日本が誇る左右Wエースの登場。従える「27」の系譜・野村IDの遺伝子。

3連勝とし、試合前に1次ラウンド突破が決まった中での1戦。

現状の日本プロ野球で主導権を握るのは、誰がどう見てもセならヤクルト。パならオリックスであろう。2年連続日本シリーズがこの組み合わせなら異論はないはずで。
その2チームのエースがいよいよ登場。
勝って1位通過を望まれる中での1戦ではあったが、圧巻の投球であった。
毎度のことながら、揚げ足取り・結果だけでのモノにならないようにしたい。
全て書く前ではあるが既に長くなる予感はしてるので、本当に長くなってしまったらご愛嬌で。

日本スターティングメンバー

⑧ヌートバー
⑨近藤
DH大谷
⑤村上
⑦吉田
③岡本
④山田
⑥中野
②中村
P山本

日本が誇る4冠エース、山本由伸

結果から先に伝えれば4回1安打無失点8奪三振の圧巻の投球。まさに寄せ付けない内容とはこの事というような投球であった。
オーストラリア打線を初回見た印象はどんどん振ってくる
故に2回以降は丁寧に、変化球の割合も多少増えた。球数が増えていった影響はこの辺にあると思うが、バッテリーの嗅覚に脱帽である。

全ての球種が高水準。
ストレートがファールになる点を見ると、昨日は相当球がキレていたのだろう。そこが山本の強みでもあると思う。
それこそ2年連続投手4冠という名に恥じない惚れ惚れするような投球であった。ナイスピッチ。

極上のキレ味ヤクルト看板左腕、高橋奎二

山本の後を受けて5回からマウンドに立った高橋。左の踵を上げ、勢いよく右足を高く上げる独特なフォームから声を出して投げ込むストレートはまさしく剛球という印象。
自チームの中村が芯で捕れない時すらあるくらい、勢いのあるストレートを投げ込んでいた。
結果は2回1安打無失点2奪三振
今永・宮城といる中で、存在感はしっかり見せた投球であった。
あのストレートにブレーキの効いたカーブを見せられたら、使いたくなってしまうよね。という感想しかなかった。お見事。

「27」を受け継ぐ野村ID野球の遺伝子。

私は書物全部洗いざらい読むほどの野村信者である。
ID = Import Date
データ重視という意味に思われがちだが、勘や経験でプレーするのではなく、データを駆使して行うという意味合いである。
ID野球の申し子といえば古田。と、パッと思い浮かぶだろうが、ヤクルトの27番を受け継いだ男こそ中村悠平である。
野村監督は生前何度も口にしていた言葉。
優勝チームに名捕手あり
日本シリーズが捕手を成長させる
それを体現しているのが、中村ではないかと思う。
先日の韓国戦でおこがましいと思いながらも苦言を呈した。

こちらの記事をWBCまとめに取り上げて頂いたが、ぜひこの記事も取り上げて頂きたい気持ちである。流石中村。と思わせてくれるくらい、完全に修正し展開が有利だったと言えど、唸る配球を見せてくれた。

常々、お尻を決めた配球をしない。というのを、現役時代含め、今でも念頭においてきた。お尻というのは決め球のこと。

例えばフォークで三振に切ろうと思えばそこに向かって配球をしていくわけだが、そうなると少々想定と異なる事が起こると対応できなくなる。
カウントが有利に進まなければ投げたい決め球に向かっていくのも苦しくもなるので、決め球は決めずに選択肢の広がる配球を捕手には求める。
お尻を決めないとは。配球とは。を見せてくれた3回であった。

山本が唯一ランナーを出した3回。
1アウトから8番パーキンスに初球の恐らくカットボールであるが、左前ヒットを打たれて以降が見事な内容。
ランナー1塁で迎えた9番ボヤルスキーに対しての配球は以下の通り。

①真ん中寄りストレートを真裏やや1塁側へファール
②同じ高さから低めのボール球になるカーブを空振り
③真ん中高め要求で空振り三振
(三振後、山本は中村に向かって拍手)

2アウト1塁から1番のケネリーに対しては以下。

④外角いっぱいのカーブを空振り
⑤内角ストレート詰まってニゴロ

配球を振り返るとボヤルスキーに対しては、9番ということから原点の外角のストレート要求も甘くなったがファールになった。
なんとなく外角ストレートということではなく、山本だから万が一振ってきたとしてもコースに決まればファールになってカウントも稼げると踏んだのであろう。それが少々甘くなったがファールに。

投げたストレートのコース・高さから、低めのボールに投げ込んだカーブを空振りにし追い込んだ。ここは山本のコントロールの良さに驚く。

次に選んだのが真ん中肩の高さ付近のストレートを選択し空振り三振となるわけだが、真ん中→低め→高めと目線を動かす配球となった。
これが、例えばストレートで、フォークでとお尻を決めた配球では間違いなく無いと思う。逆に空振り取れてラッキーくらいに思っているはずで。
この球がボールで2-1になっても、フォークで再度低めのパターンもあるだろうし、外角のストレートだって投げれる。
9番だからここで内角という選択肢は万が一死球になっては勿体ないので無さそう。ただ、2-2になれば話は別。というように、選択の間口がかなり広がる。
故に、2-0からの高めのストレートで空振り三振が取れたときに、山本が中村に対して拍手を送ったのは「ナイス配球」という意味合いだったと考える。

2アウトから迎えた1番のケネリーの入りはであったが、ケネリーの1打席目にストレート、カーブと続けて振ってきてファール、2-1からのフォークを空振り三振と、どんどん振ってくるという事が頭に入っていたのであろう。
振ってくるならばボールになるカーブを選択し、空振りが取れるかもしれないし。あわよくば引っ掛けて内野ゴロになるかもしれない。そんな魂胆が見えた。結果、空振りが取れた。
1打席目から通じて外目のストレートや変化球を投げ続け、外を意識させ打ち気なところにで詰まらせてセカンドゴロに斬って取った。
中々味のある配球だな。と唸ったし、やはり配球とは前の打者や前の打席、イニングや展開、投手力を諸々を考え、線で繋ぐものだな。と改めて思わされた。

このイニングは意味合いのわかる高校生・大学生のお手本になるような配球と言えるし、ぜひ1回~3回まででいいので映像を見てもらいたいくらいである。

やはりこの引き出しは、ちょっとやそっとでは手に入らないもの。
それこそ苦労して掴んだ正捕手の座から見た日本シリーズがあったからこそと言える。やはり比べられるのは「27」の前任、古田敦也。
それを超えてくれとは思わないし、超えていく成績の壁はとてつもなく高い。
ただ、別の色でヤクルトの「27」は中村。
と思える子ども達が増えていくのは間違いないのではないか。
そう改めて思わされた今日の試合であったし、本戦でより一層思わせてくれるようなプレーに期待したい。
そして、野村IDの遺伝子を絶やさない大役にも期待して。

頂けたら明日の活力になります。