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ガリバー "法螺吹き" 男爵の冒険LⅨ

「その日からわたくしは研究室に通うようになりました。研究者たちはわたくしに他の知識はないかと尋ねましたので、わたくしは白星号のことをずいぶん詳しく思い出して伝えますと、その次の日には彼らは小さな模型を作っていて、水に浮かべて見せたのでありました

「研究者たちは白星号の再現に飽き足らず、更に他の船についてわたくしに尋ねましたので、わたくしは小型のヨットやカヌー、ボート、あるいはより大きなガレー船などを話しました。彼らはわたくしの話を聞くたびに模型を作ってきて、研究室で水上の動きを検証したのでありました。そして一通りの検証を済ませると、船の改良に取り掛かりました。『"嵐の帯"を航海するには、これまでの船では脆すぎる』というのが、彼らの考えでありました」

「模型を作っては大きな水盆に浮かべ、検証しては模型を改良し、といった作業が連日続きました。研究に熱が入ると、前日作った模型が翌日には手直しされて、工房の机の上に置かれているのでありました。こうして一か月、二か月経つと、船の形が少しずつ変わっていきました。帆は消え、輪郭は丸みを帯び、生き物に近づいていきました。研究者たちは、船のデクを生み出そうとしていたのでありました」(続)

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