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【けあらし】なみある?塩田気象予報士の波や天気のお話。

年が明けて昇る太陽は少しずつ東寄りへ、沈む太陽は西寄りへ移り、徐々に日が伸びてきています。
歴の上では小寒。今が一年で一番寒さが厳しいころですが、明るい時間が長くなっていくと、サーフィンできる時間も長くなりますし、少しワクワクしますよね。
春が待ち遠しいものです。
 
さて、元日の早朝、千葉北部のうちの近くの海には「けあらし」が出現。
なんとも幻想的な2023年の幕開けとなりました。


そこで、新年一つ目のお話は「けあらし」にしてみます。
そこで、新年一つ目のお話は「けあらし」にしてみます。
「けあらし」とは北日本を中心に、西日本、東日本でも見られる気象現象で、晩秋から冬にかけての寒い朝、海から発生する水蒸気が、日の出前後から霧状になって立ち上る霧のこと。
朝陽が昇ると、その光を浴びて輝く霧の姿が美しい光景です。
 
寒い冬も日の出とともに早朝から入っている方は時々遭遇することがあるのではないでしょうか?
 
では、「けあらし」のメカニズムをお話しします。
 
冬の晴れた日の昼間に日射を受けて温まった内陸の地面は、夜になると放射冷却によって熱を外へ放出します。その熱は、太陽の光が届かない夜間に急速に冷やされます。冷たい空気というのは重いため、地面付近に溜まるという性質を持っています。
放射冷却よって冷やされた内陸の空気の温度は、夜明け前ごろに最も低くなります。
海水温は一日を通して温度が変わりにくいため、日の出前後は1日のうちでも陸地との温度差が最も大きくなります。
この冷やされた空気が海上にゆっくり流れだすことで、霧が発生し、これが「けあらし」と呼ばれています。
 現れやすい条件としては、
・冬型の気圧配置が少し緩んで強く冷え込んでいること。
・海水温と気温の差が大きいこと。北日本では温度差15℃以上の日に現れることが多いようですが、 9~15℃ぐらいの温度差でも現れるようです。
・風速は2~4メートルと比較的弱めに吹いていること。(冷たい空気が沿岸に流れ出しやすい風速)
といったものです。
気温が最も低くなる日の出前後に発生し、気温が上がる10時頃までには消えていき、その後はクリアな青空が広がります。


また、「けあらし」は霧の中の一種ですが、正式な気象用語ではなく、気象学上では「蒸気霧」に当てはまります。(【霧】のお話。)
お風呂の湯船から立つ湯気と同じ原理です。
冬の寒い日などお風呂場の気温が低い時ほどもうもうと立ち込める、あの湯気と同じです。
「けあらし」は海岸から1キロぐらいまでに渡って発生します。
語源は北海道の留萌地方で使われていた方言で、漢字で「毛嵐」や「毛嵐」とも表現されています。
日中は穏やかな晴天となるのが予想されることになります。
◎2023010106天気図

気象庁HPより


 
元日は、まさに冬型の気圧配置が緩んでいく日でした。
日の出(7時前)ごろの気温は2℃前後、水温は15℃程度、風は弱いオフショアで、まさに「けあらし」が発生する気象条件がそろっていました。
 
元日の朝、太陽が徐々に高くなりながら霧は次第に広がり、雲海のような美しい景色が広がり、気が付いた時には消えていました。


 
大寒を控え、まだまだ厳しい寒さが続きますが、冬型が緩んだ日の早朝など、けあらしの中でサーフィンが出来る日があるかもしれませんね。
 
気象予報士
塩田久実