見出し画像

『OMORI』紹介と感想 - 眠りにつく傷(ネタバレなし)


 「あなたの鬱はどこから?」を解明することで開く扉の先が照らされていてもいなくても、そこからが始まり (そこまでで終わり)なんだよね。


 未回収の要素は山ほどあるものの幾つかのエンディングまで辿り着いたので、取り急ぎ「みんな〜〜!これやっぱり凄いゲームだったよ〜聞いて〜!そしてあわよくばプレイして〜〜!」という気持ちで、ご紹介と感想を兼ねる記事です。

※本作はネタバレが致命的になるためストーリーの細部には触れませんが、オモバレおよびエモバレをする可能性はあるので、万全の状態で浴びたい方はSteamに直行してください。



 2020年12月25日、ツクール製のゲーム『OMORI』がついに発売された。

"ついに"というのは、私が実に6年の間待望していたタイトルであり、このたび満を辞してローンチされたため。

当時、日本のゲームメディアでも紹介されていたトレーラーに心を掴まれた人も多いのではないかと思う。

 日本語歌詞を交えた不思議なテーマ曲、『MOTHER』『ゆめにっき』『OFF』を思わせるゲーム画面。ちなみに"そういうゲーム"として並べられがちな『UNDERTALE』はその翌年にリリースされたが、この作品とも大事な繋がりがある。その点については後述。

製品版に近い2020年のトレーラーはこっち。

 なお本作は2021年1月現在、日本語には対応していない。現在ローカライズに向けて鋭意進行中だそう。
 英語が得意ではない私はそれでもいち早く作品に触れたかったのでDeepLを携えて挑んだが、全体的に難しい単語やスラングは控えめで読みやすく、重要な場面では都度翻訳に頼るという方法でしっかりと没入できた。DeepLくんありがとう。


どんなゲームなの

『OMORI』は、『RPGツクール』で開発された、奇妙で夢のような精神世界が映し出されたタイトルです。
どちらも同じように優しく、どちらも同じように秘密を隠している2つの世界を行き来し、初めて(既に)会う(会った)人々や、初めて(既に)戦う(戦った)敵との遭遇や、記憶の旅、隠された(知りたくなかった)真実を巡る旅をすることになります。そしていつか、どちらかの世界を選ぶときがやってきます。
どちらの世界がよりリアルか。それはあなたが決めること。

 以上が公式の説明文で、ふわっとした印象を受けるし不可解な部分も多い。が、実際にプレイしていくとこのあらすじの的確さにじわじわ気づいていくことになる。主観の集合体としての現実。

ゲームとしての進め方やイベントの雰囲気は先に挙げた『MOTHER』シリーズに近い。


戦闘システム

スクリーンショット 2021-01-07 19.57.43 1

 この作品には、シンボルエンカウント式で発生する敵との戦闘や所謂ボス戦が発生する。レベル上げもするし、装備を選んでパラメーターを上げたりもする。骨子は王道RPG。

ただ、"感情"が非常に重要になる。

スクリーンショット 2021-01-07 21.12.42


HAPPY」「SAD」「ANGRY」が三すくみの関係になっているのだ。
HAPPY状態のメンバーがANGRY状態の敵に攻撃するとより多くのダメージを与えられるし、その逆もある。
SADがHAPPYに勝ったりANGRYがSADをボコボコにしたりするの、この作品らしいというか......人間ってそうだから......。

 同じ感情は二段階(OMORIは三段階)まで重ね掛けでき、
例えばANGRY→ENRAGED→FURIOUSという風にパワーアップしていくのだが、それに応じて表情も変化する。ENRAGED状態のAUBREYちゃん、本人には申し訳ないけどかわいすぎる……。

 そしてこれまた大きな特徴として戦闘不能になった際の表現があるのだが、
初見時は「え!!......これは……?」と固まってしまったので是非体験してほしい。私はオタク特有の深読みでもって未だに解釈に悩んでいる。(追記 : 英語圏のスラングが関係しているらしいです)
復活のさせ方もキュートだけどそれで済ませていいのこれ?


メインキャラクター

スクリーンショット 2021-01-07 20.05.57

OMORI

 主人公で、引きこもり。
RPGの伝統として"主人公の声は聞こえない(何故ならプレイヤー自身なので)が、ゲーム内の人物とはどうやら会話しているらしい"という様式があるが、彼は実際にも寡黙そう。そんな彼が戦闘中に感情を動かされた際の表情は見応えあり。
あと\ツクテーン/もする。

スクリーンショット 2021-01-07 20.06.26

AUBREY

 幼馴染の女の子。KELと顔を合わせると喧嘩ばかりしている。
バットでの攻撃を得意としていたりと勝気な印象だが……?

スクリーンショット 2021-01-07 20.06.47

 KEL

 バスケットボールが得意な男の子。兄のHEROを慕っており、
OMORIをぐいぐい引っ張ってくれる存在でもある。相棒のHECTOR(石)をポケットで飼っている。

スクリーンショット 2021-01-07 20.07.08

 HERO

 パーティの最年長で、物腰柔らかな大学生。
料理の腕を活かしてヒーラーの役割をしてくれる。
異性、延いては万物にモテる才能を持っており、そのぶん厄介に巻き込まれがち。



 戦闘パーティーとして行動するこの4人、それぞれの特技を活かしてフィールド上の障害を克服していく要素などもあり楽しい。
 公式トレーラーに映っていたメインキャラクターの中には非常に重要な存在があと2人居るのだが、ここでは4人の紹介に留めておく。
そして、上で引用したあらすじに"2つの世界"とあったようにこれらは"片方の世界"での話である。


密度がすごい

 エンディングまでのプレイ時間、私の場合は30時間ほど。
翻訳しながら&ストーリー外で多少の寄り道はしていたものの、価格に対してかなりのボリュームである。今年の三が日は専らゲーム内でウサギを怒らせたりサメをバットで殴ったり、心の救いを求めてアイドルマスターシャイニーカラーズを起動したりして過ごした。
とにかくイベントひとつひとつが分厚いのだ。6年間(以上)の集大成ぜ〜〜んぶ見て!!!という気迫を感じる。本当にありがとうございます。

 そしてキャラクターがみんな可愛い。アジア圏受けする絵柄やデザインなのはトレーラーでも分かるが、特定層の性癖にがっつり刺さるだろうなあという敵キャラにも出会える。日本語ローカライズ後のTLがもう見える。
 それぞれに振られた戦闘BGMも素晴らしく、キュートで優しい道中BGMとの緩急が利いている。OMOCATさんのYouTubeチャンネルでサウンドトラックが全公開されているので(良いんですか...)聴けます。



メインシナリオの合間に小さなサブイベントが度々起こり、愛おしい依頼をしてくる子たちの話をちまちま聞きつつ奔走していたのだが、

スクリーンショット 2021-01-07 20.37.41

それでもSteam実績の現状はこれ。ヤバ〜



一周終えて

 お互いの傷を持ち寄って赦し合う、優しい物語 なのだと思った。途中までは。それで終わりにしてくれなかったし、そこに誠意を感じてしまった。ずうっと見て見ぬ振りをしていた(させられていた)とある疑問が解消されないまま進行していたからだ。傷を見せ合うことは必ずしも癒しに向かう行為ではない。

 当たり前だが自分の苦しみは自分にしか分からない。大切なものを失ったとしても、大きな過ちを犯したとしてもそこから人生を立て直していける場合もあるし、その日の天気が良かったことをとどめに何もかもを手放してしまう瞬間もある。

 また、故障した心を寛解に向かわせるには自分以外の誰かに打ち明けるプロセスが一つの足掛かりとなるが、それは同時に相手に責任を負わせる事でもあるし、場合によっては大きく傷つけるかもしれない。

 自分がこの作品から受け取ったものの正体をまだ掴めていない。ただ、私は私の、貴方は貴方の地獄を見つめてたまにお手入れして、時には刺し違えるかもしれないという前提で生きていく事で得られる均衡もあるよね、と思った。貴方とは貴方のことです。夢で逢いましょう。

 踏み込んだ話題を避けていると永遠に上澄みを掬うような内容しか話せないな。そのうち取りこぼした要素を辿りつつネタバレ込みの感想も出力したいです。日本語で遊べるようになって感想や考察記事が増えたら嬉しい。頼む〜〜。


心待ちにしていた作品が予想を遥かに超えた内容で、感謝に堪えません。出会えて良かった。本当にありがとうございます。

Everything is going to be okay.












スタッフロールのとある箇所、



スクリーンショット 2021-01-08 1.43.24

声出た (知らなかった...)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?