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新たな目標

なんだかんだと介護が1年続いた。自分の心の弱さから1ヶ月で逃げ出すと思い、一ヶ月分の給料をもらってまた、その後はその時考えよう、自分には務まらない、と思って一日、一日気がついたら一年。本業の動画制作は社員もいないし、たまにくる番組制作だったり、知り合いからの発注をこなすくらいになった。動画というジャンルは好きだし、スポンサーさんに対する営業も苦ではないので企画を考えたり、営業したり、枠を選んだりすることで今の自分の状況でできることをやっていこうと思う。とは言え、現状では大それたことなどできない。今自分を助けてくれているのは介護であることは疑いの余地はない。であれば、介護という世界でもう少し頑張ってみようと最近思い始めた。
 幸い、利用者のお年寄りからの信頼というか、慕ってもらえているのはとても感じるし、思ったほど排泄処理も嫌ではない。
不思議だ。介護職など底辺の人がやる仕事、と無意識に思っていたけど、いざ自分がやると、うまくはできていないけど、卑下するような感情は全くない。また、介護をするようになって、本、映画、音楽など、いわゆる芸術に関する情報や作品に触れる機会が増えた気もする。それも理由はわからない。自分はあくまで起業家であり、なんとかしたいと思っている。
でも今は、著名な経営者が主催するようなセミナー、日経新聞が主催するような勉強会なども行くことはない。
その代わり、利用者のおばあさんたちが先生だ。現役時代は町工場を営んでいたり、商店街でお店を開いていたり、古本屋の社長、スーパーの社長、など。認知症だから全てにおいて明快な言葉ではないけど、トイレ介助時、ふとアドバイスしてくれるのだ。その時は目力もしっかりした頼れる人、という印象を受ける。
今自分がいる環境、できる状況でできることをやっていこうと思う。
 先日実家に戻った時、介護のことをよく聞かれる。僕が、それなりに苦痛ではなく続けていて、面白い話を聞かせると本当に喜んでくれる。
「そうだよ、お前、介護の仕事向いてるんだよ。」
とか、妙におだてるのだ。本業の映像で褒めて欲しいけど、まぁ、いいか。
資格を目指して今勉強中だということも伝えるとさらに嬉しそうだ。
で、ポロリと、
「介護タクシーでもやってみようかな・・・」とつぶやくと
「おお!それいいじゃない。うちのマンションにもよく福祉車両が止まってるよ」
「ぜひやんなさい!」
普段僕が何か取り組もうとすると、
「そんな簡単じゃないよ、お前みたいなのはいっぱいいるんだ」
なんて言うのに、、介護となると両手を上げて勧めるのだ。
「介護タクシーだってまずどう進めたらいいかもわからないし、そんな簡単じゃないとは思うけど・・・」
とこちらがブレーキをかけてしまう有様。
 なぜ介護タクシーか・・・映像制作ではよく機材を積んで車で移動が多い。車の運転はお手の物なのだ。あと、お年寄りの介護も1年間やってみて、自分と相性的な問題としても悪くはないようにも感じる。
そして、今後は在宅介護も増えていくと睨んでいる。社会保険が財政を圧迫する中、個人個人で自宅で面倒を見ることが増える気がする。横浜市が発表している福祉の過去数年間の白書も買って今調べている。何が課題なのか。
 何より利用者のお年寄りの足となって、病院に連れて行ったり、トイレ介助をしたり、誰かがしなければいけないことだ。
でも家族が全て担うのは無理がある。タクシーで病院に送ってもそのあとが難しい。であれば、と考えたのである。
もちろん簡単にできるものではないのはわかっているが、ずっと鬱屈した毎日を過ごし、自己否定を繰り返す毎日から少しだけ心が変わって前向きになってきたのも感じる。
早速近所の教習所から二種免許の資料を取り寄せる。
 これから、介護・認知症という世界に足をもう少し入れてみよう、そんな風に思うのだ。
映像だって、認知症、介護、医療、福祉、これらのキーワードに特化した企画、コンテンツを考えることだってありなんじゃないか、そう思うようになったのだ。そのために今があると信じている。
元オリンピック選手の高橋尚子さんの言葉を思い出す。
「何も咲かない寒い日は、下へ下へと根を伸ばせ。やがて大きな花が咲く」
この言葉を胸に、今日も頑張ろう。今日は久しぶりの番組打ち合わせだ。
ではまた!

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