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ヴァンテアン号の母港:竹芝ふ頭

 今回は執筆中の話題が思いの外手間取りましたので、別の話題をご用意しました。今回はヴァンテアン号の運航に欠かせない付帯施設について紹介します。

竹芝客船ターミナル

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築地大橋から見た竹芝客船ターミナル

 東海汽船最大の客船ターミナルである竹芝客船ターミナルは、東海汽船が所有しているものではなく、あくまで東京都港湾局から委託された東京港埠頭株式会社(港湾施設)と株式会社東京テレポートセンター(ニューピア竹芝)が管理する施設です。小型船のターミナルも含めて竹芝ふ頭を構成しています。サウスタワーにある東海汽船本社も、東京テレポートセンターの物件に入居しているということになります。そのため、ボーディングブリッジや岸壁給水施設、バースに至るまで東京都の設備を毎回利用する形になっています。

桟橋

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 船が着岸できる施設、係船岸の造りには矢板式、重力式、桟橋式などがありますが、竹芝は桟橋を採用しています。一見地面のように見えるコンクリート部分の下にも水が入り込んでいて、支柱で支えられています。

バース

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 北からPバース、Oバース、Nバースの3バースが整備されています。ヴァンテアン号が就航して10年くらいはまだ純客船も多くいたことから最もバース繰りが過密で、1000トン級~4000トン級の船が最大4隻同時に停泊していました。(新旧さるびあ丸交代時には、稼働していなかった船が羽田沖まで一旦回航しバースを開けていました。)ヴァンテアンはOバース南側に着岸しており、Nバースはさるびあ丸(初代)、かとれあ丸2、かめりあ丸などが使用していました。純客船が引退し、貨客船がメインとなってからはみるみるトン数が増え、ついに橘丸では5000トン級となったため、ヴァンテアン号はNバースへと拠点を移すことになりました。


ボラード

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竹芝桟橋のボラード

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前後3箇所のボラードにホーサーをつなぐヴァンテアン号

 係船柱とも呼ばれる、船を桟橋に繋ぎ止める柱です。ホーサー(係船索)と呼ばれるロープをここに通して船を固定します。

防舷材

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シーサイドデッキUGENから見るCP600H

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桟橋から見るCP600H

 防舷材は、船が桟橋に接岸する際にクッションの役割を果たすものです。竹芝桟橋ではSHIBATA製の受衝板付防舷材CP600Hを採用しています。材質はゴムが用いられており、船体を汚さずメンテナンスフリー、である点などが謳われている防舷材です。

MBB(Marine Boarding Bridges)

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竹芝桟橋のMBB

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ヴァンテアン号に接続されるMBB

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MBBの銘板

 ヴァンテアン号は国内で唯一ボーディングブリッジを使用できるレストラン船です。竹芝に東京本社を置く川崎重工業製のMBB(Marine Boarding Bridges)で、平成3(1991)年12月に供用が開始されました。このMBBは広視界型MBBと呼ばれ、景観の調和を取りつつ上下船の際の景色も楽しめるように設計された日本初のものです。窓口からスロープやエスカレーターもしくはエレベーターでボーディングブリッジまでアクセスできるので、バリアフリーの観点からも優れた設備と言えます。MBBはBデッキ後方の舷門に接続され、船内もここがエントランスとなっています。船舶は停泊中も揺れるものなので、MBBならではの自動追従機能もついています。それでもジェット船入港時は波が立ち大きく揺れるので、安全のため一旦上下船が中止されます。
 東京都港湾局によると、MBBの稼働にかかる使用料は1台24時間毎に3万円、ヴァンテアン号は1日3便6回の使用なので一回あたり5000円がかかります。さるびあ丸のように1度しか着発がない場合は1回辺り15000円かかることになるので、そういった面ではたくさん使うヴァンテアン号のほうがコスパはよさそうです。ちなみに航空機用のPBB(Passenger Boarding Bridges)の場合、成田空港の料金で一般機は出発と到着でそれぞれ6500円、A380の場合9000円からスポットにより12000円なので、料金形態こそ違いますが、船と飛行機でそこまで相場に違いはないようです。

タラップ

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タラップ

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タラップで上下船を行った際の様子

 MBB整備前の初期はタラップ車、MBB整備後もタラップ乗船が行われていた時期があり、その際雨天時は傘の貸し出しも行っていました。タラップ車は航空機の沖止めに使われるようなもので、MBBと同じ場所に接続されていたようです。タラップはゲストの上下船が無くともスタッフの上下船のため、着岸営業を除いた停泊中は必ず付けられます。
 普段使用するA-3乗船口のMBBが故障した際には、貨客船のいないランチ~ディナー乗船まではA-2のMBBを、各バースが貨客船で埋まるディナー着岸時のみタラップ下船という運用が行われました。桟橋はターレやフォークリフトの往来があり危険なため、タラップ下船の時はフェンスやロープで動線を確保しています。
 MBBはBデッキに接続されますが、タラップはCデッキのロゴショップ脇と船員区画に接続されます。ゲストの上下船は後方のロゴショップ脇の舷門でのみ行います。ちなみにMBB使用の場合ロゴショップ脇の舷門は、ゲストが入る前に閉められるほか、トワイライト~ディナーの間は閉めたままになります。タラップは潮位の影響をモロに受けるため、低い時は楽に乗船できますが高い時は急坂になるので少し苦労をします。

水回りの設備

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給水の様子

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機関室の浄水施設

 ヴァンテアン号はレストラン船ということで、料理や飲み水、トイレ、風呂などに使うための水も予め積んでおく必要があります。水は桟橋の給水設備を通じて停泊中に補給され、Eデッキの機関室内にある浄水設備で浄水処理をなされた後にゲストやスタッフに届けられます。またこれはあまり触れられない話ですが、し尿に関しては回収装置が竹芝桟橋に無いため、都環境確保条例で許されている中央防波堤内側埋め立て地より外側での海洋投棄によって処理を行っています。2010年の改正以前はお台場海浜公園付近のみ規制対象となっていました。

東海汽船131周年

 今日、東海汽船は創業131周年を迎えました。五輪で華々しくインバウンド客を迎え、いつものように繁忙期を迎え、ヴァンテアン号もその波に乗り、式典もヴァンテアン号とともに華々しく行われるはずでしたが、一転130年目は東海汽船の思い描いた通りにはなりませんでした。
 しかし、新造船を2隻迎え、利用客も復調に向かっています。50年ぶりに社史も編纂されました。ヴァンテアン号も新天地での活躍が決まり、光の見える131年目の益々の発展を祈念して、今回は終わりたいと思います。




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