【運命哲学#5】信じる力を持つ
ひとつのことを信じること、そして何があっても信じ続けることは時として簡単なことではありませんが、信じる力、信念は周囲も巻き込んで動かす巨大なパワーを秘めています。
願望という言葉もありますが、これは「やりたいと思う気持ち」であり、そこにはイエスとノーがあります。
やりたいと思っても「本当にできるだろうか?」という疑問の入る余地があるわけです。
一方信念にはイエスしかありません。
そこにあるのはやり遂げるという気持ちだけです。
信念を持ったら、今の自分の力でどうやって実現するかをイメージします。
それを繰り返すことで信念は育ち、今の現実とのギャップが埋まったとき、信念は実現します。
ということは、信念は実現可能なものでなければなりません。
到底実現できないようなものは信念ではなく単なる空想です。
さらに、信念は自分の利益を求めるものであってはいけません。
それが最終的に自分に利益をもたらすことであったとしても、まずは利他、周囲を利することで自分にその利益が返ってくるものでなければいけないのです。
周囲のため、社会のために不変であり、目的のために一度や二度の失敗では諦めないことが信念です。
奈良と大阪を結ぶ近鉄線の途中に生駒トンネルがあります。
現在は新しいトンネルが使われていますが、大正3年(1914年)に開通した旧生駒トンネルは全長3388メートルと、日本最長の標準軌複線トンネルでした。
当時も大阪と奈良を結ぶ鉄道はあったのですが、遅い蒸気機関車の上に生駒山を大きく迂回していたため、移動に大変な時間がかかるものでした。
そこで現在の近畿日本鉄道の前身、大阪電気軌道(大軌)が大阪と奈良の二つの都市を最短距離で結ぶことは関西経済のために必要不可欠と考え、生駒山を東西に貫く形で生駒トンネルを計画し、明治四四年(1911年)に着工したのです。
請け負った大林組は東京でも中央停車場(現在の東京駅)も受託しており、東西で大事業を同時期に行っていたことになります。
最新式の掘削機をアメリカから取り寄せ、生駒山を貫く当時としては画期的な工事が始まりましたが、軟弱な地盤や地下水に悩まされ、次々にトラブルが発生するとんでもない難工事になってしまいました。
また、電力不足も深刻で、酷い時には一ヶ月でたった30センチしか進まないこともあったそうです。
さらには作業員152人が生き埋めとなり19人が命を落とした落盤事故もあり、前年に設立したばかりの若い会社で経済的な基盤が弱かった大軌はたちまち資金繰りに行き詰まりました。
社員の給料の支払いにも困り、会社には債権者が詰めかけるような状態になってにっちもさっちもいかなくなった末、給料日には担当者が各駅の運賃をかき集めて回り、真夜中にようやく支払いをしたり、それでも足りず生駒山にある生駒山寳山寺にお賽銭を借りたこともあったそうです。
苦境にあったのは大軌だけではありません。
請け負った大林組もまた工事費の大半が手形で支払われ、利益回収の見込みが立たなかったことから資金難に陥り、倒産の危機に直面することになりました。
それでも大軌には自社の苦境を明かさず「必ずトンネルは通してみせるから心配するな」と言い続けたのだそうです。
そして着工からほぼ3年、ついに生駒トンネルは開通しました。
大きな事故やトラブルに見舞われそれぞれ会社が傾きかけているにもかかわらず、この二つの会社が決して諦めずにトンネルの開通にこぎつけた原動力こそが信念でしょう。
自身の利益だけでなく、関西経済のため、人々のため、大阪と奈良を最短距離で結ばなければいけないという思いが、文字通り「岩をも通す」パワーとなりました。
結果的に大軌は日本最大の私鉄会社の一つ近鉄となり、大林組もまた日本を代表する総合建設会社であり続けています。
もう一つ、3/11の東日本大震災の時、震災翌日に救援物資を満載したトラックが東京を出発し、被災地に向かいました。
マスジド(モスク)に集うイスラム教の人々です。
彼らは救援物資を積んだトラックで被災地に向かい、そこで必要なものを聞き取り調査して東京と被災地をピストン輸送しました。
やがて彼らの活動は全国のモスクや近所の商店街の人々にも伝わり、街ぐるみの救援活動が続きました。
彼らがこれほど迅速かつ継続的な活動ができたのは、「家族でも隣人でも他人でも、困っている人は助けなければいけない」というコーランの教えを信じていたからです。
宗教に関係なく困っている人がいたら助けるという彼らの活動はどんどん広がり、また彼らに対して偏見を持つ人もいた近所の住民との距離も救援活動を通じて縮まったことで彼ら自身が生活しやすくなったのです。
一燈照隅 萬燈照国
2023年8月1日に最初の本を出版するまでは実に長い道のりでした。
人生に絶望し、ホームレス生活を送る中で安岡正篤の本と出会い、運命とは何か、精神とは何かを自分なりに考え、そして実践してきました。
失敗と挫折の連続でしたが、易者として、そしてコーチングやコンサルティングを通して微力ながらも今苦しいと感じている人の助けにほんの少しでもなれているのかな、と感じています。
ぜひこのノウハウをもっと世間の人々に知ってほしいと本を書くことを考えたもののなかなか自分の思うような形にならず、そうこうしている間に20年が経っていました。
今、こうして本を世の中に届けることができたのはアートディレクターのmasoさん、編集長の井戸はるさん、私を応援してくれた多くの皆さん、そしてどんなときでも私を信じて協力をしてくれた家族のおかげです。
どれだけ感謝してもしきれません。
こうして自分自身の出版社、南北書房を立ち上げ、最初の本を出版するに至ったことは、私にとっての大きな一歩です。
今回、皆様の幸福に少しでも貢献するための最初の一冊として『開運』を選びました。
開運には真の開運と偽の開運があります。
昔からよくある手ですが、姓名鑑定で「あなたの名前は大変よろしくない。このままでは開運しないから、この印鑑を買いなさい」という印鑑商法は聞いたことがあるのではないでしょうか。
私のところにもある方がそれで相談にいらっしゃったことがあります。
50歳を少し過ぎたタクシーの運転手さんでしたが「名前が悪いから開運のために必要だ」と言われ、100万円の印鑑をローンで買わされたのだそうです。
その方に「あなたの望みは何ですか?」と尋ねたところ、「女性とお付き合いをしたことがないので、女性と手をつないでみたい」とのことでした。
この話についてどう思いましたか?
私は100万円で印鑑を買うのなら、20万円でジムやエステに通ったり美容室に行ったりおしゃれな服を買うほうがよっぽど女性からの好感度はアップすると思ったのですが、あなたもそう思いませんでしたか?
運勢は自分の運命が表にあらわれたものであり、それは日付や名前や方角などに左右されるものでもなければ、ましてやお金で買ったモノでどうこうできるものであるはずがありません。
まず私は、皆さんに「運命」というものを理解していただきたいのです。
運命は古くからある易の思想であり、それをモノを売りつける術に使ってなどほしくないというのが私の正直な気持ちです。
本来運命は私たちの精神、こころと同一のものです。
こころを清らかな方向に改めていくことにより、真に開運し、人生はより良いものへと作り変えることができます。
これがあなたにとってその第一歩、きっかけの一冊になればこれほど私にとって嬉しいことはありません。
国の乱れは人心の衰退から始まるといいます。
栄華を誇った多くの文明もそうして荒廃した人間の心が招いた国難から滅びていきました。今、日本は国難の時代に差し掛かっているといえるのではないでしょうか。
「一燈照隅 萬燈照国(いっとうしょうぐう ばんとうしょうこう)」という最澄の言葉があります。
やがて来るであろう国難に対して、たったひとりの力では太刀打ちできないかもしれませんが、その一つの灯りが広がっていき、千万の灯りになったとき、大きな変化が訪れます。
私自身の力は小さな一燈に過ぎないかもしれませんが、それがいつの日か多くの人々を救う大きな力となることを願ってやみません。
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