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大学生活

大学生になった莉沙は
張り切って勉強をした。
精神医学に対しては、特に熱心で
冬になると、また肺炎を起こすのではと心配したが
体調管理も行き届いている様子だった。

あの頃、気にしていたこと。
勉強に対しては若干、過集中気味で
はじめると食事や睡眠を忘れてしまうこと。
でも、それは
声をかければ切り替えることができた。

もっと気になったのは
見た目を気にしないこと。
莉沙は、指摘しなければビックリするような格好で登校する。
制服があるうちは良かったが
大学生になって初めて、コレを着なさい。ソレはおかしい。と指摘しなければならなかった。
気にいると毎日同じ洋服を着るので
洗濯ができず、不潔なので
全く同じ洋服を買ってきて
毎日同じ洋服で登校していた時期もあった。

成人式では感覚過敏で着物が着れず
スーツを買ったものの
当日になって「こんな自分を世にさらすのはいやだ」と出席しなかった。

大学の仕組みもなかなか慣れなかった。
自分で選択して課題を進めていくことが
かなりのエネルギーを消費し
大学生になってから日に日に睡眠時間が長くなり
友だちと遊ぶとか
バイトをするとか
サークル活動をするとか
余裕はなく、せっかくの大学生生活を満喫出来なかった。
ただ、莉沙本人はそのことを気にも留めず
ひたすら勉強と睡眠に明け暮れる生活だった。

真面目な学生。

そう言われてた。

そうだろう。
真面目に授業を受け静かに過ごす優等生に見えただろう。
だけど。
あの頃から莉沙は
じわじわと。
ゆっくりと。

大量の薬を飲んで酩酊したり
リストカットをしたり
夜中に泣き叫ぶなど
不安定さがあり
周りの評価とは大きなギャップがあり
そのことが彼女を苦しめていたのかもしれない。
と、あとになって思う。

莉沙は大学病院の研修医として働くことになる、あの時までが
なんとか
正常を保てていたのかもしれないし。
もし戻れるなら。

その前に、莉沙の手を引いて
救ってやるべきだったのではと
私は今になっても心残りである。


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