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2つ目の名前 ──Roya Darya──

 11月11日という素晴らしい1日、みなさまいかがお過ごしでしょうか。さて、7月下旬より長いこと動きのなかった「Princess号」ですが、登録変更という急展開を迎えています。写真などの用意は難しいですが、現状を整理してみます。


ドバイを通り過ぎたPrincess

 今年3月の舟艇技報No.145にはヴァンテアン建造に携わった技術者による技術資料『船舶設計開発物語 その1 日本初のレストラン専用船』が掲載され、終航後の詳細な資料としては現状最新のものになっています。ここでは伝聞調ながら「次の嫁ぎ先をお聞きした所、ドバイに行くことになるということであった。用途はよくわからないが、プライベートでの活用のようである。」(1.東京湾レストラン船の開発までの経緯 の項より引用)と、次の活躍について触れられていました。これはあちこちで囁かれるドバイ行きの噂と合致するもので、現に船はその対岸には辿り着いています。今回のように新天地が海外の場合は日本に情報が届きづらく、さるびあ丸のように船の墓場行きを心配する噂から一転クルーズ船として就航というパターンもあるので、真の新天地がイランだとしてもさして驚くほどのことではありません。
 中東情勢を鑑みるにイランとUAEでは立場・民族も異なり、アメリカのテロ支援国家指定を受けているなどの穏やかでない背景、近年の外国籍タンカーの拿捕や、民間機撃墜といった事件に対しては若干気を揉むところもあります。ただ、イランの文化は有名なペルシア絨毯を初め眼を見張るものがありますので、そうした文化に溶け込みつつ平穏な活躍を期待したいですね。


 では、新しいヴァンテアン号の情報を見てみましょう。

船名:Roya Darya(現地表記:رویا دریا?)
 新たな船名です。正確かどうかは非常に怪しいのですが、英語→ペルシア語→英語による再翻訳では「Sea Dream 海の夢」という結果となりました。なかなかどうしてロマンティックな船名のように思えます。

信号符字:EPWD9
 ヴァンテアン号は現在イランに籍を置く船という扱いになっています。コールサインもイランに割り当てられたEP~EQの中からEPが冠されたものが与えられています。

IMO船舶識別番号:8901717
 この番号は前回も紹介したとおり、廃船まで不動の番号となります。そのためモンゴル、更にイランに船籍が移っても変更はありません。

MMSI番号:422508900
 この番号は頭三桁が国籍を表しているため、イランに割り当てられている422から始まる番号が与えられています。ヴァンテアン号にとっては3つ目の番号ということになります。


 今回はイラン船籍、船名もイランの現地言語ペルシア語だと考えても通りそうなものなので、モンゴル船籍のような便宜置籍ではないと思われます。よってイランを拠点とした航路への就航、もしくはイランで何かしらのアクションが今後あるとみることができます。今後も現地の情報を拾えないか試みたいところですが、何か情報を御存知の方がいらっしゃいましたら是非ご一報ください。


制作近況

 なかなかnoteが更新できず申し訳ございません。現在C99頒布を目標に原稿の執筆を進めるのが手一杯な状況でございます。今回のように新情報が入った際には、自分の中の整理も含めて投稿してまいります。


 本誌では那覇港に着岸する姿をはじめとした、ヴァンテアンの写真・情報を募集しています。特にIMOや新船名への塗替えが行われたあとの写真が本誌には必要です。また、イラン現地のニュース記事などを見かけられた方は是非こちらにご一報いただければ幸いです。ご協力頂いた方々に対しまして、PDF形式での献本、印刷版の割引頒布をさせていただきます。情報提供、写真の提供を頂ける方は、Twitterもしくはメール[nokuchi201@gmail.com]にてご連絡をお待ちしております。

ありがたくサポートをいただいた場合、Adobeソフトやフォントの維持、印刷費、ヴァンテアンに関連した資料や施設に対する取材費に充てさせていただきます。