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ガリバー "法螺吹き" 男爵の冒険L

「彼らには"死んでいる木"を使った道具は頼りなく面白みがないと感じられるようで、船の板材よりも、釘やかすがいの類いに関心があるようでした。王からそれら金具の説明を求められ、地中にある鉱石ーーある種の石だと説明しましたーーを強い火で熱し、溶かしたものを型にはめて冷やし固めるのだと説明すると、人びとは待っていたとばかりに驚きの声をあげ、互いに何やら話しあっておりました。陶器のかけらも、こねた粘土を焼き、更にうわぐすりを塗って再び焼いた物だ、と説明しますと、やはり人びとはざわついておりました」

「"森の国"の人びとは絹の艦隊旗よりも、毛織りの毛布を面白がりました。彼らにとっては虫の吐いた糸よりも、獣の毛を集めて織り上げた布の方が珍しく感じられるようでした。『羊とは、どのような獣なのか』と王が尋ね、わたくしが受け取った紙に絵を描いて渡しますと、王とその周りの人びとが穴が開くまで見ておりました。その後、わたくしの下手な似絵は列席している人びとの手の間を渡っていき、見た人が声をあげ、隣の人とひそひそと言い合っておりましたので、わたくしは顔から火が出るような心持ちでありました」

「帆の切れ端、艫綱、割れた木箱など、並べられた道具をひとつずつ説明していき、とうとう防水布の包みが残りました。王は『これは重かったのだが、先に卿に見せた木箱の中に入っておったためか、浜辺に打ち上げられておったのだ。私たちも、まだ中は見ておらぬ』と説明し、中身を検めるようにわたくしに指示しました」(続)

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