自転車はじめて1年でPBPを完走するまで #02 〜3ヶ月でSR編〜
はじめての自転車
2022年7月某日、生まれて初めて自分の自転車を手に入れました。
時は少し遡り2022年5月、特に何の予定もない休日。家のリビングでゴロゴロとソファーに寝転がり、「暇だな〜〜」と独り言を漏らしながらふとベランダに繋がる掃き出し窓から空を見上げる。すると、なんということでしょう、とてもとても風が気持ちよさそうな景色が窓の外に広がっているではありませんか。
「こんな日に外で風を切って走れたら気持ちいいだろうな」と、そう思いながら思慮を巡らせます。
車はなんだか風を感じにくそうだし、バイクは危なそうだし、そうだ、自転車に乗ろう。
そう思い立ち、淡路島に近いレンタルサイクルのお店をいくつか見繕い、即、翌日の予約をとりました。
そして翌日、早朝から電車に乗り明石駅に向かい、予約したお店でアルミロードバイクを受け取り簡単な説明を受けます。その後、覚束ない足取りでジェノバラインの乗り場に向かい、チケットを購入しフェリーに乗り込みました。
淡路島に到着し、いよいよ本格的にペダルを漕ぎ出します。
今まで自転車というと電動ママチャリでの幼稚園への送迎ぐらいでしか乗ったことがなかったので、自分の力でぐんぐんとスピードを上げていく自転車の加速感に胸を踊らせながら、目前にはどこまでも透き通った青い空と、キラキラと輝く海が視界いっぱいに広がり、すべてが想像以上の経験で感動を覚えました。
1時間も漕ぐと手も足も尻も痛くなり、この日は60kmほどのコースを走ってフェリー乗り場に戻り、自転車を返却して自宅に帰りました。
そして数日後、そこにはロードバイクの予約注文を終えて納車を今か今かと待ち続ける姿が…。
時は経ち7月中旬。予約注文をしていた自転車店から電話がありました。
店員さん「いつでも渡せるよ」
私「今から取りにいきます」
あれよあれよという間に手続きを終え、自転車に乗って自宅に向かいます。
(「納車されました」が正しいです警察の皆様こんにちは)
それから毎週(毎日?)のように大阪府内の峠や京都、奈良、滋賀、和歌山といろいろなところへ自転車で出かけ、納車2週間で500kmほどを走ります。
8月に入り、暑いので山登るか〜〜と軽い気持ちで六甲山(逆瀬側ルート)に挑戦しあまりのキツさに心がボキボキに折られます。ただ、この時に(あっ、ゆっくり漕げばいつかは頂上に辿り着けるんだ)と変な悟りを開き、山岳ライドにハマっていきます。
そしてなぜかその翌々日に淡路島に向かい、フルアワイチ150km 1100m UPを走り、「六甲山に比べたら全部マシ」理論で特に危なげなく走り切ります。
ただ道中めちゃくちゃ暑かったので、夏は自転車に乗るもんじゃないなとまた新たな悟りを開きました。
ここまで自転車購入から1ヶ月。
ブルベこわい
そしてまたその翌週、8月中旬。マイフレンズたちと伊勢志摩の海で遊ぶ約束があったので、せっかくなので自転車で向かうことにします。
大阪〜伊勢のルートで150km 1500m UPを走り切り、距離あたり1%UPの数字だけを見てそこはかとなく『がんばったら200kmブルベ走り切れるんじゃね?』と脳内の悪魔が囁き始めました。
もともと「ブルベなんて絶対に時間内に走り切れるわけないじゃん」とずっと思っていて、畏怖の念を抱きまくっていたのですが、気づけば9月の200kmブルベのエントリーが完了していたので、もう後には引けません。
エントリーしたブルベは
BRM917近畿200km泉佐野 高野山
高野山を中心としたわりと山岳コースっぽい雰囲気(獲得標高2700m弱)のブルベです。
さらに、9月に入り初ブルベが近づいてくる中、何の気なしに2022年度のブルベ開催予定表を眺めているとまた脳内の悪魔が囁きます。『10月毎週ブルベ走ったら2022年度のSRとれるんじゃね?』と。
思い立ったが吉日(凶日)、予定を押さえて即日エントリーを済ませます。
BRM1008近畿400km茨木 神さまのいるほうへ
BRM1015近畿300km守山 みけつくに若狭
BRM1022東京600km ぐるっと関東一周
BRM1029神奈川400km 追い風
んんん?400kmが300kmより先にきているぞ?大丈夫なのか?
そう思ったので10/29の400kmは予備として入れておきます(結果的には不要だったのでDNSしましたが、とても興味があるブルベだったので2023年2月に再度開催された同ブルベ400km追い風を走ることになります)。
なぜまだ200kmブルベすら一回も走ったことがないのにいきなりSRを狙おうとしているのか、自分でもよくわかりませんでしたが別に失敗しても死ぬわけではない(無理をしたら死ぬので無理はしないことを心に誓い)し、自転車歴3ヶ月でSRとれたらなんか面白いなと思ってそれ以上はあまり深く考えないことにしました。
その後も名古屋のイベントでDJをする予定があり大阪〜名古屋(伊賀越え)を自転車で移動してそのままイベントで初DJをこなすなど、自転車ライドを楽しみつつ初ブルベの日を迎えることになります(この時にばるさんのサイト(https://cannonball24.com/)からルートを拝借し、キャノボに対して強く意識をし始めることになる)。
BRM917近畿200km泉佐野 高野山
初ブルベが近づく中、連日のように天気予報に齧りつきますが、何度チェックしても予報はずっと雨。初ブルベで山岳コースで雨なんていくらなんでも酷すぎます。
とはいえ文句を言っても仕方がないのでmont-bellでレインウェア(U.L.サイクルレインジャケット)を買って雨に備えます。
初めてのブルベ、走力に関しては今さらどうしようもないですが、当日で一番怖いのはミスコースです。
そのため数日前にGarmin Edge 830をポチり、キューシートとルートデータを見比べながらRWGPSでルートをトレースし、Garmin Connectにブチ込んで手元のEdgeに同期させます。
ナビゲーションについて、本当は実走でテストできればよかったのですが、Garmin Edge 830が手元に届いたのが出走3日前。十分なテストができないままブルベデビューすることに。
そんな感じで当日を迎え、スタート地点の最寄駅までは輪行し、そこから自転車に乗ってスタート地点に向かいます。
スタート地点に着いて周りを見回すとそこにはつよそうなランドヌールたちが何人もいて、いやでも緊張が高まります。
ブリーフィングがはじまり主催の方からの「今日ブルベ初めての人ー?」に手を挙げてヘラヘラとよくわからない顔で反応をしながらキューシートと睨めっこをして注意事項を確認します。
その後は車検に進み、特に問題はなかったので準備ができた人からスタートし、初めてのブルベが幕を開けたのでした。
コースは関空のふもとであるりんくう公園マーブルビーチをスタートし、しばらく南下したあと和歌山との県境として山中渓を越え紀ノ川を渡り、そこから東進して高野山を目指し本格的なヒルクライムが始まります。
高野山を越えたあとは野迫川村の秘境みたいなところを走って天川村に抜け、五條市方面に下ったあとは紀ノ川沿いを西に走って再び山中渓を越えて大阪に帰ってくるというコースです。
高野山を越えてから五條市に下るまでは(雨だったこともあり)車も少なく走りやすいですが、この区間は補給ポイントもあまりないので、それなりに補給食を持って走る必要のあるコースかと思います(高野山を越えてからはあんまりエグい登りはないのでそこまでシビアではないですが)。
スタートしてしばらくは信号もあるので何人かが団子になってしばらく走ります。
私は生粋のぼっちサイクリストなこともあり、実はこのブルベが「他人と同じコースを走る」初めての経験で、前に人、後ろに人、という状況に妙なワクワク感を感じて少し変なテンションになっていました。
ただそんな状況も長くは続かず、高野山へのヒルクライムが始まる頃には走者もほぼばらけ、恐らくですが最後尾ぼっちに。
ですが道の途中で主催の方が待機してくれていたり、PCでの有人チェックなどもあったので、それがすごく励みになったりしていました。
高野山を越えしばらくすると雨が降ってきました。
ダウンヒルの途中ということもあり濡れたまま下るとかなり冷えそうな予感がしたのでレインウェアを着込みます。
そこからしばらくはひとっこひとりいない野迫川村から天川村に通じるゆるやかに登る道を雨のなか淡々と走り、少し雨が弱まってきたあたりでPCであるJAならけん天川支店に到着。
実はこのあたり、つい2ヶ月前に子供達を連れて川遊び&バーベキューをしにきたあたりだったので、見覚えのある道になんとなく安心感を覚えたりしていました。
ただ先日来た時に比べると本当に人も車もいない…川遊びのシーズンが終わって雨が降っているとここまで閑散とするのね…。
ここからは基本下り基調のはず…とトンネルを猛スピードで下っていくものの、そうは問屋がおろしてくれず、無慈悲な登り返しもあり、お腹がぺこぺこになりながら五條市のコンビニPCに到着し、お腹いっぱいごはんを食べ再出発。
「早くおうちに帰りたい」と突然のホームシックになったりしながら紀ノ川沿いを走り続け、復路の山中渓を通る頃にはもう暗くなっており、生まれて初めての暗闇ダウンヒルを堪能。
VOLT800+mont-bell パワー ヘッドランプの光量で全く怖さを感じることなく大阪側に下り、ゴールPCで時間を見るとクローズ時間からは1時間半ほどの巻き。
残りは淡々とゴール受付の施設まで走り、フィニッシュ!
(雨で獲得標高がバグってることに当時は気づいてなかった)
なお、初使用のGarmin Edge 830は5kmごとに鳴る自動ラップ通知に「うるせー!」と思いながらも止め方が分からず、また水没対策としてジップロックを被せるとまじでぜんぜん操作ができないことを学んだものの、概ねナビゲーションのお仕事はこなしてくれました(でも初物をブルベに投入するのはなるべく避けようね)。
そんなこんなで初めてのブルベは無事完走で幕を閉じました。
寒さとの邂逅
200kmのブルベデビューを終え次に控えるは400kmブルベ。
400kmブルベは100%オーバーナイトがあるので200kmと同じ感覚でいくと死ぬな〜と思いながら翌週はDJイベントで東京にお呼ばれし、帰りの新幹線が大雨で運休になるなどして3日間ほどロクに睡眠がとれないまま大阪のお家に帰宅。
突然海が見たくなり、そのまま自転車に飛び乗りひたすら西に向かい続けます。
国道2号線をひたすら西に進み、西明石あたりの分岐で国道250号線に入ったりしながらさらに西に向かい続け、夜も更けていきます。
若干の肌寒さを感じつつ、眠気を感じ始めたので早朝4時ごろに見つけたコンビニのベンチで横になります。
30分ほど経ったでしょうか。
起き上がると、寒い!!!!
自転車に乗りはじめて初めての寒さとの邂逅。
無理!!!!
ブルブルと震えながら再び自転車に乗り、また西に向かいます。
相生市から赤穂市に抜ける高取峠に差し掛かり、えっちらおっちら登っていると、標高も斜度も大したことがないのにとにかく身体が言うことを聞かない。
心が折れそうになりながら頂上に辿り着き、道路脇に東屋のようなものがあったのでそこの椅子に座りテーブルに突っ伏して数秒で気絶。
なんだかとにかくつらかったので、そのまま赤穂市側にダウンヒルし、播州赤穂駅からお家に帰ることに。
一応この時は広島までのルートを引いていたのですが、自分の寒さ耐性と眠さ耐性のなさで途中で完全に心が折れたことにより、自ずと400kmブルベの課題も見えてきました。
まず、夏用のインナーしか持っていなかったので秋用のインナーを買い足し、さらにネックウォーマーやウエストウォーマーを調達します。
あとはホッカイロを携行しておけば、たぶん寒さ対策は大丈夫。
眠さ対策は、どうしようもないのでせめて寝ても身体が冷えないように着込んでから寝るようにしよう、と心に決めました。
そしてその翌週は友人達としまなみ海道を2日間かけてわちゃわちゃと走るとてもとても人権のあるライドを楽しんで、またその翌週、ついに初400kmブルベの日を迎えます(忙しいね)。
BRM1008近畿400km茨木 神さまのいるほうへ
この日も早起きをして輪行袋に詰め込んだ自転車とともに電車に飛び乗り、スタート地点に向かいます。
駅について自転車を組み立て、スタート地点である公園まで自転車を漕ぎ出します。
変な緊張感に包まれながら道を走っているとスタート地点の公園をいつのまにか通り過ぎており、いきなり迷子になるという始末で先が思いやられます。
ブリーフィングが始まるのを待っているなか、公園のグラウンドで地域のおばちゃんたちがラジオ体操に勤しんでいます。
ピチピチの服を着た自転車集団が珍しいのか、ラジオ体操を終えたおばちゃんズに話しかけられました。
「どこまで行くの〜〜?」
「アッ、出雲までです」
「出雲ってあの出雲大社の?どれぐらいかかるの〜〜?」
「アッ、1日です」
「エッ…(ドン引き)」
今回のコースは大阪を出発し、有馬温泉を越えて姫路・宍粟へ西進、そこからは国道29号をひたすら北上し戸倉峠を越えて鳥取市街に向かいます。
鳥取市街からは真っ暗な日本海を堪能しながらひたすら西に向かい、真夜中の大山を登り、山間の集落を抜けて出雲大社にたどり着くコースです。
出雲にゴールした後は飛行機で大阪まで帰ってくる予定なのですが、おそらく自転車に乗る前の自分にこの計画を説明したら「自転車で行って飛行機で帰ってくるってバカじゃないの?」と言っていたことでしょう。
今となっては「まあ普通じゃん?」となりますが、やっぱり400kmの片道コースを地図で見るとそれなりにパンチがあるなと思います。
ブリーフィングを終えスタートし、まずは箕面の軽いアップダウンを越えながら六甲山方面に向かいます。
六甲山のふもとに着くころには前回同様おそらく最後尾ぼっちになっており、とはいえ無理をしても仕方がないので自分のペースでえっちらおっちら登っていきます。
今回は頂上までは行かず、標高400mぐらいまで登ればいいだけなので若干の疲れを感じつつも有馬温泉に到着。
有馬温泉からはエグめの斜度の短い登りを挟みつつ、そこからは長い下り基調。
そして下り切ったところでコンビニPCに到着。
そこまでお腹も空いてなかったので、ポカリとブラックサンダー4個と大きなわかめごはんのおにぎりを買い、おにぎりだけをその場でモシャモシャと食べて再スタート。
ここから次のコンビニPCまでは約50km、ボチボチ行きますか〜とペダルを回しているも、ぜんぜん進まない。
周りは田んぼしかないような開けた景色の中、ものすごい向かい風が吹き続けているのです(あとは本当に若干ほんのり登って?る?)。
兎にも角にも永遠に感じるほどのとんでもない”つらさ”を感じた区間でしたが、ヘロヘロになりながらもやっとのことで次のコンビニPCに到着。
他の参加者と「風ほんまエグかったすね」などと話しながら少し遅めのお昼ごはんを食べる。備長炭焼き親子丼。
まだ130km程度しか走っていないのに半分心が折れつつ再スタートをし、鳥取県との県境に向けて北上していきます。
ここからの登りは斜度は低めながらなんだかんだ距離を走りながら標高700mほどまで登るもの。
スピードは出ないものの平坦に比べると風の影響はそこまで大きくないので、心を無にして淡々とペダルを回して登っていきます。
標高500mぐらいまで登ったところで視界が開け、大きな湖が視界に広がるなか道が平坦になり、綺麗な景色に目を奪われながら湖にかかる橋を渡ります。
やっと終わったか〜などと思いながら進んでいくとまた登り。
軽いため息を吐きつつ再度登っていきます。
そしてやっとこ標高700mまで登り、新戸倉トンネルを抜けると、ようやくそこは鳥取県。
ギューンとダウンヒルを下ったあと、しばらく緩やかな下り基調が続いたのち、鳥取市街に突入。
あたりは真っ暗になっているなか、コンビニPCでご飯を買い、外の駐車場でもぐもぐと食べます。
この時点での貯金は2時間半。そこまで大した余裕はありません。
あまり長居をしても身体が冷えるので、そこそこの時間で再スタート。
しばらく走ると右手に夜の日本海が広がり、ザザン、ザザンと波の音が耳に響いてきます。
(この区間、地味にテンション上がってた)
海沿いのアップダウンを抜けると国道9号線と合流。
車がバカみたいなスピードで横を追い抜いていくので、恐怖を感じつつもフラフラして車に轢かれないように気をつけて走り続けます。
しばらく走り続けるとうっすらと人の気配がする建物がちらほら見えてきて、コンビニで小休憩。
海沿いを走ってた時は「200km超えてから急に元気になってきたぞヒャッホイ」などと思っていたが、この頃には再びイヤイヤモードに。疲れた。寒い。
再スタートを切って、そろそろと大山の方向に向きを変えていきます。
時刻は23時になろうとしているところ。大山の麓は真っ暗闇です。
えっ、ほんとにマジで真っ暗じゃん。怖い。
ここから大山を登っていくのですが、これまでの疲労もありへろへろのへろへろで、亀のような歩みで登っていると後ろから他の何人かの参加者に追い抜かれていきます(人の気配を感じれてちょっと安心したり)。
アッ、でもほんまにキツい。無理かも。
心拍計の乳バンドの締め付けが異常なくらい不快に感じ始めてきて、たまたま現れた自販機の前で自転車を降り、心拍計を外して飲み物を補給してから自販機の横に1mほどの高さの擁壁があったので膝を曲げて横になります。
5分ほどでしょうか。目を瞑っていた時間はほんのわずかですが、少し身体が楽になっているのを感じました。
再び自転車に乗り大山を登り始めます。時刻は深夜0時半を回ったところ。
こんな時間に大山登ってるのマジでぜんぜん意味わかんないな、と思いながら空を見上げると、真っ暗な山の闇の中、今まで見たことがないくらい大きな月が空に浮かんでいました。
ああ────
今夜はこんなにも、月が綺麗だ────
などと思いながらペダルを回し続けます。
(後日Twitterでエゴサしていると別の参加者が同じ時間にまったく同じ内容をツイートしていて笑ってしまった、超わかる)
深夜1時半を回ったころ、ようやく大山寺のある標高800m弱の地点に到着しました。
ダウンヒル中に眠気が襲ってくるととてもとても危険なので、レインウェアを含め着れる服をすべて着込んでベンチで横になり目を瞑ります。
妙な高揚感で眠れはしなかったものの、10分ほどでリスタートします。
そこからのダウンヒルですが、目前に街の夜景がキラキラと広がり感動を覚え……
うわっ!これ斜度ヤバくない!?こわっ!!!!
下り坂のあまりにもキツい斜度にビビりながら道の路肩を見ると無造作に倒れた自転車とそのそばに横たわる人影が。
当時は道路の脇に人間が横たわっている光景にカルチャーショックを受けましたが、そのまま下り切ったあと道の左右にちょこちょこと人間が横たわっているのを見て、なるほどこういう感じなのかと納得しました(ただこの時外気温が9℃を切っていたので、普通に低体温症で死ぬくない?とは思った)。
走っているとコンビニが見え、多くの参加者が吸い込まれていっているようですが、PCであるコンビニはもう少し先なので後ろ髪を引かれつつ先を急ぎます。
コンビニPCに到着し、お腹が空いていたのと、温かいものが食べたかったのでカップヌードルを買ってお湯を入れ、あぁあったけぇと思いながら寒空の下モソモソと食べていると、突如ランドヌールらしき人に話しかけられます。
「ブルベですか?」
「アッ、はいそうです」
「やっぱりそうですよね、さっきから何人か見かけて…ちなみにどこのブルベですか?」
「アッ、近畿400で大阪から…」
「えーっ!すごいですね!ぼくは岡山600です」
「(いや600だったらそっちの方がすごいじゃん)」
なんて会話をしたことをこれを書きながら思い出して、あのお兄さんがどのブルベを走っていたのか調べてみたのですが、たぶん岡山600km中国山地(8000m↑)。
ガチの化け物やんけ。
再スタートからしばらくして、徐々に満腹による眠気が忍び寄ってきます。
再び山間部に入り、人里離れた山道を登っていきます。
何度目かわからない身体の限界を感じながら走り続けると突然、使う人いるの?という場所に自販機と郵便ポストが現れました。
ちょうど地面がコンクリで背もたれもあったので、郵便ポストの裏に腰を下ろし、10分のタイマーをかけて目を瞑ります。
目を瞑った次の瞬間に鳴り響くアラームの音。
無事に眠れた(気絶していた)ようです。
これだけでも眠気はなくなり、また身体も少し楽になりました。
再び走り続け、空が少しずつ明るくなってきました。
集落の道を抜けながら、少しずつゴールが近づいてくる気配を感じます。
ラスト30km地点の最後のコンビニPCに辿り着き、別の参加者に「もうここまできたら大丈夫ですよね」などと話しかけられながら、残りは平坦かつ1時間の貯金があることに安堵しつつ、ラストスパートを頑張るためにアリナミンVを飲みます。
ちなみにこの方はこの400kmブルベにSRがかかっているらしい(600kmは人と走ったのでなんとかなったがこの400kmはここまで単独で結構しんどかったとのこと)。
600kmって仮眠できるし意外とそんなにしんどくないんかね〜などと思いつつ再スタート。これがものすごい勘違いだったということに2週間後気づくことになるのだが。
もう脚はほとんど動かずフラフラです。
歩いた方が速いんじゃない?というレベルのスピードしか出ませんが、気力だけでペダルを回し、少しずつゴールに近づいていきます。
歴史のありそうな街並みを通り抜けながら、どんどんと人と車が増えていきます。
出雲大社前の神門通りを抜け、ついに出雲大社に到着!
ゴールPCでブルベカードを提出しメダルを受け取り、コンビニで買った豚汁をゆっくりと飲み干します。
時間に余裕はありますが、このあとは空港までの20kmを自転車で移動しないといけません。
出雲大社の前で写真を撮り、観光をする体力も残っていなかったので、そそくさと空港に向かいました。
空港までの道のりを走っていると、道路沿いに大きなグラウンドがあり、端の方にベンチがいくつかあるのが見えました。
身体は明らかに限界だったので、ベンチに横になりアラームをセットします。
そのまま2時間ぐらい寝てしまったのですが、すこぶる元気になったので、また空港に向かって走り出します。
空港に着いて、自転車を輪行袋に入れてチェックインカウンターに預けたあと、空港内でご飯を食べていると、徐々に実感が湧いてきました。
400km、走り切れてしまったねぇ。
そんなこんなで、自転車に乗りはじめて3ヶ月弱、初の400kmブルベも完走できましたとさ。
1年前の出来事だというのに、この初めての400kmブルベの記憶だけ無駄に解像度が高く、とても長くなってしまったので、続く。
次回は残る300kmと600kmです。
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