【SABR】「損な打順」は何点分損するのか
鯖茶漬です。いつもお世話になっております。
■最適な打順とは
MLBの話題ではないんですが、少し気になったニュースが。
昨季12球団最高のwRC+193を記録、今NPBで最も優れた打者ともいえる近藤健介を5番に置く考えを小久保新監督が公言しています。
この戦術にXでは批判がちらほら散見されます。「出塁能力の高い近藤を前の方に置き、その後に長打力のある柳田や山川を並べるべきだろう」と。一見筋の通った意見に思えますが、果たしてシーズンにどのような影響を及ぼすでしょうか。
ところで、セイバーメトリクスにおいては「打順」についても研究対象となっており、既に「現段階の最適解」なるものがMLBにも浸透しています。以下簡単に紹介。
上の打順が最適とされています。「二番打者最強論」などは既に野球ファンにも多く知られてるところです。
とはいえ、ファンの間でも打順をめぐる論争はしばしば起こっているのが実状。上で紹介した近藤の打順も、分析結果に則ると損と言える可能性が高いでしょう。
では「損な打順」とは実際にどれほどの損失が見込まれるのでしょうか。今回は、同じメンバーであえて損な打順を組み、どれほどの差が生まれるのかを検証してみたいと思います。
■計算方法
データはMLBにおける2023年シーズンのものを使用します。また、損失得点を算出するにあたり、打撃指標「wOBA」を使用します。
まずは2023年シーズンの打順別成績。
PA/Gは1試合あたりの打席数。上で紹介した「最適な打順」と概ね一致しそうです。3番と4番のwOBAが逆になってるのは少し気になりますが一旦これでいきましょう。
計算方法は以下。
ちょっと荒いですがこれで。
■影響はどれくらいか
①まずは打順をひっくり返してみます。
クルッと打順をひっくり返しました(1試合あたりの打席数はそのままです)。最も打力の低い打者に最も多く打席が回る、いい感じに最悪の打線です。
②得点損失によるチーム打席数の減少を考慮します。計算方法は以下。
上の計算を行うと、変更前は1試合あたり25.820アウト、変更後は25.904アウト。162試合あたり13.4打席とわずかな差ですが、この数字に加重をかけて打順変更後の9人に分配します。
ほんの少しだけ打席数が減少しました。変更後の各打者における、1試合あたりの打席数は上の数字を使います。
③減少した打席数を考慮し、変更前と変更後での各打順のwOBAの差を算出。1打席あたりの損失に各打順の打席数を掛け、1試合あたりの損失を見てみます。
diff/Gは打順変更前と変更後での1試合あたりのwOBAの差です。チーム全体で1試合あたりwOBA0.082の損失が生まれました。これを得点換算します。
④wOBAは出塁率スケールに合わせるwOBAScaleの数値が掛かっています。なのでこの数値で割ってあげましょう。
■結果
1試合あたり0.068点の損失。シーズン162試合あたり約11.01点の損失だということがわかりました。だいたい1勝=10得点に当たるので、打順が勝敗に与える影響は約1勝分程度。個人的には体感よりもだいぶ小さいものでした。
実際のゲームにおいて、あえて「損な打順」を組もうとすることはほとんどないと仮定すると、打順が成績に与える影響はこれ以上に小さそうです。とはいえ、最適解が出ている以上、その理屈を理解した上でベストなオーダーを組むことが大切でしょう。
※ヘッダー画像はhttps://www.nytimes.com/2022/09/13/sports/baseball/mike-trout-home-run-streak.htmlを引用。
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