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『ブラックフット』感想:あなたの恋人は熊対策をしているか

カップルが熊から逃げる映画ね。フーン。
と軽い気持ちで見たら死ぬ程怖かったサバイバル熊映画。その名も『ブラックフット』

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『BACK COUNTRY』は原題です。「整備区域外」という意味ですね。

監督/脚本:アダム・マクドナルド
製作国:カナダ
公開:2014年
出演:ミッシー・ペリグリム/ニコラス・キャンベル/エリック・バルフォー

なぜ原題の方のポスターを貼っ付けたかと言いますと、日本特有のクソダサアレンジが猛威を振るい、いらんキャッチコピーの追加、トドメの一撃にネタバレコラと、贅沢の限りを尽くして改悪されているからです、日本版は。
でもアマプラの画像は日本版なんでついでに貼ります↓

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猿が見ても内容が分かる超親切なポスターです!
この時点でオモロイんですが侮るなかれ、日本版ポスターとは裏腹に内容はリアル志向で見ていて生命の危機を感じました。パニックよりドキュメンタリーとか大型再現VTRと言った方が近い気がする。
痛い描写、グロがダメって人は森は森でも100エーカーの森に行った方がいいです。どうしてもリアルな熊がみたいなら話題の『ミッドサマー』にも可愛いクマさんが登場するのでそっちがオススメ。

ちなみにこの映画は実話が元になっています。
実際に被害にあった方の名前で検索したらCBCの記事がヒットしました。
私はあんまし英語が得意ではないのですが、犠牲になった方は奥さんみたいですね。映画化するにあたり様々な変更を加えているようです。
わりと詳細に状況が書かれていると思いますがパッと見た感じ映画の状況と近い記述が…被害にあった方の恐怖たるや映画とは比にならんでしょう。

簡単なあらすじ

季節は秋。アウトドア好きアレックスは、恋人のジェンと行き慣れた樹海へキャンプに行く。初めの内は自然を満喫する二人だったが、次第に森の奥深くへと入り込んでしまい遭難してしまう。途方に暮れる二人の前に現れたのは、巨大な黒い熊だった…。

予め記しておきますが、この間の上映時間は90分。この内前60分は熊の姿は登場せず、恋人の痴話喧嘩がメインです。ので賑やかなパニック映画を期待して視聴すると肩透かしを喰らいます。が、そんなダレる空気を引き締めるようにチョイチョイ挟まる熊匂わせ(やや退屈に感じる場面もありましたが…ずっと森だし)。熊がいるかもしれない森で遭難する恐怖を描いた映画です。
熊の姿がしっかり映るのは恋人たちを襲撃するその時のみ。言い方を変えれば「一度熊に襲われたら終わり」という現実を物語る、非常にリアルな構成ではないかと思います。
エンターテインメント性はありませんが「命の危機」はバッチリ感じる事ができます。見終わる頃には心なしか痩せた気がしました。

それではネタバレ感想↓

自称熟練キャンパー・アホックス

彼氏アレックスのダメ男っぷりが序盤から炸裂。

①あえて地図を持って行かない
②あえて携帯を持って行かない
③あえて熊対策グッズを持って行かない
④立入禁止区域と知ってて侵入
⑤早々に熊の痕跡を見つけても放置
⑥自らの失敗を認めない

要は典型的な「ええかっこしい」の男です。
こんな驕りの擬人化のような彼氏私は嫌です。
自分の友人、彼氏、或いは父親がええかっこしいで嫌になった経験がある方は「いるよねこういう奴」とため息が出るでしょう。
(冒頭で彼女のジェンが「彼氏の採点」なるものをしておりましたが、遭難した際の伏線になっているので覚えておくと面白いです。ちなみにアレックスの彼氏力は0点でした)
対する恋人ジェンはアウトドアに不慣れのようで、熊対策スプレーを携帯したり頻繁に周囲を気にしたりと用意周到。どうか備えあれば憂いなしということわざをアレックスに説いてあげてください。
ジェンは管理人小屋で熊雑誌を見たり熊スプレー買ったりと、森といえば熊!みたいな恐怖心があったみたいですね。アレックスは馬鹿にしていましたが、そんな彼が迎える結末はポスターをご覧いただければわかると思います。

「森に慣れた頼れる俺」を見せようと必要以上に無用心なアレックスの姿に不安気なジェンですが、なんだかんだで仲の良い恋人同士に見えます。至って普通の男女って感じ。

で、二人でカヌーを漕いで野営地付近に乗り上げるんですが、早速アレックスが持ち上げたカヌーを爪先に落とします。
後述しますが、この時の爪先の怪我が熊さんに狙われる原因になったと個人的に考えています。

怪しすぎる男ブラッドとアレックスの劣等感

メインとなる登場人物はアレックスとジェンの2人(と熊)のみと非常にコンパクト。たまにキャンパー同士すれ違う程度です。
BGMも殆ど排除し、聞こえる音といえば2人の話し声や足音、枝葉の折れる乾いた音のみ…。登山経験などがある人はわかると思うんですが、風の届かない森の奥って結構静かですよね。
時折挿入されるインスト曲がスゲー良い感じで、環境音がメインの劇中に効果的な使い方をされています。思わずSpotifyでDLしました。

そこへ突如出現する熊…じゃなかった、自称森育ちのツアーガイド・ブラッド
ガイドというより一見不審者なこの男をディナーに誘ったのは彼女のジェンでした。慎重派と見せかけてなんて浅慮な…。というか彼氏とのキャンプ初日に見ず知らずの男を招いて雰囲気ぶち壊しもいいとこですよ。
焚き火を囲って魚を食べるシーンなんか熊そっちのけで殺人パーティを始めそうな雰囲気を醸し出すブラッド。真っ赤な炎に照らされた横顔と研ぎ澄まされたナイフで魚を捌くその姿から、心のざわめきを抑えられません。
でも一番心がざわざわしていたのは彼氏アレックスでしょう。
このブラッド、妙にアレックスの弱点を探ってくるのです。

「職業は?この森は初めて?滝を見るならどのルートを通る?」

森は初めてではないのですが、ツアーガイドと名乗るだけありブラッドの方がアレックスより上手です。
さらに、この会話から「彼女ジェンは弁護士」「彼氏アレックスは造園業の手伝い」と、社会的地位に差がある恋人同士であることが発覚。アレックスをさり気なくフォローするジェンを見た感じ、この手の質問には答え慣れている様子。
そんな彼女頼みのアレックスをブラッドは遠回しに嘲笑うのです。彼女の目の前でポッと出の不審者にマウントを取られ、アレックスも心中穏やかではいられません。
楽しいキャンプになるはずが初日から悪い雰囲気になっちゃいました。

…ネタバレしますと、このブラッドは二人の関係を悪化させるためだけに登場したのでこれ以降は登場しません(ブラッドいなかったら二人のステータスが語られなかったのでよしとしましょう)。
ウィークポイントをチクチク刺されたアレックス。
人間社会では俺の方が下でも森の中では彼女に勝てる!とキャンプへ連れてきたんでしょう。
全ては後に控える大一番のために…。

ちなみに去り際のブラッドが「いい彼女だな」と言い残しますが、怪しい男に「いい女」と言われた女性はマジでいい女であるというのは私の持論です。どうでもいいですね。

余談:熊って人食べるの?

付け焼き刃の知識で恐縮ですが、熊と出会う際のパターンは3通りございまして

①人間が先に気づく
②熊が先に気づく
③鉢合わせする

で、①の場合は音を立てずにその場を立ち去れば良い。②の場合は基本的に熊から寄ってくる事はしない。③の場合は…熊が驚いて攻撃してくるケースがあるが、人間側は極力落ち着いて焦らず後退せよと。間違って騒ぐと熊も防衛本能から手が出ちゃうと。いやしかし突然熊に出会っちゃったら動けなくなります、私だったら。ヒュン…と心臓が縮こまってそのまま石化しまする自身があります。いや、むしろ錯乱して熊に襲いかかるかもしれません。

そこで表題、そもそも熊は人を食べるのか?
熊は雑食ですが、主な食べ物は木の実や果実、稀に鹿等を食べるそうです。良く聞く話ですが、山の食べ物が減ると人里に下りてきて家畜や農作物に手を出す所謂「食害」の原因となる。その際に人を攻撃してしまう場合もあると。
一度人間の味を覚えた熊は「狩り」目的で再び人間を襲う事がありますが、基本的には食うために攻撃を仕掛けることは殆ど無いみたいですね。
人喰いグマの有名な事件はやっぱり北海道の『三毛別羆事件』でしょう。

この映画のせいで街にいながら熊を恐れて夜も眠れ無いので、記事の最後に熊対策についてリマインドも兼ね記載します。

それでは本編に話を戻します。
ますますアホックスの死亡フラグ乱立っぷりが加速します!

熊匂わせ


翌日。
一夜明けアレックスの機嫌も元どおり。微笑ましい会話を交わしながら山道を並んで歩きます。と、足元にあるものを見つけ立ち止まるアレックス。

こ、これは…熊の足跡。

どうしたの?と振り向く彼女に「いや、なんでも無い」とアレックス。いやめっちゃヒュン…みたいな顔してたじゃんお前…。
こんなもんはまだ序の口です。
なんとアレックス、熊の気配を感じながらも突然歩道を外れ、いかにも熊が出没しそうな整備区域外へと侵入!
もう訳がわかりません。だってそっちはただの森…。
ほんとにそっち?と不振がりながらも、ベテラン(自称)アレックスに付いていくジェン。この時点で引き返せれば…。
(この時点で整備区域に熊が出てるって事になりますが他に見た人はいないのでしょうか)

カメラワークを注意して追えば、熊が樹皮剥ぎした痕跡らしきものも見て取れます。恐らくこの辺で写真撮ってSNSに上げれば「熊匂わせ」と言われ瞬く間に炎上するでしょう。

しかも速攻で迷うアホックス。
「fuck...」
いやファックじゃないですよ。一体全体何を根拠に道を逸れたんでしょうかこの男は?ここからアホックスへのイライラがどんどん溜まっていきます。
何を聞いても大丈夫の一点張りなアレックス。
カヌーの下敷きになった爪先を手当てし(割れた爪を抜くのが結構痛そう…よく平気で歩けたな)一夜を越す事に。
因みにこの晩、テントの周りを徘徊する何かに気づいた彼女ジェンですが、自称森っ子アレックス曰く「ドングリが落ちた音」だそうなのでスルーしましょう。

続・熊匂わせ、そして絶望

テントを畳み森を彷徨うアホックスとジェン。
その場を離れる際アレックスの血まみれの靴下が枝に干されておりましたので、夜中に現れた熊はここで人間の血の匂いを覚えたのではないでしょうか?しかし、そうだとしたら靴下は持ち帰るものでしょうかね。それともあまりに靴下の匂いが強烈でその場を離れたとか。…失礼、熊じゃなくてドングリでしたね。

何故アレックスは道を逸れたのか。
彼は「ブラックフット」という、黒い土でできた小径を探しておりました。急なその道を登っていくと美しい湖が目の前に現れる。その景色をジェンに見せてあげたいと。
高校生の時に見た記憶を頼りに「勘」で進んでいたとは後に自白した事ですが。
仮にも「道」なら、こんな森の奥にあるわけないと思ってしまうのは私だけでしょうか。
ま、今更ですね。
この「ブラックフット」というタイトルは、小径の名前と熊を掛けたんでしょう。原題よりブラックが付いた方がなんとなく怖い感じがするし…。原題でもカッコイイですが他の事情があったんでしょうか。

「迷ったんじゃないか」…その一言を言い出せずにアレックスに付いていく外術を持たないジェン。
そんな二人は一頭の鹿の死骸を発見します。そう、熊さんの食べ残しです。
や、ヤバイ…こればかりはドングリじゃ通用しない…。
しかし帰り道もわからないし、ここまで来たら湖を見つけるしかない。
そこでアレックス、なんとなく坂道っぽい場所へ差し掛かります。縋る思いで登るアレックス!嫌に期待させるカメラワーク!どうか、どうか正解であってくれ!
登り切るとそこには美しいみz……

……何もありませんでした……。

知ってた。

そこはただの開けた岩場。何か収穫があったかといえば…東西南北見渡す限りの広大な樹海を見下ろすことで「遭難」という現実を直視できたことでしょうかね。
俄に焦るジェン。携帯を出そうとリュックを探すも携帯が無い。何故かって?アレックスが自然を満喫して欲しいからと勝手に車に置いてきたんですって。
成る程。
アレックスが救いようの無い馬鹿だということが証明された瞬間です。
我々視聴者と同時にジェンがブチ切れます。言いたいこと全部言ってくれます。

「来るんじゃなかった。昨日帰れたのに。あなたは何をやってもダメ!

返す言葉も無いアレックス。
しかし、何でこんなところへ連れてきたの?というジェンの問いに対し、ぽつりとこう呟くのです。

「プロポーズのため」

だからジェンに好きな景色を見せたかった。感動を共有したかった。失敗を気取られ引き返すわけにはいかなかった。
…彼女へのサプライズをしたいと意気込んだところ、やることなすこと全てが裏目に出てしまったというわけですね。
だからって自然を舐めてオッケーかというとそれはまた別問題です。
ただ、彼女を喜ばせたかったという純粋な気持ちに関しては1ミリくらい同情します。

仕方なくその場で一晩を越す二人。
その晩(明け方かな?)、くっきりとテントに移るのシルエット…。
鼻を押し付ける黒い影に息が止まります。このシーンがめっちゃ怖い。が、やはりアレックスの足が臭かったためか何事もなく朝を迎えることができました。

襲撃前夜祭

実際に森の中で遭難するってめちゃくちゃ怖くないですか?
視界も悪いし、現在地なんか皆目見当もつかない。幸いなことにそんな状況に陥ったことはありませんが、想像するだけで胸の辺が冷たくなっていきます。

「感動」の2文字を共有することは叶いませんでしたが、「遭難」の2文字は共有できたお二人。
翌日、テント周りに吊り下げた荷物が引き裂かれておりましたが、森っ子アレックス曰く「アライグマの仕業」だそうなのでスルーしましょう。
…ていうか、此の期に及んで一体いつまで嘘を吐くつもりなんでしょうか?潔く失敗を認めりゃいいのにと見ていてイライラします。
もう水も食料もありません。よくもまあそんな状態で森を進もうと思ったものです。彼氏力0なら危機感も0です。絶対にこんな男とは付き合ってはならないといういい教訓になります。
食料がない…つまり熊の気を引く物も無くなったという事ですね、アレックス以外…失礼しました。

一縷の望みであった「湖」を失い、テンションどん底の二人は行くあてもなく森を彷徨います。
そんな最中に見つけたのは熊の寝床(穴)。
アレックスに言われるまでもなくその場を離れるジェン。この辺のアレックスの落ち込みっぷりがすごい。

暗くなる前にその場を離れ、火を起こす二人。
恋人と炎を囲み、漸く「ごめん」と謝るアレックス。私も言いすぎたとジェン。
火を見てると心安らぎますよね。二人も安らいできたのか、シャンパンを飲んで炎とともに燃え上がってきたみたいです(シャンパンがコルクではなくスクリュードライバーだった事は不幸中の幸いですね)。
しかし近くに大きな観客が居るかもしれないのに無防備すぎやしませんかね。それとも追い詰められると子孫を残したくなる生物としての本能に従ったというわけでしょうか?
安心してください、「何かいる」と気配を感じたジェンのお陰で未遂に終わりました。理性が本能に勝った瞬間です。
しかしなんの気配も感じ取れないアレックス、今まで森に入って生還してきた事の方が奇跡ではないでしょうか。

翌日。満を持して熊さんが登場します。

ついに、森の中、熊さんに食われた

※以下グロ表現について触れるので注意。

早朝テントで目覚めた二人。
アレックスがテントのファスナーを下ろすと、少し離れた位置で蠢く黒い塊が。

熊です。

後世に語り継がれるヒュン顏でファスナーを閉めるアレックス。不審がるジェン。恐る恐るもう一度開けると…

巨大な熊です。

「立ち去ってくれ…どうか立ち去って…」祈りながらもう一度開けると…

こちらへのそのそと歩いてくる巨大な熊です。

もうええわと突っ込みたくなる気持ちをグッと堪えて息を潜めます。文章に起こしてる今だから笑えますが見てる最中はちっとも笑えませんでした。怖すぎて。後ほど知ったのですが、ホンモノの熊を使っているらしいです。
「餌なんかないのに…!」と慌てる二人に誰もがこう思ったことでしょう。餌はお前たちだろ、と。

とうとうテントにアタックする熊。テントを引き裂き中へ入ってこようとします。振り降ろされる爪がジェンの左腕を大きく切り裂き、ダバダバと流れ出す血液。
傷を負ったジェンを庇い、熊の鼻っ面を何度も蹴って押し返そうと必死になる漢アレックス。これが唯一の見せ場といっても過言ではない。足の激臭に一縷の望みかけて抵抗します。
が、その抵抗も長くは続きません。熊の強靭な顎がアレックスの脛を捉え、その肉を骨から食い千切ってしまいます。激痛に悲鳴をあげる彼の後ろで、ジェンが携帯していた熊よけスプレーを取り出し反撃。顔面に噴射された熊は一時撤退します。ジェン…マジでガッツあるな。

テントの中は血の海でした。
いつ熊が戻ってくるかもわからぬ状況の中、アレックスの怪我の様子を見るジェン。吹き出す血の中に真っ白な脛の骨が覗いています。重傷を負い、足の感覚がない、俺は死ぬ、と喘ぐアレックス。見る見るうちに青ざめていく彼を宥めるように、「大丈夫だから」と元気付けるジェンでしたが、そんな二人に追い打ちをかける様にもう一度熊が襲ってきます。
今度ばかりは凌げませんでした。
熊は動けないアレックスをテントから引きずり出し、生きたまま食べ始めます。

熊はライオン等とは違い、獲物を捕らえてもトドメを刺さないみたいです。被食者は生きたまま食われる激痛に悶え苦しみながら、ゆっくりと訪れる死を待つ外ないのです。
アレックスも例外ではありませんでした。まずは顔から、と熊は彼の顔面のの肉を噛みちぎります。顎は砕かれ瞼は剥がれ、眼球が剥き出しの状態でアレックスは絶叫します。それでも地面に手をつき、なんとか逃れようとするアレックス。顔半分を失い、垂れ下がるように繋がった唇が嫌に脳裏にこびり付いて離れません…。
いっそ早く死んでくれと思いますがアレックス本人も同じ気持ちではないでしょうか。
「人間」が「残骸」に変わる過程が非常にリアルに描かれており正直トラウマになりました。実際に熊にキャストを喰わせて撮影したんじゃないかってくらい生々しい。一瞬の捕食シーンに本気出しすぎです。

ついさっきまで隣にいた彼氏が熊に喰われている。
その様子を見て動けないジェンでしたが、断末魔の中振り絞る彼の言葉を聞いて我に帰ります。
「逃げろ!」
アレックスは熊に喰われながらも、早く逃げろと彼女に叫び続けていたのです。
はっとしてテントから脱出するジェン。
その頃には悲鳴は途絶え、残されたのは熊の食べ残しとなった無残な彼の姿でした。臓器を食い尽くされ四肢をバラバラにされた「アレックスだったモノ」を見てジェンは言葉を失います。この残骸も非常にリアル…。

ジェンはアレックスのリュックからあるものを拾い上げその場を走り去ります。それは彼が湖のほとりで渡すつもりだったエンゲージリングでした。

生還

いやぁ…熊さんの食事シーンがリアルすぎて震えなから見ておりました。
グロい、エグい、のは勿論ですが演出が良いと思うんですよね。
頭真っ白みたいなジェンの表情をメインに、だんだんと残骸へ変わっていくアレックスのカットがパッとサブリミナル的に、かつしっかりと映される事で、短い時間ながら二度と忘れられないシーンとして記憶に刻まれました。
人間が熊に喰われたらこうなるってのがよーくわかりました…。

熊さんの壮絶な食事シーンを目にしたジェンはその後も走り続けます。
途中熊に追いかけられるも猛ダッシュで逃げ切るシーンがありましたが、ここだけ突っ込ませてください。熊の走る速度は種類にもよるでしょうが時速60kmだそうですね。てことは100m6秒台ですね(たぶん)。あのウサイン・ボルトは100m9秒台ですから…つまりジェンはウサイン・ボルトよりずっと早く森を駆け抜けていたことになります!!もはや車!これぞ火事場の馬鹿力ってやつですね。アドレナリンって凄い。
あのシーンだけ何とかならなかったんでしょうか。
ていうかウサイン・ボルトでも熊に追いつかれるって…。

話を戻します。
ジェンは何日も森を彷徨い体力も限界です。途中水場を発見して夢中で喉を潤し、以前アレックスが教えてくれたチェッカーベリーという赤い果実を見つけます。ここに来てやっとアレックスの存在が役に立ちましたね。あんな惨劇目の当たりにして冗談は言えませんが、火を起こせるだけの男だったアレックスの存在がここに来てジェンを助けました。

その後は救助ヘリを見かけるも立ち去ってしまい絶望したり、いつ手にしたのか発煙筒に火をつけて夜も歩き続けたり、熊から逃げて足を滑らせスゲー痛そうな着地骨折をしたりしながら、みるみるジェンの顔がやつれて痛々しく狂気的な人相へと変貌。譫言を口にしたりフラフラと幽鬼のように木々の合間を彷徨うその姿は、ホラー映画と見間違える程怖い…元気だった頃とのギャップが凄いです。
食われるアレックスもさることながら、ジェンの鬼気迫る演技も見事です。

なんども意識を失う中、目を開けた先に見た鹿の姿に希望を見出すジェン。途中で死骸を見た時は恐怖を感じましたが、今は希望の象徴と対比も上手いです。
ジェンの瞳にも光が戻り、最後の力を振り絞り歩いた先には…アレックスが爪先に落としたカヌーが!
あと少しで帰れます。ジェンがんばれと手を組んで応援。
行きは二人でしたが帰りは一人。傷ついた腕でオールを漕ぎ、キラキラと輝く水面をなんとか進んでいきます(ここで流れる曲もGOOD◎)

とうとう陸地にたどり着き倒れこむジェン。
その先には、これから森へ入るであろうツアー客御一行と、彼らにレクチャーするガイドの姿……ってお前ブラッドや〜ん!!!!!
どうやら本当にガイドやってたんですね。不審者冤罪失礼いたしました。まあこれからガイドするはずだった森から血だらけの女性が命からがら逃げてきたのを客に見られちゃあツアーガイドも商売上がったりですね。
収入の減った彼が犯罪に手を染めないよう祈ります。

あー、ジェンが生還して本当によかった。
アレックスにはアカデミー喰われ男優賞を差し上げます。
熊の恐怖付き合ってはいけない男について学べた90分でした。

熊に遭遇した時のイメトレをしてみる

熊が怖い。
二度と森に入れない。

そんな気持ちになる映画でしたが、今後生きてりゃ大自然に触れる機会もあることでしょう。その時のために熊にあった時の対処法について考えてみたいと思います。
(ド素人の考察ですのであてにしないで下さい)

▪︎熊エンカウントシチュエーション別対策チャート

参考:知床財団HP

ブラックフット

今度山行く時は熊撃退スプレー必ず携帯します。

▪︎劇中の熊は何故二人を襲ったか

公式な記述が見当たらないので色々調べてみた私の予想ですが、登場した熊は「アメリカクロクマ」が近いかなと思います。

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見ただけで怖い。
やっぱ主食は木の実や果実らしいので、チェッカーベリーがそこかしこで生息している森でわざわざ狩りをするのって熊的にも燃費悪いんじゃないでしょうか。
じゃあなんで二人は襲われたんだ?
二人のテントに近づいて来た熊は最初から捕食目的だったのか?
「どうも」て感じでテントの中を覗き込んだら二人が大暴れしたから攻撃してしまったのか?
私は前述した通り「アレックスの血付き靴下」が人間に興味を持ったそもそもの原因だと思うんですよ。
人間の匂いを覚える→辿れば食料(荷物)があると学ぶ
で、二人に度々接近することで抵抗がなくなっていき、結果として人間を「餌」と結びつけて認識したのではないでしょうか?
答えは熊にしかわかりません…。



この映画を見てアラームを熊の鼻息っぽい音に設定すれば、一生寝坊しなくて済みそうです。
イキリアウトドアマンと熊には気を付けましょう。

おわり

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