見出し画像

リクルート

 外注中心でチームを組んだことで取り分もほとんど持っていかれるにも関わらず、何かあるとその責任だけが来てしまう。
そう思ってしまった僕は、まだチームとして、運営が固まる前に、主要ポジションを内製化しようと動いてしまう。
転職サイトリクルートでスカウト含め即戦力になる人員を募集し始めた。
リクルートに掲載する求人費用はとにかく高いが、そこで3名の即戦力と思える人員を候補として考えた。
だが、そのうちの1人は、中継当日大きく遅刻した。チャンネル運営の担当者の目にどう映っただろうか。
笑顔で談笑していても内心心穏やかではないはず。
 残りの2人のうち1人は、中継ディレクターとして白羽の矢を立てたのだが、やってくれたのは最初の数回だけで、
持病を持っていると言う理由で、今まで彼が持ってきたクライアントの仕事以外をしたがらなくなってしまった。
持病のことは聞いていたが、大丈夫、と言うことで入社してもらったのだが、万が一業務中倒れられでもしたら
責任が取れない。正社員でいながら、名義貸ししているような雰囲気になってしまった。
彼はフリーの制作で大手の広告代理店から仕事を請け負っていたのだが、口座の関係で、法人口座が必要だ、と言うのが
もしかしたら一番大きな理由だったのかもしれない。正社員ながらどこか、コンサルタント的なものの言い方をされるようになった。残るひとりは技術の専門で一生懸命頑張ってくれたが、うちの規模で支払える金額とお願いする内容で
バランスを取るのが難しくなった。チグハグな動きによって足元から運営がぐらついた。
 今まで僕の会社は新卒の子たちが中心で頑張ってコツコツ成長してきたのだが、この将棋中継の大きな成長で早く、
その成長の足場を固めたかったのだ。その焦り、外注さんへの感謝の欠如、こういった自分の未熟さが組織を悪い方へ
動かしてしまうのだ。中途組が以前の会社ではこうだった、と事務所で話すことで、ここしか知らなかった若手も、
「もしかしたら搾取されてるの?」と思うようになったり、だんだん社内で会社の悪口を言うことが増えてきたようなのだ。
もうどうしようもない。空中分解だ。将棋中継でも僕は次第に元気を無くしていってしまった。
元々やる気に満ちていたはずなのに、自責の考えがなく、他責の考えに陥ってしまい、周りから人が離れてしまい、
将棋中継の仕事も、気がつけば1年でなくなってしまった。藤井聡太29連勝などの中継までは非常に良かったのだが。
 大切なのは、まずは信用。クライアントさん、協力業者さん、全ての信用を得てから、少しずつ内製化などできる範囲で
進めていくべきところを、信用もされてない状態から、利益だけを確保したい、そういった考えに取り憑かれ
会社を大きく傾けてしまう原因を作ってしまった。
 最後は途中入社組の社員とも大きな声を上げて社内で怒鳴りあいをしてしまったり。
本当に疲れてしまった。
 売り上げ的にも億単位、これからますます成長して会社を大きくするんだ!と言う僕の気持ちは
無残にも打ち砕かれたのだ。
それもこれも、すべて自分の責任だ。
割れ鍋に綴じ蓋と言う言葉があるように、経営者の器以上の社員はいないのだ。
 彼らが悪いのではない、まとめ上げる力がない自分にその原因があるのだ。
新卒で入った子たちも、取引先だった大手ゲーム会社へ転職する子もいた。その時は荒んだ。未経験の中育てたのに、
力がついたらその取引先に行ったことを恨んだりもした。
しかし、すべては経営者として社員に見限られたのだ。そこにこそ問題があるわけだ。
 急速に売り上げが落ち込み、事務所の移転、社員の退職と自分から人がいなくなった。
事務所もシェアオフィス でひとりブースを借りるスタイルとなった。
 これから自分はどうなるんだろう。そんな漠然とした不安の中、ひとり勤務が始まった。
今までみたいにまとまった金額の仕事はなくなり、地元テレビ局の特集コーナーの取材ディレクターとして
仕事をさせていただく、と言うスタイルになった。
当然月の売り上げはガクンと落ち、月50万、よくて100万円程度の売り上げとなった。
暗い道のりが始まる。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?