B.B軍曹『セフレ婚』書評
B.B軍曹さんと髭さんを知ったのは、Instagramである。夫の髭さんのポジティブかつ機転の効く言葉選びや考え方を、B.B軍曹さんの素敵かつ個性のしっかりあるマンガでアップロードしていて、それを一目見たとき、「あ、これは学ぶものが多い」となって即フォロー。
そんなB.B軍曹さんが、主婦と生活社さんにて髭さんのポジティブ語録の単行本を上下巻で発売されると知って、Amazonをチェックしていたところ、『セフレ婚 出会ったその日に心も体も奪われた私は』の存在を知り、戸惑いつつも読んでみた。
戸惑った、というのは、私のなかにまだ「セフレ」というものにネガティブな先入観があったことと、このお二人の馴れ初めのスタートがセフレだったことが意外だったためである。どうやら、まだ「道徳」とやらは、私の無意識に僅かならが残ってしまっているらしい。けれど、読み始めた。「道徳」がテンプレートとして役に立たないことくらい、37年生きてきてわかっているつもりでもあるし、何より魅力的なお二人の赤裸々な所にロックやパンクのような強く激しい原色を感じていたからだ。
読み始めたら、ノンストップでハマった。まず、読みやすい。変なもたつきもなく、B.B軍曹さんの漫画家としての才覚がいかんなく発揮されている。匂わせて伸ばし伸ばしということもなく、リズム感があり、テンポ良く読める。
だが、一コマ一コマ、そしてセリフや絵に重みがある。とゆーか、めっさ考えさせられる。自分に投影したりもするし、感情は喚起されるし、余白から浮かんでくる空気(それぞれ描かれていない部分から感じさせられる、お二人の過去や葛藤など)が深く、熟成されたウイスキーのような密度がある。
Instagramでは、髭さんを勝手にパーフェクトマンと思っていた。そしてB.B軍曹さんは髭さんに支えられて邁進するアグレッシブウーマンだと。これはある意味間違いであったのかも知れない、と、読みながら思った。むしろ、B.B軍曹さんに髭さんは支えられ、立ち直らさせてくれたのではないか、と。
何となくではあるが、髭さんの気持ちもわかる。たぶん人一倍敏感な方なのだろう。その敏感さを気遣いとして多用した結果、疲弊して、ちょっと斜に構えるようになったのではないだろうか。
そこに、自分の気持ちを悩みながらもはっきりと伝えてくれるB.B軍曹さんに、ようやく真正面から向き合うことができ、そして気遣いから気配りへと変化して、お二人は今に至るのではないかと感じた。私は、匂わせや脊髄反射言動が苦手なので、はっきり伝えてくれること、そして考えた末での言動であることのありがたみは、正直に羨ましい。読了したとき、本当に素晴らしいパートナーさんと出逢えたんだな、と、心から祝福する気持ちが前よりも増していた。勝手ながら、前よりもB.B軍曹さんが頼もしく思え、前よりも髭さんが可愛らしく思えている。ちょっと吉行淳之介が髭さんに連想されたりもしたが、ここでは省略しよう。
出逢い方はそれぞれであって、世間的な正解はない。そもそも、世間的な正解があるのなら、と攻撃的な所も顔を出しそうだが、今回は控える。
そんなことよりも、人と人の愛の本質はこの本に描かれているので、ぜひ手に取って感じて頂きたい。
そして、あなたにも唯一無二のパートナーと出逢う心の準備をしていただきたい。この本は、それだけの効果がある。
なので、これから私は、いつでもウェルカムにできるように、部屋掃除をしてくる。いつもより、ルンルンな気分で。
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