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「[リメイク]笑う、わらわぅ」感想。

「タオルケットをもう一度」シリーズの全作品感想を書くシリーズ。

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[リメイク]笑う、わらわぅ

世界中がにくーーーい!

今回は「笑う、わらわぅ」という名作のリメイク作品。

リメイク前の笑う、わらわぅの感想はすでに投稿してます。詳しくは下記の記事をご覧ください。

さて、オリジナルとリメイクを箇条書きでまとめてみます。

・リメイクに際してグラフィックがかなり作り直されている。メニュー画面とか、キャラチップとか…。特にマップチップなんかは完全に別物レベル。っていうか、オリジナル版では存在しなかったマップすらある。

・オシャレで邪魔だった美麗フレームも引き続き実装されてるのだが、オリジナルの時代と違い解像度が高くなっているためか、フレームの画面占有率が低くなっており、全然邪魔じゃなくなっていた。なぜかちょっと寂しい。

・システムはほぼ同じ。遊びが経験値になるシステムやお着替えシステムは加筆されてそのまま実装という感じ。嬉しい。十年来の作者様の努力の蓄積なのだろうが、明らかに各所の実装の技術力が上がっており、地味に感動した。また、ゲーム開始時だけ「お嬢様ポイント」なる謎の数値が言い渡されるが、それ以降一切出てこなくて笑う。

・ストーリーの大まかな流れは同じ。細部はかなり変更が入っている。道中の会話がかなり減らされていて、アクの強い下ネタ・暴力的な発言・メタネタが特に削られている印象を受けた。リメイクをプレイするに当たりオリジナルも直近でプレイしたのだが、むしろ「オリジナルってこんなに会話尖ってたっけ!?」と驚くぐらいだった。美麗・耽美な世界観に誤魔化されてたのか、あるいは前作のかいけつ猫足乙女!に脳が侵されていてたのか、当時は全く気が付かなかった。

・キャラクターは何人か追加されている。ほぼモブの追加・変更だが、「懐石想い」の追加だけは超重量級の変更。彼女の存在でめちゃくちゃ文章が変わっている。というか、結婚イベントが書き換わっている。EDも彼女用の説明が追加されてる。また、猫足昆布がパープルレインに変更されている。

・選択肢イベントが何個もある。会話コンプ厨なので狂う。

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さてさて、総評としては、かなりいいリメイクでした。笑う、わらわぅが好きなプレイヤーはぜひリメイクもプレイしてみるといいと思います。まだプレイしてない人はいきなりリメイクから始めるのオススメです。

笑う、わらわぅの「リメイク」という行為は、かなり皮肉だな…とプレイ中感じました。わらわぅ自身が、何度も何度も何度も何度も世界を壊しては作り直し、作り直しては壊すことを繰り返しているわけですから…。もしや、このリメイクってオリジナルと別の回の話?なくはないですね。

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このゲームはかなり明快なネタバラシをする構造が美しく、その1つのピースだけで世界のすべてが違って見えるという最高のゲームである…とオリジナル版の感想で述べました。なので前の感想記事ではあえて考察を載せてませんでした。ただ、細部の内容は依然として難しいのは間違いないので、野暮ではありますが、筆者の稚拙な考察のメモ書きを置いておきます。もし1周目でここにたどり着いている人がいたら、ページを閉じて2周目を始めることをおすすめします。

わらわぅという幼い少女がいました。彼女はある日自転車の交通事故によって、全身不随になってしまいます。その日から、彼女は動くことも、話すこともできなくなってしまいました。彼女は自分の部屋のベッドの上で、朝から晩までを過ごします。彼女は自分でご飯も食べられません。彼女は自分でトイレに行くこともできません。彼女は自分の命を断つこともできません。「ぷっち」という名のママに世話をしてもらう以外に生きるすべを持ちません。
ママはわらわぅのためにお茶を入れて、それから物語を聞かせます。内容はちょっとずつ違いますが、大体いつも同じ。わらわぅ、ぷっち、部屋にあるお人形たちをキャラクターとした、お嬢様と勇者(あるいは案内役)が悪いやつをやっつけて塔に帰って来る冒険活劇です。わらわぅはこの何度も何度も聞いた物語を「白の世界」と認識しています。
砂漠とは何にもなくて、これから世界が生まれる場所。お茶会から始まるというのはぷっちがお話をする前にお茶を入れることが元ネタです。舞踏会とかお姫様とかはママがそういう話を作ってるからです。わらわぅがお嬢様なのもママがそういう言ってるからでしょう。実際にはもちろんわらわぅが大金持ちのお嬢様なことはありません。
さて、わらわぅはずっと暇で退屈なので、空想しかやることがありません。そして、彼女自身も新しく世界を作り始めます。これを「笑う世界」と言います。なぜ、笑う世界と言うのか?「みんなが笑っている世界だから」とママが表現したのが元ネタですが、もはや形骸化しています。笑う世界の住人は誰も笑ってません。今では「狂ったように笑い飛ばしてしまいたいけど狂えない」ことの皮肉表現として「笑う世界」という呼称を使っているようです。
わらわぅの空想のネタは極めて限られています。曖昧な昔の記憶、ママの作ったお話、目の届く範囲にあるお人形・水槽の魚・電信柱に止まった鳥・空・聞こえてくる音・たまに行く病院…
わらわぅの空想も最初のころは無邪気で可愛いものだったのですが、わらわぅの成長、あるいは長く続く絶望的な日々によってどんどん狂気的な空想が混ざり始めます。これを作中では錆と表現します。この錆はどんどん膨れ上がっていきます。もはや狂気に頼る以外にどうすればいいのか?
こうして彼女は、何度も何度も空想を始めては、その世界を自分で壊します。それはストーリーの完結かもしれませんし、単に途中で飽きたからかもしれません。白の世界が笑う世界に侵食されていることも、単にわらわぅが空想を白の世界に加えているに過ぎません。そして、この世界の終了は大した意味を持ちません。今回の話も、今まで幾度となく繰り返した話も、全部わらわぅの暇つぶしでしかないから。どんどんどんどん狂気を増して、なおも狂うことができないわらわぅが、自分の空想をただ終わらせているだけです。
そうして、何度も何度も壊した空想世界が積み重なって地層のようになります。上の世界のほうが設定が新しくて強いですが、それもまた新しい地層に埋もれていくでしょう。深く深くにある昔の地層はもはや思い出すことも難しいです。そして、「おるちゅま」も「蛹乙女」も「空の少女」も全部過去の(あるいは現在の)わらわぅです。モブのセリフも全部わらわぅが考えていることそのまんまです。っていうか、この世界全部わらわぅが考えてることでしかないんですけどね…。
作中最後にこの世界の永劫の終わりを案内役たちが悲しむシーンがありましたが、別に終わりません。また、ママが新しい話を作って、また同じことを繰り返すだけです。続くのです。そしてわらわぅは、あごちゅ先生の言葉を小さな希望として生きていきます。いつか蛹から羽化できますように…と。

大まかな流れ

書いといてアレですがやっぱこれ説明しなくてもいいですね。笑うわらわぅはこういうの細かく説明しなくていいところが美しいので…。この文章は自分用備忘録とします。

別作品とのつながり

タオルケットをもう一度3

月の乙女

わらわぅは月の子であり、タオルケットMV3で月の女神として登場します。つまり蛹から羽化できます。やったー!

このことを前提に置くと、笑う世界に月の乙女ぱりぱりうめが出てきたのだけちょっと引っかかります。なぜわらわぅが「ぱりぱりうめ」を「月の乙女」として空想してるのか?偶然とすることもできますが、作為を感じますね。もしかすると本当に月の女神ぱりぱりうめがわらわぅの精神世界に干渉してたのかも?確定的なことは何も言えないレベルですが…

ヨルモルキミリ

道化猫
パープルレイン
案内役

どう考えても、笑うわらわぅ側がヨルモルキミリの元ネタなんですが、リメイクをやったら印象が変わりました。道化猫が出てくるんですよ。オリジナル版だと猫足昆布だったポジションが道化猫になってるんですよね。パープルレインと名乗っていますが、はるか昔に道化猫と呼ばれていたらしいです。

どうします?これがヨルモルキミリに合流するとしたら。恐ろしすぎるだろ… こうなってくると本格的に笑う世界をヨルモルキミリ空間、あるいは不思議物体空間として説明する向きになってしまいます。ここから先は…沼だぞ!これは単なる可能性の提示です。リメイクに際して道化猫に差し替えることで筆者の妄想が暴走したという話でしたとさ。


次回→
「理不尽キャンプをもう一度」を待ちます


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