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ガリバー "法螺吹き" 男爵の冒険LⅩⅣ

「目の前が真っ暗になったかと思うとすぐに明るくなり、木々や空が見えました。デクの頭の内側に、外の景色が映し出されているのでありました。以前、タデ氏が操るイヅナに同乗したことがあったため、わたくしは落ち着いて景色を見回すことができました」

「『起動に成功したな。大いに結構。では、ヤコを歩かせてみよう。どんなデクでも、基本は変わらない。両手の球ーーハンドルを前に動かすと前に歩く。大きく動かすと走り出すから、そっと“ずらす”程度の気持ちで動かしてみるんだ』。先生の言う通りにすると、ヤコは小さく上下に揺れながら、四本の脚を波打たせるように動かして前進しました」

「わたくしはデクを動かしたことですっかり舞い上がっておりましたが、すぐ目の前は崖になり、深い穴が口を開けておりました。わたくしが『落ちる』などと叫んでおりますと、タデ先生は『ハンドルを元の位置に戻しなさい』と動じない様子で言いました。実際に、ヤコはぴたりと動きを止めたのでありました」(続)

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