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ガリバー "法螺吹き" 男爵の冒険LⅩⅩ

「コウメ姫の操るヤコは身軽に跳びはねながら、複雑に交差する枝の間を渡り、林冠へと向かっていきました。わたくしは必死でデクを操り、姫の後を追いました。一本角のヤコは時々立ち止まり、わたくしと付き添いのシダー村長を待ってくれました。数分後、私たちは揃って林冠から空に向けて顔を出したのでした」

「雲一つない青空の下、緑の大海原が広がっておりました。後ろにはひときわ大きな王都の木々が、こんもりと島のように盛り上がっておりました。遠くに、同じような島が散らばっているのが見えました。それぞれが町や村になっていて、その下にはたくさんの人々が暮らしているのでした」

「遥か南に壁のようなものが、青く霞んで見えました。それはいかなるデクも寄せ付けない険しい山脈で、“森の国”の果てなのだ、と出発前にコウメ姫が教えてくれたのでした。わたくしはしばらく、林冠の枝葉を風が波打たせるのを見ておりました」(続)

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