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『うしおととら』は面白い!魅力を全力で語ってみる

王道にして名作と名高い少年漫画『うしおととら』。私が子どもの頃からずっと、一番好きな漫画です。人生で初めて全巻読破した漫画であり、大人になった今でもやっぱり不動の一位に輝いています。

しかし周りに『うしおととら』を知っている人がおらず、面白さを語り合うことも共有することもできない悲しい現実…!

好きなものって誰かに良さを伝えたくなるやん…?

でも興味がない人を相手に熱意たっぷり語ろうもんなら、友人であっても一線を引かれること間違いなし…。数少ない友人を失うわけにはいかないので、ここnoteで『うしおととら』の面白さや魅力について考えてみることにしました。 

これから『うしおととら』を楽しむ方も、もうご存知の方も、ぜひぜひ読んでいってください。

ただめっちゃ長くなってしまったので、ほんまにびっくりするくらい暇なときがおすすめです。あと時々、好きが溢れて取り乱します。ご容赦ください。


『うしおととら』ってどんな漫画?

すでにご存知の方は、このあたりは飛ばしてくださいね。

『うしおととら』は1990年~1996年にかけて週刊少年サンデーに連載されていた、累計発行部数3.000万部超えの人気漫画です。

単行本にすると、全33巻+外伝1巻。

アニメは全39話。原作のエピソードがあれこれカットされつつも、最初からラストまでアニメ化されています。

ザックリあらすじ

獣の槍という妖怪を倒す強~い槍を偶然手にした中学生・蒼月 潮(あおつき うしお)と、槍に縫い留められていた妖怪・とら。

「いつか滅ぼしてやる!」
「いつか喰ってやる!」

そんな関係だった1人と1匹がなんやかんやで共に旅をし、数々の戦いを乗り越え、最凶最悪の大妖怪・白面の者に挑む!

作者・藤田和日郎ってこんな人

藤田和日郎(ふじたかずひろ)は、北海道・旭川出身の漫画家さん。

高橋留美子に憧れて漫画家を目指し、1988年に『連絡船奇譚』でレビューしてから30年以上にもなる超ベテランです。

『うしおととら』のほか、『からくりサーカス』や『月光条例』など、いくつもの熱い少年漫画の生みの親。新しいものなら、週刊少年サンデーにて『双亡亭壊すべし』を連載していました。

『からくりサーカス』もアニメ化されましたね。

藤田和日郎先生は伏線回収(後付けというべきかも?)に定評があって、広げた風呂敷をキレイにたたむことで有名です。だから読了後に「あれ?めっちゃ謎残したまま終わった?あの設定どっかに消え失せたん?」なんてモヤモヤがないのも魅力。

密度が濃くて、荒々しい独特のタッチで描かれる絵が印象的です。『からくりサーカス』で、あるキャラクターの感情を表現するために「ちょうどいいペンがなかった」を理由に指で描いたとか。

ただ、美しい絵を見慣れた現代漫画っ子たちにはとっつきが悪い的な意見も散見されます。ちょっぴり悲しい。

私は初めて手にしたのが『うしおととら』だったのでなんの抵抗もないですし、むしろ大好きなんですけどね~。ド迫力のバトルシーンなんかめっちゃカッコイイ!

何年か前にあった原画展も行きました。最高に熱かったですありがとうございます。

漫画とアニメどっちがオススメ?

『うしおととら』の漫画とアニメのどっちがオススメかと問われると、原作からのファンとしてはやはり「漫画がオススメ」です。

でも、アニメは面白くないなんて思っていません。全話録画してありますし、時々見返すこともあるくらいとっても好きです。

『うしおととら』を知らない世代、見たことなかった人たちがアニメをきっかけに漫画を読んだり、ファンになったり…なんてこともあるかもしれませんし、それはめっちゃ嬉しいことやと思っているので。

ただ先ほども少し触れた通り、アニメは39話。原作33巻にもわたる壮大な物語をおさめるために、かなりのエピソードがカットされています。

カットされたエピソードにも良いのがいっぱいあるんですよ、これが。

どんな作品であっても賛否両論あるのが当たり前ですが、アニメ『うしおととら』の否定的な意見には、エピソードが削られ過ぎているというものを結構見かけました。

本来出てくるキャラクターが登場しなくなったり、泣かすやん…て話が飛ばされたり、好きなエピソードが映像化されなかったり。原作ファンが切なくなってしまう気持ちは痛いほどわかります。

『うしおととら』は個々のお話だけじゃなく、「全編通して読むことで感じられる面白さ」みたいな部分もあるので、そういった意味でも「カットされると薄れてまうやろぉぉ…!」なんて思いもあるかもしれません。

それに、好きな物が本来のポテンシャルを発揮することなく低評価されると悲しいもの。「ちゃうねん、ほんまはもっと面白いんやって!」って言いたくなるのはよくわかる。

私としては、できれば漫画も読んでほしいし好きになってくれたら嬉しいですが、「アニメを見て好きな要素を感じたら漫画も読む」ってのも良いかもしれませんね。

いやでもやっぱり漫画も読んでみて。(どっちやねん)


『うしおととら』が面白い!私が思う5つの魅力!

私が思う『うしおととら』の魅力を5つにまとめました。

ネタバレも確実に含まれるので「断固ネタバレNG」「ネタバレみたらもう興味失せるわ~」という方は、原作を読むまたはアニメを見るなどしてから戻ってきてください。

………おかえりなさい。それではいってみましょう。

魅力①:主人公・うしおがカッコイイ

主人公の蒼月 潮は最近よく見かける、

「いつも飄々としてるけど実は過去に抱えた闇を隠してて、普段は穏やかだけど実はチート級に強くて冷酷な一面も持ち合わせ、短気でがさつなのに実は頭脳明晰、爽やかで笑顔が素敵な女心のわかるシンプルに顔が良いTHE美少年」

みたいな、いかにも女性にモテそ~なタイプではありません。(こんな設定の闇鍋みたいなやつおらんわ)

正直言っていかにもなイケメン顔でもなく、喧嘩っ早いし勉強も苦手、爽やかとは縁遠くてかっこ悪いところもいっぱいで、戦いではいつも血みどろのボロボロ。

でも嘘が下手で曲がったことが大嫌い、真っすぐで、正義感と思いやりに溢れている…それが蒼月潮です。


誰かの涙を止めるためなら、どんな危険にも強敵にも迷わず立ち向かう。
目の前の人を救えるなら、自分の命ですら平気で危険にさらす。
他人の苦しみに寄り添って、本気で涙を流す。
人間だろうが妖怪だろうが、心の底から信じることができる。

うしおはそんな、優しい心を持った熱いヤツなんです。その優しさは人間だけでなく、妖怪にも分け隔てなく向けられます。

理不尽なことに怒るって、大人になるとできなくなってくるじゃないですか。残念ながら世の中は理不尽だらけなので、いつの間にかそれを当たり前として飲み込んでいくしかなくなるというか。

うしおはそんな理不尽に正面から向き合って、悩んで、体当たりでぶつかって、ちゃんと怒るんです。

現実ではそう簡単にはいかないからこそ、やっぱり誰かを傷つけるような理不尽に対して本気で怒れるうしおはカッコイイなと思います。

うしおのキラッキラした曇りなき眼、子どもの頃はなんとも思わなかったはずが最近は眩しすぎて直視できなくなってきました。曇り切った眼を持つ大人の皆さんもぜひ体感してください。

魅力②:とらが可愛すぎてもはやヒロイン

獣の槍によって500年ものあいだ封印されていた大妖怪の「とら」は、なんと2000歳超え。かつては人々を恐怖に陥れたと凶悪な妖怪という伝承が残っています。

しかしそんなとらちゃん、解放された現代に興味深々でかなり無邪気な姿を見せてくれます。

バスに乗りたいとはしゃいだり、テレビを気に入ったり、大好物のハンバーガーを「はんばっか」と呼んで食べていたり…。

うしおにとり憑き、罵りあいながらも、いざうしおが窮地に陥ると「お前はワシが喰うんだ!」とつい力を貸してしまうというハイレベルなツンデレを見せますし、うしおをバカにされたことに腹を立てるようになっていきます。

さらに、一度は食べようとした真由子(うしおの幼馴染の一人)のことも、なんやかんやで「”でざぁと”として食べるために妖怪から守る」といった行動に取るように。

とらは理性のないただ狂暴な妖怪ではないんです。

「うしおと出会って共に過ごしたことでどんどん変わっていくから」というのが大きいんですけども、外伝では大昔にも粋なことをやってのけたのが描かれてました。

強くて粗暴なのに、時に無邪気な姿を見せつけ、ツンデレを発動させながらいざというとき主人公を守る…「何?ヒロインか何かですか?」と思わせる可愛さ。

麻子や真由子といった人間のヒロインもいますし、ほかにもいろんなタイプの可愛い女の子たちが登場するんですけど、とらちゃん人気はやっぱり凄いです。

粗暴でありながらもお茶目な一面を持ち合わせる、うしおにとって頼れる相棒!漫画の人気投票でも、うしおと拮抗しつつもやっぱり1位でしたしね。

とりあえず、デフォルメされたとらちゃんの絵がめちゃくちゃ可愛いよねって話。

魅力③:妖怪たちが怖くて気持ち悪くて愛おしい

『うしおととら』は妖怪バトルアクション漫画なので、それはそれはたくさんの妖怪たちが登場します。

絶妙に気持ち悪い妖怪、トラウマ級の怖い妖怪、とらを筆頭にカッコイイ妖怪やお茶目で可愛い一面を持ち合わせた妖怪たちまで、みんな個性的。 

このあたりが私のトラウマ回で、怖かった妖怪です⇩
・〈あの眸は空をうつしていた〉の猿みたいなやつ
・〈おまえは其処で乾いてゆけ〉のなまはげ(これも結局は猿やったけども)
・〈畜生からくり〉の絡繰り人形

でも鎌鼬の雷信兄さんはカッコイイし、妹のかがりは美しいのにピュアで可愛いし、イズナは小生意気で小動物っぽさが愛おしい…。

そう、みんなとにかく個性的なんです。

とくに人気なのは、〈ヤツは空にいる〉で登場する妖怪・衾でしょうか。
グニョグニョの体と長い頭、団子っ鼻に大きなクリクリお目々がチャームポイントの衾。

ページの半分近くを使用したド・アップが読者にインパクトを与えたようです。かくいう私も忘れられません。

アニメ版の死に際に放った「火ぃぃぃぃ!こんなにたくさんの、火ぃぃぃ!」はなんか面白くて思わず吹き出しました。

ちなみに余談ですが、私の子どもの頃は座敷童のオマモリサマにそっくりでした。(ほんまに余談以外の何ものでもない)

魅力④:名言&名シーン満載! 

『うしおととら』は、というか藤田和日郎先生の作品はほんっっまに名言と名シーンの宝庫。名言&名シーン製造マシンかなんかなん?ってくらいぎゅうぎゅうに詰まってるんです。

今回は『うしおととら』についてだけですが、目頭も胸も熱くなる言葉と場面がいっっっぱいあります。

 原作未読、アニメ未視聴だとわからないと思いますが、少しだけ紹介させてください。

泥なんてなんだい!

藤田和日郎 『うしおととら』小学館 単行本19巻 1994年 p.67

この名言が登場するエピソードは結構ファン多いんじゃないでしょうか。

真由子が妖怪に襲われてとらが助けに行くことになるんですが、その際に真由子の子どもの頃の思い出で語られたうしおの言葉です。

幼い真由子が買ってもらったばかりのお気に入りの麦わら帽子をかぶっていると、風に飛ばされて沼に生えた背の高い草に引っかかってしまいます。

「取りに行きたいけど、沼はドロドロで入ると服も体も汚れてしまう…」と泣きそうになっていると、そこにうしおが現れました。

うしおは何も言わずズンズンと沼に入っていき、真由子の帽子をとってきてくれます。

うしおが汚れてしまったことでさらに泣きそうになっている真由子に対し、うしおは「大事なんだろそれ…?」なら「泥なんてなんだい」と返すんです。

ぶっきらぼうな態度でも、うしおの強さと優しさがわかる一言になってます。

大切なもののためなら泥をかぶることを厭わない=大切な誰かのためなら自分が犠牲になることを厭わない、うしおらしくてカッコイイ。

わしは「とら」だっ!

藤田和日郎 『うしおととら』小学館 単行本7巻 1991年 p.16

長生きなとらは「長飛丸」とか「わいら」とか…過去にもいろいろな名前で勝手に呼ばれていました。

ある時、獣の槍で封じられる以前のとらを知っている妖怪・一鬼(ひとつき)と一騎打ちで戦うことになります。戦いの最中「長飛丸と呼ぶな、その名は嫌いだ」というとらに何度も「長飛丸」を連呼してしまう妖怪の一鬼。

ついにキレたとらが、トドメの一撃と共にはなった名言!そして名シーン!になっています。

最初はとらって呼ばれるの嫌がってたのに…ついに自分をとらであると認めて公言したシーンなんですよね…。

最高以外の何物でもないですよね…。 

尊ッ!

今…帰ったよ…あけとくれ…

藤田和日郎 『うしおととら』小学館 単行本32巻 1996年 p.188

幼馴染の妻と5歳になる娘を殺され、自身の片目も奪われ復讐の鬼と化した符咒師の鏢さん。

いつものように家のドアをあければ、愛する妻子との温かい時間が待っているはずが…待っていたのは地獄と壮絶な復讐の日々って…。

普通のお父ちゃんやったんですよ…?辛すぎるやろぉぉ。

死闘を繰り広げついに仇を討った鏢さんは、近くにいた知らない母娘を守り抜き、2人に見守られながら息をひきとります。

薄れゆく意識の中、鏢さんには愛する妻と娘が待っている、幸せだったあの頃の家が見えていました。

だから出てきた言葉が「今…帰ったよ…」なんですね。

やっと愛する奥さんと娘が待つ自分の家に帰れた鏢さん…。復讐の鬼ではなく、人として、あの時の優しいパパとして帰れたんですね。

私は思い出しただけで泣いてるけど、このエピソードで泣かん人おるん?ってくらい屈指の感動シーンやと思ってます。

今、オレ達は…太陽と一緒に戦っている!

藤田和日郎 『うしおととら』小学館 単行本33巻 1996年 p.104

うしおととら、最後はこの二人と白面の者との直接対決!になりますが、うしおは「お前(白面の者)と戦ってるのは俺たちだけじゃない」と言います。

生きて明日を迎えようと懸命に戦う人々や妖怪たちが一緒に戦っている…白面の者という、世界を覆う夜の闇をうち払おうとする意志=つまり「太陽」と一緒に戦っているんだ、と。

かっこえ~~~言い回しにしびれる~~~。

と思いません?(突然丸投げにすな)

もう…喰ったさ。ハラァ…いっぱいだ。

藤田和日郎 『うしおととら』小学館 単行本33巻 1996年 p.169~170

とらの最期の言葉ですね…あぁつらい。

「うしおを喰う」 と言い続け、結局は最期まで食べなかったとら。

「まだ俺を喰ってないじゃないか」と言ううしおに対し、「もう喰った、ハラいっぱいだ」といって消えてしまいます。

あぁつらい。

うしおと出会ったとらは、彼からいろんなものを食べていたんですね。共に過ごし、背中を預け合って戦ううちに、いつの間にか大切なものを得て満たされていった。

だからとらはもう、お腹いっぱいなんです。

あぁぁぁぁぁ~~~~~~~(うるさいからいい加減にしなはれ)

とまぁこれでもごく一部なんですが、とてもじゃないけど書ききれないので「うしおととら+名言」とかって調べてみて下さいめっちゃ出てきます。 

ぜひ涙&鼻水で顔面をギトギトにしながら楽しんでください。


魅力⑤:伏線回収が最高

『うしおととら』といえば、藤田和日郎作品といえば…最大の魅力はやっぱり伏線回収にあると言ってもいいんじゃないかと。

うしおととらの出会い、共に過ごし旅した日々、数々の戦い、そして妖怪や人間たちとの出会い、白面の者との長きにわたる宿命…

偶然に見えたそれらすべてが、ラストに全部ちゃんと繋がっているんです。

最終決戦では、うしおととらの物語が一気に収束して怒涛の展開を見せます。

これがめっちゃ熱い!最っ強に熱い!

個々のお話ももちろんですが、うしおととらの物語すべてがただの過程ではなくて、しっかりと意味を持っているところが最高なんです。

しかもその熱すぎる最終対決までの流れも良くて。人間と妖怪が一致団結して臨まなければいけない白面の者との戦いを目前に、周囲からうしおととらの記憶が消されてしまうんですよね。

大切な人に忘れられ、愛する幼馴染・麻子にはビンタされ、さすがの元気小僧うしおも心折れかけ。

絶望的な展開です。

だけどとらだけは変わらずに覚えてくれていて「あぁよかった、とらだけは覚えてくれていた」ってなるのに、、、。待ち構えているのは、二人の絆にすら亀裂が入る更なる絶望の展開。

白面との戦いにおいて唯一の希望であるうしおととらの記憶を失った人間、妖怪、うしおととら自身も、そして読者までもが恐怖と絶望に苛まれます。

藤田和日郎先生、これはもう悪鬼羅刹の所業やん?

「いやいや、最強にして唯一の武器・獣の槍砕けましたけど…?」
「白面めっちゃピンピンしてますけどォォォォォ!?」

そんな焦りの中、今までに出会った(命を落とした)妖怪や人間が助けに来てくれるシーンがあるんです。

これにうしおの心は救われます。

散っていった妖怪や人間たちの命も無駄にはならなかったんです。うしおの優しさと思いやりがすべてを繋いだんや…と思うと、長い旅を見てきた読者としてはグッときてしまいますよね。

そんでもって獣の槍が復活!最強コンビも復活!ついに迎える最終局面!

この終盤の怒涛の展開、今までの伏線というかすべてを集約させたラストが最高です。

長々と語ったうえにしつこいですが、結論としてやっぱり『うしおととら』は個々のエピソードも良いけれども、全てが意味を持っていてラストに繋がっているのが最大級の魅力だと思います。

断片的に読んだり見たりしてハマらなくても、もしかしたら最初から最後まで楽しめばハマるかもしれません。

物語全体をとおして、面白いかどうかを判断して頂きたい…!
どうか…!なにとぞ…!

最後に

大好きな『うしおととら』の面白さを誰かと共感したい…という思いで私なりに魅力をまとめてみました。

少しでも「わかる~」とか、「ちょっと漫画読んでみっかな!」なんて思って頂けたらめちゃくちゃ嬉しいし狂喜乱舞して小躍りしそうです。

機会が会ったら読んでみてね!

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