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女のひとりごと③『子供を産まない選択をする理由』

大人になれば子供を産み育てるものだと信じていました。

特段子供が好きだとか
欲しいと思っていたわけではなく、
ただただ、それはとても自然に

「いつかは私も」

だっこ紐を揺らしながら買い物をするだろう
幼子の手を引きながら陸橋の階段を上がるだろう
電車で泣きじゃくる魔の3歳児に辟易するだろう
幼稚園や小学校のライフイベントごとに感涙を流すだろう
思春期の自立していく後ろ姿に寂しさを感じるだろう
進学のお金の工面には休みなく働く覚悟をするだろう

そうやって
自分のことが生活の中心にない
40代、50代を迎えるものだと信じていました。


この、若いうちに漠然と思う「自然に」が
とても厄介でした。

妊娠は一人じゃできないのです。
家庭は一人じゃ築けない。

結婚の現実感があった20代の恋愛は相手の浮気で終わり、
本気で相手を見つけなきゃと焦りが出た30代は
体だけ
もしくは金だけ
なんなら暇だから

なんて、
つまらない経験ばかりを重ねる羽目に。


さらに、私は生理が全く安定しませんでした。
20代の頃の検査で、排卵させる為に必要なホルモンが
通常の3~4分の1程度しか分泌していないことを知ったのです。

私は不妊体質?

そう思った時(医者は言いませんが)、
初めて「子供がいない人生」をリアルに感じました。

子供がいない人生を想像したあとは
自身の過去を顧みることでも

「こんな私が子供を産んでいいのか?」
「そもそも私が子供を育てられるのか?」

と、疑念が脳裏に張り付いて離れなくなりました。


やがて30代半ばには
自分の人生に子供がいるイメージが全くできなくなりました。

あんなに「自然に」そうなるものだと思っていたものに
大きな嫌疑がかけられて、
「自分は子供を持たない人生を歩むんじゃないか」
と思い始めたのです。


さらにそれを確信づけたのは夫との出会いです。

付き合う前に夫はちゃんと教えてくれました。
数年前に命と引き換えに
子供を持つ選択肢を捨てざるを得なかったことを。

それを30代半ばの好きな女性に伝える勇気がどれほどのものだったか。

相当な覚悟を持って言ってくれたかと思うと
今でも胸がつまります…。


でも、その告白を聞いたのは私です。

衝撃ではありましたが、
その誠実さと運命を感じる告白内容に嬉しくなりました。

「やっぱり、私は子供のいない人生が正解だったんだ!」

まだ付き合う前なのに
この人と生涯を共にするのだろうと確信しました。


私が「子供がいない人生」を決心したのは30代半ばですが、
私の周りだけでもその年頃の女性には様々な形があります。

20代ですでに「いらない」と宣言し
結婚しても実際妊娠しない人がいれば、

結婚が遅く40代から不妊治療をし、
流産もありつつその後出産した人、
うまく行かずうつに近いほどの精神状態になり
結局諦めざるを得なかった人、

不妊治療に夫が積極的でなく関係が悪くなり
家庭内別居状態の人、

「子供ができると夫が一番じゃなくなる」と
夫第一主義という人、

子供ができたから結婚したという人、

様々です。

もちろん、結婚していない人も多いです。

あ、結婚せず1人で育てる人も。


生物である以上、
そして社会性を持つ生き物である以上、
いつかは必ずこのジレンマと戦わないといけない。

私は自身の体質と考え方、夫との結婚、
そしてそのことを親族一同に説明したことで
このジレンマからは逃れられました。


でも、

近所の幼稚園の前で
親御さんがお迎えに来られているのを見るたび
「私にもあんな人生があったかもしれない」と思うのです。

ランドセルを背負った子供を玄関から見送るお母さんの姿
部活動の練習着が干されたベランダ
昨日よく見たのは、入学式帰りの家族の姿

決着つけたはずなのに
どこかで心に引っかかる…。


どうしてなんでしょう。

これがまだ生理がある体の本能
なんでしょうか。


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