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ガリバー "法螺吹き" 男爵の冒険LⅩⅢ

「わたくしが琥珀球を陽にかざして見ておりますと、タデ氏が『それがデクの起動鍵だよ。村や町で共有している小型デクなら、どれだって動かすことができる。さて、鍵を身につけてデクの操縦席に座るんだ。首にかけても、懐に入れていてもいい』と言うので、わたくしは紐を首にかけて、ヤコの下顎部分に乗りました。操縦席はわたくしの体に合わぬほど大きかったのですが、腰かけたとたんにぐねり、と椅子全体が動きました。わたくしの体に合うように、椅子が形を変えていったのでありました」

「操縦席は革張りのソファのように、すっぽりとわたくしの体を包みました。タデ先生は座席が動きを止めると、ひょいと後ろに乗り込んできました。『肘掛けに、穴の空いた球がついているだろう』頭の後ろから、こちらを覗きこんだタデ氏の声が聞こえてきました。左右の肘掛けは、出先を置く部分が半球状に盛り上がり、肘を置く側に手を差し込めるほどの穴が開いておりました。『左右の穴に、手を入れるんだ』とタデ先生は命じました」

「穴に手を差し入れますと中は泥のような、ゼラチン質のようなもので満たされておりました。さわり心地の気持ち悪さにわたくしが固まっておりますと、『穴の中にある球を、優しく握るんだ』と次の指示が来ました」

「左右の半球の中に更に手を伸ばしますと、それぞれに丸くて固い感触がありました。手のひらを内側の球に当て、そっと指を掛けるように掴みますと、デクが体を起こし、頭を水平に持ち上げました。『球をしっかり握る』。指示通りにしますとヤコの上顎が降りてきて、わたくしの目の前で顎が噛み合い、口が閉じられました」(続)

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