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女のひとりごと#2『痴漢に遭ったらブチ切れる女①』

「女のかわいげ」なんて言葉を使ったら、「セクシズムだ!」って非難されるのだろうか。
しかし、「女だから」受けた被害である以上、そこには明らかな性差意識があったわけで、敢えて使用することをお許し頂きたい。

私が痴漢被害を受けたのは人生で3度だ。
(長くなるので今回はエピソード1です)



【1回目】

私は若い頃からイケてる女ではなかった。
髪はパーマを失敗したせいでいつもおさげで、めがねもしていた。
満員電車に乗ったって、男性からの視線や手つきを気にしたことなど一切なかった。


それは1人での買い物帰り。山手線だったと思う。
車内は混み合っていた。

ドア横の一番端の吊革につかまっていると、
横並びで吊革を持っていない中年男性の組んだ腕が
胸に何度も当たっていることに気づいた。

(揺れているし仕方ない…)

一瞬そう思ったが、いやいや、当たり方が普通じゃない。
組んだ腕の下から反対側の手を出して、
明らかに横乳を押している。

突発的な怒髪天を衝く怒りが私を襲った。

このおっさん。
何してんねん。
人の体を何やと思てんねん。

我ながら後々面白いなと思ったのが、
この怒りは触られたことに対してではなく、
私の体はタダで触れると“高を括られた”ことに対する怒りだったこと。

声を出そうかとも思ったが、
もしからしたら本当に揺れているだけかもしれない。

一旦気持ちを静めてそこは冷静に、
私は次の駅で人の動きに乗じ、ドア横に移動した。


おっさん
ついてくるやんけ。


今度は斜め前に立ったので姿形がはっきり見えた。
背は低く、50代半ばくらい、髪は半分以上薄くなっていて、ポロシャツ姿のラフな格好をしていた。

今度はほぼ堂々と、
組んだ腕の下の手を伸ばして胸のトップを押してくる。

(こいつ、ナメやがって!)


キレる


という瞬間だった。


「やめてくださいっ!」


男の目を真っ直ぐ睨み付けて、
その時出せる精一杯の声を出した。
が、思ったより大きな声は出なかった。

周囲の人が一斉にこちらを向く。

男は
「ええ~…。何もしてないだろう~…」
と力ない声を出し、後ずさりして満員電車の人混みの中に消えていった。


私はその姿が見えなくなるまで、
ガン見してやった。

うつむくもんか。
私は間違っていない。
あいつは人の体を勝手に触った犯罪者だ。
私が恥ずかしい思いなんかしなくていい。
たとえ人前だろうと「嫌なものは嫌」とはっきり言っていいんだ。
私は堂々としていていいんだ。


鼻息荒いまま、「ふんっ」と流れる外の夜景に目を移した。


……

これだけたくさんの人がいるのに、
誰も、何事もなかったかのようだった。
車内は静かだった。

でも、私が今体験したのは、

怒り
恐怖
嫌悪感
迷い
声を出す勇気
羞恥心

私は一人で、それらの感情と戦わなければならなかった。


やがて息が落ち着いてくると、
それらは

惨め

という感情に変わった。


若い女だから?
おさげでめがねで大人しそうに見えたから?
ちょっとバストラインが分かりやすい服だったから?
ちょっと胸元が開いていたから?

そんなつもりはなかったけど、
性的に「女らしく」見えたから?


夜の車窓に映る自分の姿なんて
いつもの自分と何も変わらない。

なのに、どうしてこんなに惨めな気分になるんだろう。
自分は何も悪くないと分かってるのに、自分を責めたくなるんだろう。

落ち着いてきたらじわっと目頭が熱くなって、
でもこらえた。


私は声を出せる女だからまだ良かったのかもしれない。
世の中には、怖くて声を出せない女性がたくさんいると聞く。

痴漢被害に遭いやすい女性の“タイプ”もあると聞く。

気の強い私ですら、一瞬とはいえ自責の念に駆られた。
もしかしたら自分に落ち度があったのかと。

言いようのないあの情けなさ。
彼女達は常時あれを抱えているのか。


「女のかわいげ」なんてクソくらえ。

こういう時はブチ切れていいんだよ。

ナメんなって、好きな服着て言っていいんだよ。


あの痴漢野郎。

未だにあの情けない「え~…」って顔が忘れられない。
私が大人しく触られてくれるとでも思ってたんだろう。


残念でしたね。
ざまぁ見ろ。

ほんと、
女を見た目でナメんじゃねぇ。





私はまた別の件でも、
自分でも驚くブチ切れをしたことがある。

その話はまた次の機会に。

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