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音速と光速のどちらがはやいのか思い出すためにわざわざ稲妻のことを考える
同じようにその言葉を思い出すにはあなたの苗字を経由する必要があった

閉める

実は私はずっと池の周りを歩いていて
いいと思った石を見つけたらとある地点で置くようにしている
それ以外は特に何も生み出さず
ひとりで臓器を悪くしたり修理したり、
浮かべたり消したりをしている

開く

たくさんの人が各々の角度から見ている
大体のものは触っても大丈夫なので
少しずつ形が変わっていくものもある
色が変わっていくものもある
すき間からは湿った虫が這って出てくる

これらの多重構造を味覚でどう感じるかを各自の教養に任せるのはあまりにも乱暴で効率が良い

古いものが風化されるのなら良いのだが
朽ちずに石は残っている
吐瀉が不可逆な点において私たちに文句はないので
消えても管理上は困らないのだが、
あるのだ
あるのでたまに誰かがその石を軽く投げては受け止め 投げては受け止めを繰り返している

閉める

私はずっと池の周りを歩いている
いいと思った石をとある地点に置くようにしている

全ては積み重ねられていくこと

開ける

動くまでに時間がかかった口もと
周回遅れを取り返す気もなく君だけはまだ有酸素運動のスピードで動く
その口はベッドの上での立ち回りに悩んでいるらしい
場の空気が緩和されたので
聞き手だった私はウサギが三百六十度見えることを思い出す

閉める

 【ドレミだけで作られる歌に限界はあるのだろうか】
 今しがた、世界はドレミだけで作られる歌を全て網羅されてしまった
 みな街では各自既存の好きな歌を口ずさむ
 シンガーソングライターはそこにいた
 思いついたものを口ずさむ
 模倣という言葉は無くなった
 飽きたのだ

 人々は積み重なった石を遠くから見ている
  ~♪(ミドレ ミドレ ミドレミミミ)
 誰かが言った
 この石を全て埋め立てよう
 批判はあった
 だが小さかった
 飽きたのだ

限界はありそうだ
その十六倍の話を今はしている

流行しては廃れ、ドアを開けては閉めるのに似ているね

開ける

とある地点には大量の石が散りばめられている
いくつか高く積み重なったものもある
その下には死骸が埋まっている
それは、霊園の花のように悼む人にしか見つけられずに腐って誰かが更新してく

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