[第3話] 百合ナース! 〜かわいいあの子〜 [サロン連載]
懐中電灯で床を照らしながら、一つひとつの病室の前で耳を澄ませる。
なかから苦しげな声が聞こえてこないか、 おかしないびきが聞こえてこないかと確かめる。
夜勤の巡回は、すごく気をつかう。
眠りの浅い患者さんも多いし、なるべく足音を立てないようにそっと歩く。
そこまで気にしない同僚も多いけど、 私はなんとなく、セオリー通りにゆっくりと歩いている。
キュ……、キュ……、キュン……
なるべく足音のしないナースシューズを選んでいるのに、誰もいない薄暗い廊下に響く音は、ひと足ごとにかわいい子犬が鳴いてるみたいだ。
「ふふっ……」
ふと、みなみちゃんのことを思い出す。
こないだ、ロビーでお腹が痛くなっちゃったみなみちゃんを、病棟まで連れて帰った。
俯いて、いまにもキュ〜ンと鳴きだしそうな、しょぼくれた様子がかわいかった。
『ほらね? 薄着で長い間、外にいるからよ?』
とくとくとお説教する私にふてくされたりせず、彼女は素直にぺこりと頭をさげたんだ。
『ごめんなさい』
うふふ、かーわいっ!
ああいうの、ワンコ系女子っていうのかな。
私よりずっと背が高いのに、髪をわしゃわしゃ〜ってして、かまってあげたくなる。
もちろん、そんなことはしないけどさっ。
「あれ?」
私は、ふと足を止めた。
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