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周央サンゴちゃんの誕生日嬉しいね

今年も周央サンゴさんの誕生日が来ましたね。
志摩スペイン村、ひいては近鉄での活躍ですっかり大きな存在になってしまった彼女ですが変わらずに元気に活動してくれることが私の喜びです。

今年は去年の大暴れ3D配信とは打って変わってしっとりとした幻覚歌枠を開催してくれました。


こいつはすごい配信でした。



家庭環境や病弱で学校を休みがちだった僕は登校してもクラスへは行かない、所謂保健室登校になってしまっていた。

そこでは最低限の勉強をするためのプリントをするだけの日々で、誰とも関わらない、関わりたくもなかった。ので常にイヤホンを付け、自分の世界へと籠っていた。

「何聞いてるの?」

そんな殻を簡単に壊してきたのは同じく保健室登校の女の子だった。
いかにも大人しそうで、人と話すのが苦手といった様子の彼女が僕に話しかけてきたのは沈黙に耐えかねただけだったのか、それとも別の何かがあったのかは分からない。

「音楽はそんなに好きじゃないけど、君を何を聞いてるっていうのがなんていうか気になる」

そういわれると僕も悪い気はしない。イヤホンの片方を彼女に差し出すと彼女は少しうれしそうにそれを耳へと付けた。

くだらない話をしていると、不意に彼女が微笑んだ。

「君、いつもこんなおしゃれな曲聞きながら勉強してるんだ。なんだか、うらやましいな。」

「また今度ね。」

なんだかくすぐったいような心地だった。

僕たちは保健室で良く話すようになった。
僕は毎日、帰り道で明日も彼女が保健室に来てくれることをこっそり祈ったりした。

それからしばらく経ち、合唱コンクールの練習の声を聞きながら、僕たちは話しをしていた。

「私、自分のクラスがどんな曲やるのかわからない」

「当日行く?ふふ、私も多分行かない。」
なんだか二人の秘密みたいで少しうれしかった。

「ねえ私の知ってる曲も流してよ。」
横から僕の音楽プレイヤーを覗き込む。
「あ、これがいい」
そう言って流した曲に合わせて彼女が口ずさむ。

「ね?わかるって言ったでしょ?」
そう言って彼女は得意げに笑った。
僕は初恋をした。

それから保健室へ登校する頻度は増えていった。
けれども彼女は、良くて三日に一度程度しか保健室へ来ることはなかった。

僕は彼女の力になりたかった。彼女にいやなことをする人がいるなら、どうにかしてやりたかった。
けれどそんなことは、彼女には言えなかった。


合唱コンクールの本番も終わった卒業間近の日、僕は保健室で彼女に会った。

「おはよう、今日は私の方が早かったね。ね、どうしたの?そんなにびっくりして、確かに私は全然学校に来ないけどさ」

僕はたまらず聞いてしまった。
「なにか、あったの?」

「別に、何もないけど。なんでそんなこと聴くの?君には関係ないでしょ?」
その言い方は、なんていうか、少し寂しそうに思えた。
「なんか聞かせてよ」
さっきのやり取りがなかったかのように彼女が切り出した。
「君がいるって言う事は何か聞かもらえるのかなーって、私毎回期待しているんだよ?」

僕は久しぶりに会った彼女にある曲のタイトルを言った。

「え、前言ってたのほんとに撮って来たの?」

「なんか、なんていうか、すごい大人だね。」
僕は気恥ずかしかったけど、彼女が少しでも喜んでくれたならそれでいいと思って自分で撮った曲を流した。


曲が終わるまでの数分間、彼女は黙って聞いてくれた。

「すごい良い曲だね、それにすごい上手かった。聞かせてくれてありがとう。」
僕は彼女の顔を見れなかった。気恥ずかしさと、真剣に聞いてくれた彼女がひどく大切なものに思えてしまって。

「君どうしたの?いや、私が変なのかな。」
「え、俺なんか変な顔してた?」
「いや、君雰囲気替わったなって、私がずっと学校来てなかったからかな」
「なんも変わってないよ。会ってないのも少しの期間だけだよ」

「ねぇ、あのさ」
「明日、学校の外で会わない?夜、校門の前に集まってさ。」
突然、思ってもいなかったことを言われ、僕は動揺した。
「え、きゅ、急だね。どうして?」

「いや、別に。制服で保健室にいるところしか見たこと無いなって思って。もう私たち卒業しちゃうし。」
確かにその通りだ。彼女と会うのは大体同じ時間、同じ格好、そして同じ場所だった。
僕は早打つ胸を押さえ、何とかうなずいた。

「じゃあ10時に校門の前で。」
正直そんな時間に家を抜け出した事も無かったが、見栄を張って
「わかった。」
とさも何でもないように言った。

「絶対来てね」
「わかったってば」

「だってもし来てくれなかったらさ、待ちぼうけじゃん。ね。私待ってるから。」
彼女があまりにも心配そうに言ったので
「わかった。必ず行くよ」
僕は柄にもなく、目を見てはっきりそう言った。

 「ねえ!ほんとに来てくれたんだ!」
約束の時間の十分ほど前に暗い校門へ着くと既に彼女はそこにいた。
真っ暗な校舎を背に立つ彼女は、なんだか、自分とは遠い世界の住人の様に思えた。

「なんか雰囲気違うね、やっぱ」
「君だって…なんかいつもと違うね。」
「まあ学校じゃないしね。」

「ほんとは夜の学校に忍び込んでくれると思ってなかった。」
本当は、そんなことしたくはなかった。けれども、真っ暗な学校で彼女を置き去りにする想像をすると、来ないわけにはいかなかった。

「見つかったらヤバイよ。だって私達、あぶれもんだし。」
と、言いつつも彼女は笑っていたが僕はとてもそんな気持ちにはなれなかった。

「んーなんだか開放的って感じ。」
こんな場所でそんなこと言えるのが、僕には信じられなかった。

「学校でもなく、家でもなく、塾でもなく…」
「あのさ、やっぱり何か辛いことがあるんじゃないの?」
僕は、聞いてしまった。

「なんでそんなこと聞くの」
先ほどの笑顔は消え失せ、無表情の彼女がそこにいた。

「前も言った通り、別に特別な理由はないよ。何となく、毎日詰まんないし、私、性格悪いから、友達とかいないし、それで行ってないだけ」

「特別なことなんてなんにも無いよ」

「なんとなく毎日息苦しくて、でも学校いかないで家いても苦しいし、だから学校来てみるけど、クラスには入れないし、なんか、廊下とか歩いてるとみんなの目が痛くて」

「痛いって思ってるだけなんだけどね!私がおかしいだけ。それとも、おかしいフリしたいだけなのかな。」

「君も一緒でしょ?」

「こっちきて?」

「ねぇ」

「ぎゅってして?」
そう言って彼女は、辛そうな笑顔で僕に手をのばした。

「きゃっ!」
気が付いたら僕は彼女の肩を突き飛ばしていた。

そう、僕は…僕は怖くなってしまった。
彼女から感じた自分とは違う、深い、暗い、強い感情は僕の幼い、小さな器を壊してしまうように思えた。
あのままもし彼女を抱きしめたら、一緒にどこもまでも堕ちてしまいそうな、そんな底なし沼のような恐ろしさが感じられた。

「ねぇ、待って、待ってよ…ごめん…ごめんてば…!」

そんな彼女の声を背中に受けながら僕は暗い校門から逃げ出した。

それから彼女とは二度と会わなかった、いや、会わないようにした。

けれどもあの時の曲をふとした時に耳にするとあの保健室の中の停滞した、温かい空気、そして後悔を思い出してしまったりする。

もうあれから十数年もたった。けれども心のどこかでまた彼女に、あの頃のまま会えるんじゃないか、なんて思ってしまっている自分がいる。




Nah! ウェカピポ! YO!


ンゴちゃんおめでとーーーーーー!!!!!!

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