試写で観た映画があんまり響かなかったとき
マスコミ試写に呼ばれるようになってから、随分経つ。最初は限られた配給さんだけだったが、今では試写状来ない日がないほど案内を頂けるようになってありがたい限り。
しかし、日本公開される映画がすべてオレの好みに合うかというとそうでもない。比較的懐が深い(と思っている)オレでも打率は5割いくかどうかというところ。
一般試写と違って、マスコミ試写は「批評や宣伝」のために特別に観させていただいているので、安易な批判はさけたいところ。
とはいえ、つまらないモノはつまらないので、そこをどうやって批評や宣伝していくかが、オレらマスコミ試写に呼ばれた人々の仕事になる。
いくらつまらなくても、ひとつやふたつ、面白いところはあるので、そこを褒めていくのが基本になる。しかし、それでは「面白い」と思って劇場に足を運んだ人を裏切るようで申し訳ない。
なので、念のためダメなところ書くようにしている。
『隣人X』を観た。
えーっと、原作のモチーフだけを生かして、恋愛SF映画に仕立てた作品になっている。上野樹里7年ぶりの主演作とのことで、彼女の真摯な芝居が楽しめる。相手役の林遣都は、この世代——池松 壮亮とか——と同じような振る舞いで若干面白みにかける。うだつの上がらない彼にハッパをかけるのは川瀬陽太の兄貴である。このあたりでバランスを取っているのであろう。
Xは人間をコピーしているだけの存在であり、Xだからといって何が変わるわけでもない。ただマスコミサイドは「Xは本当に危険性はないのか?」と騒ぎ立て、Xを確定してつるし上げようとするわけだ。
大方予想が付いているとおり、林遣都演じる笹はとある事情で上野樹里を深く傷つけてしまうのだが、要は恋愛映画の基本フォーマットである
正直Xの存在に意味合いを感じない。オチで化される「Xとはなんぞ?」もSF設定としてはなかなかのザルで、恋愛映画のちょっとした調味料程度のものになってしまっている。
実に惜しい。ダイバーシティをちゃんと絡めれば社会派になったろうし、Xの存在をもっと利用できればしっかりとした『スターマン』(1984年)のようなSFファンタジーになっていただろう。
上野樹里の隣のお姉さん、林遣都の今時の煮え嫌い男という構図の恋愛映画としては、巧いこと仕上がっているモノの、設定材料がいまいち生かし切れていない。惜しい作品だった。
とまぁ、こんな感じである。惜しいんだよ、これ。12月1日公開です。
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