました・・)
呂勢太夫さんは、こちらのインタビューにあるとおり、過去の名人の芸を細かく分析して「完コピ」するのだそうです。聞いていると端正だなぁと思いますし、一方で勢いも艶もあるので、聞いている方からすると、単なる「完コピ」という次元を完全に超えていると思うのですよね。
呂勢太夫さんは、2月14日に「松尾芸能賞」の優秀賞も受賞されました。おめでとうございます!
和生師の老女形を目当てに配信開始とともにかぶりついて見ましたが、乳人政岡の発光するようなオーラを堪能しつつ、呂勢太夫さんの「嘆き」を聞いて毎回涙し・・・、ということで、存分に楽しみました。
最後に・・。今回はさらに「床下の段」も。ここからいきなりファンタジー展開になります。着ぐるみの大ネズミが出てきたり、敵役が妖術を使って雲隠れしたり・・・。文楽の演目って、現代人からすると突拍子もなくトーンが変わるのが面白いです。「何だったんだろう・・・」と謎が渦巻いて終演。でも癖になってしまい何回か繰り返し見てしまいました(笑)。
やっぱり一つの演目はできるだけいろいろな段が見たいなぁと思った次第です。
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