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ガリバー "法螺吹き" 男爵の冒険LⅩ

「三か月経たないうちに、新型デクの形が決まっていきました。船を模した胴体からはマストではなく幹が伸びて、太枝が張り出しておりました。船底には3対6本の脚が生え、後ろの2対は足先がオールのような、ひれ状をしていました。『帆で風を受けて進むよりも、自ら動いて水をかきわけて進んだ方が確実だし、風であおられた時にも安定する』と研究者たちは得意げに話しておりました。前脚は長く、これが物をつかんで船に運び入れたり、航行中は甲板の上に折りたたまれることで、船や船員を嵐から守る屋根の役割を果たすようになっているのでした」

「新しいデクの図面が上がり、模型が出来上がったときには、"根の王"も久しぶりに研究室にやって来ました。研究者たちが“カワクマ”と名付けたデクの図面に手を置き、王は満足そうにうなずきました。『研究者諸君、よくやってくれた。ガリバー卿にも協力を感謝する。この短期間で製造に移ることができるのは、君たちの熱意と努力の賜物だと言えるだろう』。そう言って王は、わたくしの肩に大きな手を置きました。『ガリバー卿にとってはこれからが大変になると思うが、頑張ってほしい。デクが完成するまで数ヶ月はかかる。シダー村長やタデ殿は優秀なデク乗りだし、我が都にも優れた乗り手はいる。きっとそれまでにデクの扱い方を身につけることができるだろう』と言ったのです。わたくしは自らデクを動かすことになるとは思っておりませんでしたが、帝国に還るためにも仕方ないと思い、『はい、微力を尽くします』と答えたのでありました」(続)

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