kazamori

note初心者の一般女子大学院生

kazamori

note初心者の一般女子大学院生

最近の記事

誓って恋愛感情ではない~その後

勝手に幸せになってろ。 と、確かに思ったはずだった。 自分がこんなにも執念深い人間だとは、自己理解の乏しさにほとほと呆れる。 きっかけは全国規模で影響を及ぼした、異常な台風だった。 鹿児島に上陸、山口から本州を進み、四国へ。 時速15kmでノロノロと動く台風は、当初の気象予報を大きく裏切り、各地で河川の氾濫、土砂災害をもたらしていた。 私は、強くなったり弱くなったりを繰り返しながら降り続く雨のせいで外に出ることもできず、九州あたりで停滞している台風のニュースを見つつだら

    • 悲劇のヒロインには、あまりに俗っぽい

      扉をバタンと力任せに閉めようとして、扉には何の罪もないと思い直し、就活で面接室の扉をそうするように、丁重に扉を閉めた。 ベッドに淵に腰掛け、そのまま後ろに倒れ込んでしまおうと思ったが、生理中なのを思い出して止めた。 血がお尻の側から漏れ出すとシーツの洗濯が大変だ。 こんなに突っ伏して泣きたい気分でも洗濯のことを考えている自分に失笑した。 女の身体というのはなんと不便なものだろうか。 ティッシュで目元を押さえると、ブラウンのキラキラしたアイシャドウが少し付いた。 ああ、もう

      • 祖母と私と、夏が閉じ込められた家~その①~

        久々に訪れた父の生家は、埃っぽいにおいがした。 新幹線の駅から在来線で1時間、さらにそこから車で1時間という田舎にあるこの家は、大正云年に建てられたものらしく、茅葺きの屋根こそ潰して瓦にしてしまったが、厩がある造りなどをみるにやはり相当年季の入った建物である。 天井にはやや歪な形をそのまま残した木材が一本通っており、子どものころの私は、その下の畳の上に寝っ転がってその黒々とした木材を眺めるのが好きだった。 だいぶ前に祖父が亡くなってからは、祖母がひとりでこの家に住んでいた

        • 「表現者」として生きること

          私は弁護士を目指して都内の法科大学院に通っている。 一応現在司法試験受験生なので、可処分時間の全てを勉強に費やすべき、とも思うのだが(そして実際そういう時期もあったのだが)、気づけば、将来に全くわくわくしなくなっていた。心臓が動くような体験を定期的にしなければ、人は鈍くなってしまうらしく、「あなたは将来なにをしたいか」という質問に、困り果ててしまうような人間になってしまった。 「豊かさ」とか、「生命力」とか、そういうものがどんどん希薄になった。 心の中に飼っている動物たち

        誓って恋愛感情ではない~その後

          誓って恋愛感情ではない

          彼は、哲学者のような手をしていた。 これは、私がある人間に人生を狂わされたと思うに至ったために、それを記録として残しておくものである。 この文章がどう着地するのかはよく分からない。 完全に見切り発車である。 私は現在都内で大学院生をしている23歳女であり、彼は、私の大学1年生の頃からの友人で、親友というか、悪友というか、そんな関係であった。 思慮深く、好きな作家は村上春樹と谷崎潤一郎で、趣味は将棋と哲学書を読むこと。どこか厭世家で、理屈っぽくて、面倒な人間だった。 元

          誓って恋愛感情ではない