見出し画像

ガリバー "法螺吹き" 男爵の冒険LⅩⅩ

「わたくしが固まっているのを見て、タデ氏が一緒に乗ってくれることになりました。ヤコに乗って木に跳びつき、四本の脚を使って這い登っていきますと、梢に近づくにつれて枝は細くなり、足元がぐらつくようになってきました。『デクはしっかり枝を掴んでる。落ち着いてゆっくり、動かしたらいい』と後ろに乗ったタデ先生が言いました」

「とうとう木の天辺に登り詰めますと、風に吹かれて足場ごとヤコが大きく揺れました。『揺れが収まるのを待って、ハンドルを勢いよく前に押し出しなさい』。呼吸を整え、指示通りに動かしますと、デクはぴょんと跳ねあがり、枝から離れました。体がふわりと浮き上がるように感じておりますと、すぐさま次の指示が飛んできました。『右手を拳骨にして、ハンドルの真ん中を押し込みなさい』。ハンドルを握りこぶしで押すと、“キンキウ”、“ハナツ”という赤い文字が、目の前に浮かび上がりました」

「『右手はそのまま押し続けなさい。命綱を出したから、すぐ木に引っ掛かるだろう』。先生が言い終えないうちに、目の前の文字が緑色の“コテイ”に変わりました。右手にかける力をゆっくり抜いていきますと、命綱の放出が終わり、ヤコが空中に吊られてぶら下がりました。左手を握りこぶしにして、同じようにハンドルに押し込みますと、デクが命綱を巻き上げ、するすると上っていくのでありました。枝の上に戻ると、わたくしはようやく、大きく息を吐き出しました」(続)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?