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ガリバー "法螺吹き" 男爵の冒険ⅩⅩⅩⅩⅨ

「わたくしは顔に貼り付いていたスキュウレを自室に戻すと、役人に連れられて部屋を出ました。朝と同じ道を歩いて広間に到着すると、王座の前にちぎれたボートの船首、引き裂かれた帝国海軍の紋章旗、そして防水布の包みなど、見慣れたものが並べられておりました」

「案内の役人が部屋の中央に立って私たちの到着を告げると、根の王がよく通る声で『近くに来なさい』と言いましたので、わたくしは近衛の兵士に案内され、調査艦隊の形見の品々の前に立ちました」

「『シダー村長の報告を受けてから、我が王府の調査隊も海岸線を調査しておったのだ。調査隊が回収してきたものをここに並べておる。昼前までの聞き取りにより、卿が正しく外つ国から参られたのだと理解できた。午後はまず、これらが何物であるのかを教授願いたい』と王が言いました」

「わたくしが頭を下げて承ると、王は品物をひとつずつ手でさしていきました。わたくしがボートや艦の残骸から船の全体像を説明すると、『ほう……』『ふうん…」などの声が、居あわせた家臣団の人びとから漏れ出てきました」(続)

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