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ガリバー "法螺吹き" 男爵の冒険LⅩⅩⅢ

「翌朝の食事を済ませますと、わたくしと村長は最低限の着替えをまとめて袋に入れました。スキュウレは王府の人に面倒を見てもらおうかとも考えたのですが、別れを嫌がるようにわたくしの頭に登り、しがみついて離れなかったので、一緒に連れていくことに決めました」

「わたくしが袋を背負い、スキュウレを肩に乗せているのを見て、コウメ姫はくすりと笑いましたが、すぐに真面目な表情に戻りました。『ヤコは格納庫に準備しています。さあ行きましょう』」

「先日タデ先生を見送ったばかりの格納庫に到着しますと、三機のヤコが並び、鎧を身につけた女性数人が見送りに来ておりました。彼女達は、コウメ姫の同僚とのことでした。『班長、お気をつけて』『姫ちゃん、頑張ってね』などと口々に声をかけられ、姫君はほほを染めながら笑顔を見せておりました。王府警備隊の若い女性たちは、シダー村長にも興味津々の様子でありました。『コウメさんから聞いてますよ、とてもお強いんですって?』『班長ったら、最近シダーさんのことばっかり話してるんですよ。おかげですっかり男たちが妬いちゃって。あんまりうるさかったから、置いてきちゃいました』『今度王都に戻られたら、私もシダーさんに模擬戦を申し込みたいなあ、なんて』『やめときなよ。これから、姫ちゃんと一緒にツバキ博士に会いに行くんでしょう?』『あっ、そうかあ。もう入り込む余地はないわね』」

「『今から出発するので、そろそろ離れてくださるかしら』。シダー氏を囲んで黄色い声をあげる女性たちに、真っ赤になったコウメ姫が叫ぶと、彼女たちはにこにこしながら格納庫内のあちらこちらへと散らばっていきました」(続)

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