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決定版 高気密高断熱住宅に不要なもの、必要なもの

この記事における高気密高断熱の定義

高気密:C値1.0以下
高断熱:G1以上(人によっては寒い可能性もあるが、一種換気ならG1でも問題ない。本来はできればG2以上)
その他:空調計画、日射遮蔽・日射取得がある程度できている前提。高断熱でも日射遮蔽がほぼない、遮蔽できていない、空調計画の質が悪い場合は該当しない可能性が高い

不要なもの

暖を取るもの

  • 羽毛布団→オールシーズン布団で通年過ごせるという人も少なくない

  • もこもこの寝間着→同上

  • 冬物用の収納→減らせる。羽毛布団や冬物の寝巻きは収納でも一番場所を取るからこれは大きい

  • 室内ソックス・スリッパ→末端冷え性以外の人は裸足でも。無垢床(特に針葉樹)との組み合わせでより不要に近づく。ただし空調計画や日射取得の状況によっては空気が足元を動くことになり足元は寒いということはあり得る。これを無くせたら温熱環境が最高の家の印

  • 暖房便座→必ず不要になるとは言い切れないが、室温によっては冬の便座も寒くない

  • 補助暖房全般→ゆたんぽ、こたつ、電気毛布等。局所的に暖を取るのは寒い家の典型なのでこれが必要なら高断熱とは言えない

  • 石油ストーブ、薪ストーブ→補助暖房同様に寒い家に必要なものの典型。石油ストーブは高気密だと二酸化炭素濃度が危険な状態になる

空気環境

  • 各部屋エアコン→2階建て(40坪以下)の全部屋を1~2台の壁掛けエアコンで冷暖房

  • 畳数通りのエアコン容量→エアコンの効きが良くなるため畳数通りで選ぶのは無駄となる。除湿するときに寒くなるなど弊害がある。エアコン選び、配置は非常に重要で低気密、無断熱住宅の感覚で計画すると痛い目に

  • 空気清浄機→換気システムが代替。ただ埃・ハウスダストは空気清浄機の方が吸うかもしれないのでこの点は要検討

  • 換気のための開く窓(特に窓を対面させて風通しを良くする配置)→24時間換気により空気は入れ替えられる。気密性が高いのに夏に湿気た空気を入れたり、冬の乾燥した空気を入れるのはもったいない

洗濯

  • バルコニー→室内の温湿度が安定しているため部屋干しでも臭くなりにくい。バルコニーを設けることで気密低下、大きな窓を開閉することによる空気環境の悪化に繋がる

  • 衣類の防虫・乾燥材→全館除湿(年間通して相対湿度60%以下)されていれば不要。ファミクロにより服をできるだけタンス内ではなくハンガー掛けにすることでより衣類が湿気にこもった状態を防げる。関連して昔の家にあるような大型タンスは無い方が除湿しやすい

玄人向け

  • 浴室換気扇→全館除湿していると夏でも風呂を開放すれば乾燥するため外気が流入してしまう換気扇をつけないという人も

  • 浴室暖房・浴室乾燥→風呂脱衣所も暖かくなるように空調計画を立てれば不要。注意したいのが高断熱であるだけでは脱衣、風呂は暖かくならないので空調が必須

  • 床暖房→G2以上、無垢板という条件。G1は部屋全体は暖かいが、天井と床の温度差があるため床は冷たい。よって床暖が有効(必要)になる。G2以上でも無垢板ではなく、挽板や突板では冷たい可能性が高い

  • LDKと玄関や階段の間仕切り→寒い家ではLDKは暖かく、トイレや廊下は寒いという状態。これが温熱的には不要になるのだが、間仕切りをどんどん無くすと空気環境は全部屋でよくなるが音の問題が出てくる。LDKから寝室まで遮るものが何もないとすると、自分達の生活音に悩まされること間違いなし。温熱ばかり考えた結果他のものを失わないように

  • 全館空調→空調計画、日射取得・遮蔽がきちんとできれば壁掛けエアコン1~2台で全館冷暖房が可能だが、設計のレベルによってはできないこともある。また住んでから調整する手間もかかるので、何も考えずにお金で解決したいならユカコとかを入れることは有効。ただ、知恵を絞れば解決できることに予算を割いて、他の住宅設備等の予算が減るというトレードオフを認識したうえで判断したい

必要なもの

全員共通

  • 再熱除湿エアコン→必須レベルNo.1。これが無いと高高のポテンシャルを50%も発揮できない。6~9月ごろの高湿度シーズンに24時間運転し続けて除湿をする。高気密だと冷房が効きすぎるので、再熱除湿が有効。小屋裏エアコンでも代替可能

  • 防音→高気密は外の外の騒音を軽減してくれるが、同時に室内の音が逃げにくい。低気密住宅の吹き抜けですら上の階に音が響くため、何の工夫もせずに吹き抜けやリビング階段を採用するとプライバシーが無い住宅に。これは特別な防音部材を使うというよりは、壁や間仕切り、階段の位置を工夫することが優先

  • 太陽光発電→高高に限らないが、高高の場合は夏シーズンに24時間除湿を続けたりするのでよりポテンシャルを引き出せる

  • 日射遮蔽→室内の熱が良くも悪くも逃げにくいため、夏に窓から日射をたくさんいれてしまうと暑くなる。外部シェードを中心に遮蔽を行う

  • 電動気密シャッター(トイレ、浴室):一種換気の場合。トイレ、浴室が24時間換気経路に無い場合、24時間回し続ける必要はない。むしろ除湿されたり、暖かい空気を捨て続けることになる。気密シャッターは未使用時に外部で蓋がされ、外気の侵入を防ぐことができる

微妙なもの

  • 除湿機→必要寄り。エアコンだけで除湿をやり切りたいが、寒さとの闘いになる。除湿はしたいが寒すぎるという人や、エアコンの運用に手間をかけたくない人は除湿機を使った方が楽

  • ハニカムシェード→プロもよく推奨しているが、結露リスクを増やすことが分かってきている。部屋が暖かくなっても結露リスクを取るべきではないと思うので必須とは言い難い。これをつけるなら窓をトリプルサッシにするべき

  • 浴室換気扇→換気扇自体いらないという人が出てきている。全館除湿されていれば、冬は解放して室内加湿、夏はサーキュレーターで乾燥という方法。しかし、カビキラーはじめとした溶剤を使うのであれば室内に出すわけにはいかないだろう。除湿されていればカビは生えないはずだが、生えたときにリカバリーが効かないので自己責任となる。私は必要派。気密シャッターつければ外気は侵入しないためほぼ同等の状態になる

元も子もない話

色々書いたが、高高に一番必要なのは「正しい知識」ではないか。

なんとなく理解している程度では使いこなせないどころか、不快な環境になることもある。高高に住むと「健康寿命が延びる」「医療費が減らせる」と個人的にはデマだと思うことを声高に言っている会社もあるが、高高に住んでから持病が悪化した調査結果もある。(後日記載予定)

他にもG3という日本で最高等級の断熱住宅を建てたのに、日射を冬に入れないから寒いという家もある。これは断熱にお金をかけた分の元を取ろうとして、冬に暖房をかけない、日射取得もしないことで寒い環境になっていたという事例だ。

他にも換気を止めないなど通常の家ではやっても問題ないが、高高でやると致命的な事故に繋がるものはたくさんある。

高高は凄いがなんでもできるわけではない。特徴を理解しないとうまく操作ができない。ある意味スーパーカーのようなもの。

乗用車と同じ感覚で乗ると事故になる住宅会社は知識が無くても住めばわかるというようなことを言っているが、そういう面もあるが新しい問題も出てくるのでやはり知識は必要だと思う。

特に高高が安いなら構わないのだが、今の住宅市場でG2以上にするのはそれなりにコストがかかる。コストがかかるのにそのポテンシャルを発揮できないとは何のためにお金をかけたか分からない。

だったら初めから性能はそこそこにして、国内メーカーの使いづらい食洗器をミーレはじめ海外製60㎝にした方がQOLは上がると思う。

人以上にコストをかけたならそれを使いこなしたい。

自分が扱えないものにお金は使わない、使うなら使い倒すという精神で高高と向き合いたい。

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