凍結胚保存期限

不妊治療を行ってきたクリニックから2度めの凍結胚保存期限のお知らせが来た。私は9個凍結胚がある。その内3個は着床前診断で異常胚と診断され、残りは未診断だ。結局、今年も延長することにした。今年45歳になる私。長い間の不妊治療でかわいいかわいい女の子と男の子に恵まれている私。でも、もしもっと若ければさらに子どもが欲しかったと思う気持ちがある。赤ちゃんは本当にかわいい。お腹にいる時の幸せ。
でも2人目を産んだ時は命がけだったし、夫の全面的なサポートがなければ乗り越えられなかった。出産時43歳。胚移植時は42歳。その前に移植した時には化学流産、そしてその前には妊娠16週で稽留流産し、そうは手術を受けた。どちらも着床前診断を行い、正常胚だった。出産までたどり着いた息子はモザイク胚。それまでの過程があったから、モザイク胚を移植した後は安静に安静にすごした。1人目の時にはなかったつわりもあった。妊娠期間は幸せを味わう余裕はなく、最低限の仕事以外は寝たきりのような生活だった。お腹に手を当てては動いていないか心配になる。夜も不安でよく寝られなかった。出産が近づくにつれて血圧が高めとなった。産科の医師に、43歳はそういう年齢だと言われた。

出産を3週間後に控えた時期、日課となっていた血圧計測で130超え。日曜日の朝のことだった。何回測っても高いので念のために産院へ電話して、救急で診てもらうことになった。赤ちゃんの心拍は確認できたけど、静かすぎる時があり、寝ているだけかもしれないけど念のため入院することになった。病院のベットでは向かいの人が陣痛促進のためにバルーンを入れたようで、痛そうな声を出していた。私は1週間前におしるしがあり、お腹がじんわり痛む時があるけど、出産予定日までまだ3週間あるし、血圧が高いことしか心配していなかった。お腹の赤ちゃんが元気かとても心配で看護師さんに心拍を定期的に確認してもらう。そうこうしているうちに私もお腹の痛みが強くなってきた。看護師さんに訴えると前駆陣痛です、との答え。あまりに痛いので、本当に前駆陣痛ですか?と聞くと、また痛みは和らぐはずだ、と。トイレに行くとトイレットペーパーに血がついた。ビックリして看護師さんに訴えると、おしるしですね、と。赤ちゃんが本当に大丈夫か心配だし、お腹は痛いしで、ネットサーフィンで検索しながら朦朧として夜を過ごした。明け方、あまりにもお腹が痛いので、ナースコール。看護師さんが私の様子を見て、子宮口を一応確認してみましょうと、確認してもらっている途中、破水。持参していたパジャマが羊水でドロドロに。看護師さんが慌てて私をストレッチャーに乗せながら術着に着替えさせていたが、私はいきみ感でお腹がものすごい痛い。痛みが苦手だから無痛分娩を希望していたのに、看護師さんに早く麻酔を打ってくれと頼む。分娩室に着くと麻酔のためのラインを取ってくれたが、もう間に合わない、と。痛いといきんだ次の瞬間、分娩室についてすぐに、息子はホンギャアホンギャアと元気な産声を上げて誕生してくれた。私が散々お腹が痛いと訴えたのに前駆陣痛だと取り合ってくれなかった看護師さんたちは気にしてくれたのか、次産む時には気をつけなくてはですね、と。次って、もう私43歳なんですけど、、、

最近、上の娘が、赤ちゃんはお空の上からどのお母さんのお腹に来たいのか選んでくるんだよ、というようになった。お母さんのお腹の中にはもう1人くるよ、と。私が、でもお母さんはもうおばあちゃんだから難しいかなぁ、と言うと、お母さんはいつも歳だからというけど、それは良くないよ、と怒られた。それは確かにその通りなんだけれど、私もできることならもう1人か2人くらい赤ちゃんに会いたいけれど、でもそうすると自分の命が危ないかもしれないのだよなぁ。

そういうわけで、わずかな可能性を残すために凍結胚保存期間をまた更新することにした。夫はもうこれ以上は無理だよね、と冷静に言う。今でさえ確実に寿命が縮んでいるのに、と。本当にそう。これ以上は体力的に厳しいし、自分のことをやる時間もなくなってしまうし、凍結胚をお腹に戻したからといって無事に産まれる保証はなくてまた辛い思いをする可能性もある。頭では分かっているのだけれど、わずかな希望がなくなってしまうことが辛い。どれを選んでも何かしら痛みを覚えるのだろうな。

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