リネン交換

 朝の入浴介助が終わり、次の仕事に取り掛かる。
リネン交換だ。このリネン交換も慣れないと手間取るなかなか手強い相手だ。
リネンとは入居者さんが寝ているベッドのシーツ交換のことだ。シーツ、枕カバー、掛け布団カバーなどを交換を行う。
ホテル勤務の経験がある方なら造作もないことかもしれないが、今まで自宅の布団すら適当にしていたのだから、綺麗にしかも時間内にセットするのは至難の技だ。もたもたしていると
「齋藤さん、いつまでリネンやってるの?」
とお叱りをいただく羽目になる。まず難関の一つ目はシーツだ。シーツをピンと張った状態でマットレスに敷くのがなかなか難しい。どうしてもシワが出てしまったり、左右のバランスがイマイチになる。
 なんとかシーツを仕上げてもその次に控えているのは、掛け布団のカバー交換。古いカバーを外して、新しいカバーの中に掛け布団を入れるのだが、四隅がまっすぐぴったり合わない。どうしても片側に寄って団子ができてしまう。
四苦八苦しているとだんだん両肩が痛くなってくる。大した重さでもないのに、焦ると変に力が入って肩が疲れてくるのだ。
 枕カバーのセットも何気に新たな発見がある。袋状のカバーに枕を入れる。余ったひらひらの部分をうまく折りたたんで
中に入れるのだ。この余った生地を内側に折って伸ばして入れることによって、ピシッとした美しい枕に仕上がるのだ。
最初はなんともいびつな枕になってしまったが、これもなんとか美しくセッティングしたい、その思いだけで、
なんとか遠目からは、綺麗に整った枕に見えるところまで腕をあげたつもりだ。
これを全9室格闘するのである。
 入居者さんによって部屋の荷物も違うから、ベッドの上がスカスカでセッティングしやすい部屋もあれば
新聞、来ている洋服の脱ぎ散らかしたままの部屋。しかも最後は現状復帰(綺麗な状態での)にするので元々部屋の状態が
どうだったかは記憶しておく必要がある。
 家事をやってなかったせいで、当たり前のことでもできると感動するものなのだ。
今日俺、シーツ綺麗に敷くことができた!美しー!!
うまくセットができなかった時の悔しさや、綺麗にできた時の、俺、ホテルマンできるんじゃないか、と
ちょっと自分の成長が嬉しく、にんまりしてしまうのである。

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