資産インフレーション

 物価のインフレやデフレと同様に、資産価格にもインフレーション(価格上昇)やデフレーション(価格低下)が存在する。ここでは、資産インフレーションがなぜ起こるのか、幾つかある理由を考えてみよう。

 経済が成長すると、企業利益と個人所得が増加する。人々がより資産を購入できるようになるので、資産価格が上昇することがある。この点は物価インフレと根本的に同じだ。

 低金利政策は、投資資金の調達コストを下げるので、不動産や株式などへの投資が増加する一因にもなる。結果として資産価格が上昇することが多い。また、中央銀行による量的緩和策は市場に大量の通貨を供給し、流動性を高める。この流動性の一部が資産市場に流れ込むことで、資産価格を押し上げる。こちらも物価と変わらない。

 特定の資産、例えば不動産市場において、供給が需要に追いつかない場合、価格が上昇する。これは、都市化、人口増加、建設資材の高騰、建設の遅れ、投機的投資など、様々な要因によって引き起こされる可能性がある。

 物価インフレが予想されると、投資家は通貨価値の低下を避けるため、物価上昇率を上回るリターンを求めて資金を株式や不動産などへと移動する。このことは資産価格のさらなる上昇を引き起こし、資産インフレを促進する要因にもなるんだ。

 こうしてみると、資産価格と物価の間には相関関係が存在するように見えるけれど、その関係性は複雑だ。

 例えば、中央銀行が金融緩和を行い、大量の通貨を市場に供給すると、物価インフレが直ちには起こらなくても、金融市場への資金流入により資産価格が先行して上昇することがある。

 逆に物価インフレに対応して政府が金利を引き上げると、経済成長の鈍化を懸念した投資家の収益見通しが悪化するので、物価の上昇よりも先に資産価格が低下することがあるんだ。

 最後に、投資家が生産的な用途への投資よりも、投機的な取引に資金を集中させると、その資金による経済全体への貢献が難しくなる。政府や中央銀行が通貨供給量を増やしても、この資金が資産市場に流れ込むことで資産インフレを引き起こし、経済成長には繋がらない可能性がある。

 スマートフォンが普及して、誰でも簡単に株式などの資産を売買できるようになった今、こうした要因も資産価格が上昇する一因かもしれない。

 資産インフレーションによって、既に資産を多く持つ富裕層の資産価値がさらに増加し、さらに物価インフレを伴う場合、富の効果によって彼らは購買力を維持することができるが、金融資産を持たない人々との間の経済的格差は拡大する。こうした状況は、社会全体の経済的不平等を深め、経済の停滞を引き起こすかもしれないね。

 結論として、物価のインフレと資産のインフレは相互に影響を及ぼしあうものの、その関係は一様ではなく複雑だ。また、中央銀行の政策、経済成長の見通し、人口動態、投資家動向、その他多くの要因から影響を受けるため、資産価格と物価の動向を理解するには、これらの要因を総合的に考慮する必要があるんだ。

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