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冬読書のススメ


この記事は、
かふぇおれ Advent Calendar 2023
の10日目の記事です。


はじめに

関東は日中と夜で寒暖差の激しい今日この頃。
みなさまいかがお過ごしでしょうか。

師走とも呼ばれ何かと忙しい12月。
筑波大学生のみなさまにおかれましては、試験にアルバイトにサークル・部活動に全代会の活動に、と、やはり多忙を極めているのではないかなと思います。(4年生は卒論も佳境ですね!お互い頑張りましょう……)

珈琲・俺でも、しばらく大きなイベントがないとはいえ、精力的に活動していますね。
もちろん楽しんで活動してくれているのであれば、元OREとしてこんなに嬉しいことはありません。無理のない範囲で、コーヒーを、珈琲・俺を、ぜひとも楽しんでください。

さて、そんな気づいたら駆け抜けてしまいそうな12月ですが、少し足を止めてのんびりする日も欲しくはないですか?
せっかく温かいコーヒーを飲むのであれば、ほっと一息、ついでに1ページをちらり。そうやってリフレッシュすることも大事なのではないかなと思います。

と、いうわけで。

この記事では、個人的に冬に読むおすすめの本をご紹介していこうかと思います。
独断と偏見による趣味全開の選択です。リラックスのための読書なんて自分が好きな本を読めばいいのですが、「たまには違うものも読みたい」「本探しに行き詰まっている」といった方にとって、この記事が本との出会いの一助になれば幸いです。

No.1 東野圭吾『ラプラスの魔女』

ある地方の温泉地で硫化水素中毒による死亡事故が発生した。地球化学の研究者・青江が警察の依頼で事故現場に赴くと若い女の姿があった。彼女はひとりの青年の行方を追っているようだった。2ヶ月後、遠く離れた別の温泉地でも同じような中毒事故が起こる。ふたりの被害者に共通点はあるのか。調査のため青江が現地を訪れると、またも例の彼女がそこにいた。困惑する青江の前で、彼女は次々と不思議な"力"を発揮し始める。

角川文庫『ラプラスの魔女』裏表紙より

以前櫻井翔さん主演で映画化もされた、東野圭吾の名作。
東野圭吾は、日本である程度暮らせば絶対聞くと言っていいほど名の知れた作家ですよね。
ただのミステリではない、人の気持ちが籠った、時におぞましく、時に暖かなストーリーを紡ぎあげる、日本が誇る作家だと思っております。

みなさまは「ラプラスの悪魔」をご存知でしょうか?
18世紀フランスの数学者ピエール=シモン・ラプラスが提唱した「ある時点において作用している全ての力学的・物理的な状態を完全に把握・解析する能力を持ち、未来を含む宇宙の全運動までも確定的に知りうる」という超人間的知性のことです。

青江が行く先々の事故現場で出会った女性は、その悪魔と呼ばれる知性を持ち合わせているのです。そして、青江が調査する殺人事故を起こしたのは、彼女と同じくラプラスの悪魔となった青年である、と。
事故を起こしたのは本当にその青年なのか。女性はなぜ遠方に自分の足で赴き、その青年を必死になって探すのか。
そこには悪魔ではない、たしかに人間の姿があります。

私はもちろん、もちろん櫻井翔のことが大好きですが、映画化が決まる以前からこのお話が好きでした。
実際にはきっと起こし得ないであろう"殺人事故"、取り巻く人々の動向が怪しく錯綜していく様は、やはりさすがの東野圭吾クオリティだと感じます。
そして何より、ただ憎しみだけではない。人間には愛と優しさもあるのだと感じさせてくれます。

『ラプラスの魔女』シリーズとして、前日譚である『魔力の胎動』、新刊の『魔女と過ごした七日間』もあります。

じっくりとその謎に飛び込むべく1ページ目をめくるもよし、誰かとコーヒー片手に映画を観るもよし。きっと、多くの人が楽しめる作品だと思います。


No.2 サン=テグジュペリ『星の王子さま』

砂漠に飛行機で不時着した「僕」が出会った男の子。それは、小さな小さな自分の星を後にして、いくつもの星をめぐってから七番目の星・地球にたどり着いた王子さまだった……。

新潮文庫『星の王子さま』裏表紙より

もはや私が語るべくもない。
サン=テグジュペリの言わずと知れた名作、『星の王子さま』です。
私は去年のブックサンタで『星の王子さま』の絵本を選んだほど、この物語が大好きです。

大人たちはわかってくれない、ゾウを飲み込んだ大蛇ボアの絵。「いちばんたいせつなことは、目に見えない」という最も有名なセリフ。それを王子さまに教えたキツネ。王子さまがたくさんの時間を費やした気位の高いバラの花。きっとどれもがこの世界にはありふれていて、でもそれに気づかない人が増えています。

決して、難解な物語ではありません。しかし、単純すぎて、にわかにはわかりづらい。大人になってたくさんのことを知っていくうちに、見えなくなってしまったものが、みなさまにもあるのではないでしょうか。
さして多くないページ数です。新潮文庫版には挿絵もあります。きっと、本から少し離れてしまった方にも読みやすいはず。
この本を手にとり、久しぶりの本の感触と、忘れかけていたみなさまのたいせつなものを、思い出してみてはいかがでしょうか。

(本当に私が語ることなどなかった。語るだけ野暮というものです。)


No.3 夏川草介『本を守ろうとする猫の話』

冬のある日のこと。祖父の死をきっかけに、すっかり学校へ行かなくなってしまった高校一年生の夏木林太郎は、ヒトの言葉を喋る猫と出会う。曰く「本を助け出すために力を貸してほしい」と。猫に導かれた先にいたのは、本を「閉じ込める者」、「切りきざむ者」、「売りさばく者」。ただの本好きの少年でしかない林太郎は、本を救うことができるのか。

『神様のカルテ』で有名な夏川草介が描く、珍しく医療系ではない物語。
付き合いの長い人からは「またそれかよ」と言われてしまいそうなほど人に紹介しているこの本は、私のバイブルと言っても過言ではない、まさに愛読書です。

主人公の林太郎は、本当にただの本好き。学校の成績も運動も、交友関係も決して取り立てることなどないような、平凡な少年です。
そんな少年への唐突な依頼「本を助け出すために力を貸してほしい」。猫が喋ることもさることながら、たいへん荒唐無稽な依頼です。当然にわかに受け入れられるはずもありませんが、あれよあれよと猫に言いくるめられ、本を閉じ込め、切りきざみ、うりさばく人たちがいる「迷宮」に連れてこられてしまいます。

林太郎と猫のかけ合いはテンポよく、かつ端々にかの名作からの引用が散りばめられており、まさに本好きの会話と言ったもの。
そして何より、少し堅い文体ながらも優しさの溢れる描写はまさに夏川草介。『草枕』が好きな読書家の面と、優しさ溢れるその人柄がよく窺える作品だと感じます。

何を隠そう、私は夏川草介の大ファンです。
高校三年生の春、医療関係のセミナーでお話を聞いてから、その日のうちに『本を守ろうとする猫の話』を購入し、一気に読み切ってぼろぼろと涙を流したほど。
またこの本は、何度も読み返して味わえば味わうほど感動が深まるのです。

現代版『銀河鉄道の夜』とも謳われるこの作品、ぜひ、読んでみてください。


おわりに

気づけば時刻は日付が変わって12月11日0:15。
私の担当は12月10日だったはずなのに。おかしな話もあるものですね。

さて、ここまで紹介してきましたが、私も読書家と呼べるほどの読書量はなく、気に入った本を何度も読み返して安らいだり、積読を増やして満足しているような、そんな人間です。
別に偉い人が選んだわけでもない、そんな本ですが、面白いのは真実。極論を言ってしまえば、この世に面白くない物語など存在しないのです。
どんな物語を面白いと感じるかは人それぞれ。だから、みなさまもぜひ、自分が好きだと思う本を読み返してみてください。たまに、他人がおすすめする本を手にしてみるのも良いでしょう。そして、よかったら私にどんな本を読んだか教えてください。私の積読が増えていきます。(読め)

それではみなさま、寒さも徐々に厳しくなってきますので、お身体に気をつけて、残りの2023年も元気に過ごしてまいりましょう!
おやすみなさい。

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