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kochirakoso

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今日、ギターを福岡に送るためのハードケースを探して、吉祥寺を彷徨っていた。ハードケースは、高い。そして重い。これがないと東京から福岡まで運送できないとはいえ、重量感たっぷりのハードケースをウキウキ持ってギターを練習する自分が想像できなかった。うんうん唸りながらも、探索を続ける。

偶然目に入った、とある大手楽器店に入る。ギター売り場に直行するも、なかなかハードケースが見当たらない。可愛らしいお姉さんと目が合う。

「ハードケース、ありますか??」
私がそう聞くと、お姉さんは困った笑顔で「今ちょうど切らしてて…ソフトケースでしたらございます。」と答えてくれた。

ソフトケースでは運送業者さんに運んでもらえないことを説明する。お姉さんは、うーんと何か考え込んでから、口を開いた。

「うちでソフトケースとギター用のダンボールをご購入いただければ、梱包させていただきます。もちろん、配送料もかかってしまうんですが…」
とってもありがたかった。ギターを素人が自分で送るのは、結構手間なのだ。傷ついてしまわないようにプチプチを巻いたり、弦を緩めたり、サイズに気を使ったりと、ほんとに骨が折れる。

「ぜひお願いします!!!」
元気よく答えた私を見て、お姉さんがにっこり笑う。なんて笑顔の可愛い人なんだ。

送り先の住所を書いてから、自宅にあるギターを迎えにいく。購入したソフトケースにギターを詰め込み、またお店に向かう。私は結構足が速いので、驚くほどすぐに到着した。

「持ってきましたー!」
お姉さんに声をかける。彼女の横にいるバイトの子にも「こんばんは」と会釈をする。

お姉さんは「早かったですね!」と答え、バイトの子は「何時になるかなって二人で話してたんです。」とニコニコしている。

少し世間話をした後、私はギターを差し出して「これ、よろしくお願いします」と頭を下げた。お姉さんは「承りました」と丁寧にギターを受け取る。

親切で丁寧な対応に心から感謝し、「ありがとうございます。」と伝えた。お姉さんは、にっこり笑って「こちらこそ!」と答えた。

「こちらこそ」 初めて言われた。私はこれまでお客さんにありがとうを言われると「とんでもないです」と答えていた。それが、最高の返事だと思っていた。

「こちらこそ」 これこそ最強だ。私の感謝を受け入れた上で、私に感謝を返してくれる。現に、私は心を打ち抜かれた。なんだかキュンとしたのだ。

お姉さんとバイトの彼にさよならを言って、お店を後にする。

「こちらこそ」 
まだ胸でこの言葉が響いている。

「こちらこそ」
ステキな言葉を教えてくれて、ありがとう。

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もう一言を添えたいけど恥ずかしい。
一言の向こう側

自分を蔑む努力なんていらない。
敬意を払う努力を


#エッセイ #ちょっと幸せにする言葉選び #こちらこそ #生まれて9680日目


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