私のわたしのその先の |超短編小説
九月になった。私は九月が嫌いだ。一年の中で最も嫌い。なぜなら九月は夏のふりをするから。過ぎ去ってしまった夏に未練たらしくしがみついているからだ。
始業式が終わって、ぐったりしながら帰り道を歩いていた。
「こんにちは」突然話しかけられた。声のする方を見ると誰もいない。
「こんにちは」また声がした。声がする方を向くもやはり誰もいない。
気のせいかと思って歩き出すと、また声がするので気のせいではないようだった。
「誰ですか」
「わたしは私です」あまりの突拍子のなさに聞き間違いかと