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ガリバー "法螺吹き" 男爵の冒険LⅫ

「わたくしは“ヤコ”と呼ばれたデクに近づいてみました。同じ四つ脚のシバテンとは異なり、脚は蟹のようで、しっかりしたものでありました。兵士が乗っていたヤコは長い一本角を持っておりましたが、目の前には角無しが一体、二本角が二体おりました。『ヤコの角は、何通りか種類があるんですよ。角無しの方が操作しやすいので、初めてデクに乗るのでしたらお勧めです』とコウメ姫が言ったので、わたくしは助言に従うことにしました」

「ヤコは口を大きく開いておりました。デクの頭の中はうろ穴になっており、そこに乗り込んで動かすのであります。口の中を見ますと、背もたれとひじ掛けのついた木の椅子のようなものが、中央に置かれておりました」

「タデ氏も一緒になって、ヤコの頭の中を見ておりました。『こんなに広いなら、私も一緒に乗れそうだね。きっと、鎧を着て乗るためにできてるんだな』。そう言ってわたくしに、紐のついた丸い蜻蛉玉のようなものを握らせました。手のひらを開いて見ますと、それは目玉ほどの大きさはあろうかという、艶やかな琥珀の球でした」(続)

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