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ガリバー "法螺吹き" 男爵の冒険LⅢ

「人々の関心は、金属と木材が組み合わされた筒に注がれておりました。わたくしが『これはわたくしたちの世界で使われる武器です』と説明しますと、広間は大きくざわめきました。銃を少しでも近くで見ようとにじり寄る人、黙って王とわたくしの次の行動を待っている人、遠巻きで見ながら互いに何かを早口で話している人々など、反応はさまざまでしたが、皆銃から目を離すことが難しいようでした」

「王が手を叩いて皆の視線を集めると、『銃といったか、卿はその武器を使うことはできるのか』とわたくしに問いました。わたくしは弾薬袋の中身を確認し、鉛玉と炸薬がきれいに分けられて内袋に入っているのをたしかめました。可能だと伝えると、実際に使うように、と指示が出されました。皆が静かに、わたくしと手の中の銃を見ておりました。『丈夫な厚手の板を用意していただきたいのです』と伝えると、王が兵士たちに指示を出し、デクの殻が広間の端に置かれました」

「わたくしは火打石の着火機構を確かめた後、安全装置をかけました。実地で銃を撃つのは、士官学校の演習以来でした。教官の説明を思い出しながら、炸薬入れから取り出した黒色火薬のペレットを銃口に入れました。さらに鉛玉を込めてから、レバーを引いて装填を済ませました。そして壁に立てかけられたデクの殻に正対して、膝立ちの体勢で銃を構えました。安全装置を外し、照準でデクの殻の中央をとらえると、一呼吸おいてから引き金をひきました。乾いた炸裂音が、静まり返った広間に響きました」

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