ウソツキ
ー7ー
待ち合わせは今いる東口の駅の路地裏付近。着いたら連絡くれるという。たどり着いて10分はまったかな…。
「暇ならどっかにいかない?」
「ごめんなさい、今待ち合わせしてるんで」
振り返えるとそこに居るのは井堀だった。
「なんだよ唯奈待ち合わせしてんの?紹介してよ彼氏でしょ?」
いたずらっぽく笑う井堀がいた。
「つけてたの?」
「お前ちょろすぎ。帰るぞ」
「いやだ、帰らない。井堀には関係ないじゃん」
その時わたしのスマートフォンが鳴った。
「出れば、彼氏なんだろ?」
わたしはスマートフォンを握りしめた。それを井堀は奪い取って出る。
「もしもし、この子未成年なんだけどさ、どういうつもりよ」
電話は切れたらしい。
「はい。残念。」
井堀はわたしにスマホを投げた。わたしはそれを落とさないようにキャッチした。
「お前彼女が出きったっいう俺への当てつけか?まともな出会いがあんだろうよ。馬鹿なのか?俺と会うときなんてそんな服着てきたことないくせにさ。危ない目にあったらどうすんだよ」
「井堀には関係ないじゃん。」
「お前ね、せっかく助けてやったのに何されるかわからないだろ、こんなことしてお金稼いでさ?」
「なんでわかるの?」
「この間見かけたんだよ駅でさ。最初唯奈じゃないかと思ったんだ。よく見たら唯奈だったからさ。あとつけたんだ。そしたら知らない男と会ってて、そのままの流れで、ホテルに行くってなんか変だろ、でも唯奈にも事情があるのかなって思って関わるのやめたんだ。けどどうしても気になってさ今日もつけたの。怪しかったから、声かけたんだよ。」
わたしは何も言わずにただ観念したように泣きじゃくっていた。
「何もなくことないだろ?今やめれば済むじゃんかせっかく俺にだってバレたわけだし。」
わたしは何も言わず泣きづつけてる。
「なんかこのままじゃ俺がなかしてるみたいだろ?」
わたしたちは二人でタクシーに乗ってわたしのアパートに向かった。
「初めてだな、唯奈が部屋に上げてくれたの。」
わたしは無言で冷蔵庫に冷えているペットボトル飲料を手渡す。
「待って一本しかないの、コップ出すからそのまま飲まないで。」
「わかってるよ。」
井堀にコップを差し出すと
「唯奈の分のコップは?」
と聞いてきた。
「私はいい。さっき飲んだばかりだから」
「そんなに怒るなよ。さて、話するか」
「何を話すの?」
「これからの唯奈のこと。まず、家や職場がわかっていたら、唯奈にも危険は迫ってるからな」
「家は知らない。けれど職場は知ってる。」
「なんで職場を知ってるんだ?」
「職場であって男の人紹介してくれるって。」
「職場の同僚なのか?」
わたしは首を横に振る
「そうじゃなくて、清掃に入った企業で声かけられて男紹介するって。」
大きくかいつまんで説明した。自分が化粧を教えてもらったり服を買い与えてもらったことは言えなかった。
「何人ぐらいと関係したんだ?」
「5人ぐらい。」
「ぐらいって覚えてないのか?」
「そんなに怒られても」
わたしは思わず大きな声を出した。
「悪かったよ。びっくりしたんだよ、あんな唯奈見たことなかったし。」
その日の夜泣きじゃくりながら眠るわたしの横でずっと井堀はそばにいてくれた。何もせずにただずっとそばにいてくれた。
次の日、井堀に起こされたわたしは寝ぼけ眼で井堀の顔を見て、昨日までを呼びさますように天井をみた。
「仕事は?」
「風邪で休むって連絡する」
「その方がいい。」
「俺はとりあえず、バイトに行くからさ。何かあったらすぐに連絡しろよ。こういうことに心配しすぎはないと思うぞ」
わたしは無言で井堀を見送った。
あれから三か月。引っ越して仕事も新しく変わり、スマホの番号も変えた。清掃の仕事を辞めるとき、ありのままの全てを話す事にした。その時、柿山先生が紹介してくれた支援団体の人が付き添ってくれて角が立たないように説明してくれた。
社長は理解を示してくれた。
「まだ若いものね、断りきれない所もあったのかな?でも笹塚さんがここで仕事してくれてから、若い人が面接に来てくれたり、応募も多いのよ。一人の夜学生なんてお金を稼いでフランス留学するんですって。」
社長が言った。
「ここで働けたこと、勉強になりました。悪い事ばかりじゃなかったです。」
わたしは社長との話が済むと忘れ物の確認がしたいとロッカールームへと向かった。卯木さんのロッカーを見つけると当たり前だけれど、鍵がかかってる。綺麗にクリーニングして整えた、喪服を返さないといけない。わたしは紙袋をロッカーの前に置いた。そしてメモ用紙とペンがおいてある場所にいって、お世話にりました。という走り書きのメモを書いておいてきた。
そしてお茶を準備するスペースにこちらにもお世話になりましたというメッセージカードを添えて、お菓子の詰め合わせをおいてきた。
仕事はレストランに就職できた。以前の清掃業のよりは給料は安いけれど、それなりのまた新しいスタートがきれている。支援団体のおかげで住むところも、仕事も決まったようなもの。
井堀との仲も相変わらずだ。
「その支援団体って怪しくないのか?」
井堀が言った
「怪しいかな?」と答えた。
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終わり
この物語はフィクションです。
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