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ガリバー "法螺吹き" 男爵の冒険LⅩⅩⅣ

「翌朝は早くから準備をはじめ、日の出とともに出発しました。『昨日と同じ注意ですが、私の後にしっかりついて動くようにしてくださいね』とコウメ姫が念押しした後、三機のヤコが出発しました。姫君のヤコは森の中層を、張り出して絡み合った太い枝を縫うようにして進んでいきました」

「森の中はざわつき、生き物たちの気配がそこかしこにあるように感じました。ただしそれは、わたくしが野生のデクを警戒して神経質になっていたからか、あるいはヤコの運転に慣れ、以前よりも周囲が見えるようになったせいかもしれません」

「曲がりくねった枝の上を歩いている時、不意に近くの葉がガサガサと動くことがありました。わたくしが驚いてヤコを停めますと、気がついたコウメ姫のヤコも戻ってきてくれました。葉のついた枝が大きく揺れたかと思うと、目の前にデクの頭が顔を出しました」(続)

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